冷たい雨が降ってきた。
上を見ると灰色の雲が空を覆っていた。
周りの人間たちは一斉に傘を差し始めたり、走りだしたりとさまざまだ。
オレは体が冷えていくのを感じながら、
できるだけ人に顔を見られないように、気づかれないように歩いた。
いつだったか忘れたが誰かが言った。
「偽物は完全排除、自分から作るなんてもってのほか、
売買も即刻排除せよ。この決まりを破るようなことになれば、
重罪人とみなし、それ相応の罪を与えることとする。」
これが新たに作られたこの時代の法律。
偽物、つまりはオレたちのような公式ではない、
いわば“亜種”であるボーカロイド達もその対象には入っていた。
ネット上から存在は消され、姿を見つけられたら最後、
研究所に連れて行かれこわされる。
だから“亜種”たちはこの世界の表側から姿を消していき、
こっそりと見つからないように生きているものが大半だった。
そんな中でもオレは研究所から抜けだし必死で逃げていた。
一緒に暮らしていたマスターに裏切られて、もう何も信じられなくなっていた。
もう頼らない、一人で生きていこう、そういう覚悟もできていた。
しかし…
「…寒い」
雨でぬれた身体に冷たい風、まだ冬の寒さを残しているこの気温では
さすがにもう、体力やいろいろなものに限界が来ていた。
服は当然薄着だったから暖を取れるはずもない。
少し行ったところの路地に入りしゃがみこんだ。
(もう…ダメ…かな…)
少しだけ決意をしかけたその時、
突然、オレの上に今まで降っていた雨がやんだ。
ふと顔をあげて上を見上げると、傘を持った女性がこちらに傘を傾けていた。
オレの顔を見て少し驚いてはいたが、すぐに元の顔に戻り、
「立てる?」
と言って手を差し出してきた。
(あぁ…ここで終わるのか…)
オレは瞬時にそう思ったが、ほんの少しだけ希望を持って差し出された手を取った。
これがオレ、帯人と彼女との出会いだった。
コメント1
関連動画0
ご意見・ご感想
ヒカル
ご意見・ご感想
初めまして、ヒカルと申します。
何故オセロゲームなのかと思ったのですけれど、説明されて納得しました。
時代と戦うなんてカッコイイですねっ!
第一話を楽しみにしてますっ!!
2012/04/03 22:35:21
Cumin
ヒカルさん>
初めまして!!!
題名分かりにくくてすみませんww(^□^;)
か、かっこいいなんて嬉しすぎます!!!(><)
ありがとうございます!!!!
2012/04/05 18:31:04