「アタシ、好きになっちゃったみたい」

この言葉は君に突き刺さった。
そうでしょ？すごく痛そうな顔してるよ。

その、傷口から漏れ出す液を

「そう」

愛、と。

「じゃあ、サヨウナラ」

形容してみた―――



＊




思えば、出会いは簡単かつ単純で。
少し気にしてた先輩に、〝買われた〟。
ただ、それだけのこと。

アタシの値段は、一回につき3万。

繰り返すうちに、本気になっちゃった。

フられた直後、アタシは途方にくれた。
そうすると、なんだか自分が二人いるような気がしてきて・・・

黒い自分は言う。
「想いのなさと、形だけの交尾はアンタとアタシに似ているね」

アタシは言う。
「それでもあの人が好き・・・」

「とか(笑)」
黒い自分は嘲笑う。

まるで、アタシの存在全てを否定するかのように。

愛したっていいじゃないか！
あの人を縛り付けて、誰も触ることができないようにして！
援助交際だって運命じゃないか！

アタシの愛世は、静かに消えてゆく。


「仮に、愛し合ったとして交尾が終わるころにはアンタに飽きてるよ」
黒い自分はなおも嘲笑う。
「愛か、欲か分からず放つあいつのことは、何と形容しようか？」

「やっぱり、アタシとアンタは似ているよ」

急に可笑しくなった。
アタシは一体、誰と話しているんだ？
多重人格？そんなもの知ったこっちゃ無いわ！

「それでも、いいから！」

胸の奥に鋭い痛みが走る。
すぐに分かった。黒い自分がアタシを殺して、乗っ取るんだって。

なんとも幼いこの思考。
だけど、事実だ。

アタシが黒に染まっていくのが分かる。
このまま、愛さずに終わるのだろうか。

ソレナラ、ソレデモイイ―――

「愛したって言うのですか？あの男にただしがみついて、もがく事を」

黒い自分はナイフを振り上げ、とどめをさそうとする。

「殺したっていいじゃないか!」

黒い自分は、泣いていた。

「キミが嫌うアタシなんて！」

ああ、そうか。

アナタはアタシのこと、心配してくれたんだ。
あの人を愛す自分が嫌いになってること、知ってたんだ・・・

ここにある、全てを受け入れよう。

そして、叫ぼう。

「愛したっていいじゃないか!」

愛世は、静かに消えてゆく。

おかえり、もう一人のアタシ。

はじめまして、新しいアタシ。