12 リンの修行とレンのトラウマ その3


 「師匠、そろそろ本当に拳法教えてくれませんか?」
 
 また私に掃除をさせて、気持ちよさそうに昼寝をしていた師匠に私は言った。

 「うーむ、あせるでない、リンよ。時はいずれおのずとやってくる。その時を待つのじゃ。」
 「はい、意味がわかりません。もうさんざん師匠に待たされているんですけど。それにこの前話しましたでしょ、何で私が拳法習いに来たか、いじめっ子に勝つためです。」
 「そのようなことに武術を使うではない。賢人は己の力を見せしめるようなことはせんのじゃ。」
 「だから意味がわかりません。もう、いいです!教えてくれないなら帰ります。お母さんに言ってもう来ません。他の道場に行きます。」
 「せっかちじゃのぉ~~~。最近の若いもんは。」
 「もう一ヶ月掃除だけじゃないですか!お母さんに月謝泥棒だって言いつけますよ!」
 「それは・・やめて。奥さんに変なこと言うのは・・嫌われとうない。」

 ・・・なんなのよこの人は?うちのお母さんのこと好きなの?松本って言われてもかーーーー!!!って言わないしさ。

 「わかった・・じゃ、教えるよ。」

  ・・・ちょっと何よ、今のめんどくさそうな言い方は!びっくりしたし、笑っちゃいそうになったじゃない!もう、ホント何よ、このじーさん!

 「あのーちょっと聞いていいですか?」
 「なんじゃ?」
 「師匠って本当に拳法ってできるんですか?それと、何でここって私以外に生徒がいないのですか?」
 「拳法というよりは空手ね・・まぁ、できる。自分、いろいろとできるんだけどさ。生徒?生徒ね・・気にしなくてもよい。」
 「いや、全然気になりますよ!それと拳法でも空手でもどっちでもいいけど、何でその話になるとやる気なくすんですか!私はそのためにここに来てるんですよ!」
 「わかった、わかった、教えるから大きな声を出すな。頭に響くじゃろうが。」

 なによ!松本って私が言ったときこんなもんじゃないくらいでかい声出すくせに!今、松本って言ってあげようか?かーーーー!!!って言わせようか?
 私は相当イラついてきた。

 「まずは型からじゃ、わしの真似をしてみい。」
 「はい。」
 「へたくそ。」 
 「ぐっ、へたくそって・・。」
 「センスないのー。こうじゃ、こう。」
 「は、はい。」
 「へたくそ。」
 「うぅ・・。」
 「今日はその型を繰り返し練習しなさい。わしは家でちょっと休んでくる。しばらくしたらまた来るぞえ。」

 そう言うと師匠はあくびをしながら自分の家に入っていった。
 
 ・・・・・寝やがったな・・。

 「コラーーー!!マツモトーーー!!」
 「かーーーー!!!真田平八郎時貞じゃーー!!」

 結局、幼稚園では私にちょっかいを出してくる男の子は、飽きたようでやってこなくなった。なのでもうあの道場には行く必要ない、そうお母さんに言ったのだがなぜか続けなさいと言われ、やめる事ができなかった。
 それから数年たった今では、私はちゃんとした空手の有段者になっている。はっきり言って信じられない。あんなへんちくりんなじいさんの弟子になってよく初段になったなと思う。今の私に変なことしようとする男がいたら、相手がよっぽど強くないかぎりなぎ倒せる。もちろんレンなんて私の相手ではない。
 

12 リンの修行とレンのトラウマ その4へ続く

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ネットゲームで出会った人達  12 リンの修行とレンのトラウマ その3

閲覧数:108

投稿日:2010/10/17 15:40:16

文字数:1,428文字

カテゴリ:小説

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