遠回しにではあるが、自分のお母さんの自慢話をしたところで代わりに父親たちが歩んできた軌跡はと言うと……。

「でもね…私のお父さんが旅でやってきたことは、わからないんだよ。ガイアさんと一緒に旅立ってから、何ヵ月かして、家に大きな剣を背中に装備する騎士のおじさんがきてね……ジークレフをお母さんに渡してたの」

 ミクが姉弟に語るのは小さい頃に起きた過去の思い出。昔あった時のことを語るその仕草は、笑顔を震わせながら仲間の2人に背を向けていた。

「お母さんがね…騎士のおじさんからジークレフを受け取ったとき、膝を崩しながら泣いたんだ…。騎士のおじさんも、私たちの前では泣くのを我慢して家から去って行ったの……」

「…………」
レンは父親たちの話を聞き、無言のまま俯いている。

「ミクちゃん……クエスト中も辛気くさくなる話はやめようよ」

「あっ! ごめんね。そうだよねリンちゃん、私たちはダンジョンを攻略してたよね」

「そうそう。私たちの目的はバスヴァンパイアを説得するのよ」

「じゃあ、次は2階を行ってみようっ‼」

『やってみようっ!』

 昔話しで気分が沈みそうになったが、気持ちを切り替えて自分たちがクエストで行う目的を果たすため、ミクたちのパーティーは、ブルーローズ・レジデンスの2階を目指していく。

[2階へ続く階段]

 パーティーの3人は階段を上りだした。ブルーローズ・レジデンスの階段の先には、ルーフバルコニーが微かに目視できる。
 階段を一段、また一段と上がるにつれ、透明なガラス張りのルーフバルコニーが満月の光で青白く輝いている。青い色で輝く満月が演出するその光景は、神秘的であると同時に奇妙な緊張感を少女たちに与えていた。

「月明かりで周りが見えるけど、場所が場所だから…ちょっと恐い感じがするよね」

 そう口を開いたレンは、屋敷内が満月の光だけで照らされていることに警戒心を抱いている。これだとホラーな展開が、階段を上った先に待っているんじゃないかと思うからだ。

「そんなにビビって、どうすんのよレン」

「いや、そんなに怖がってないけど不気味だな〜って思うんだよ」

「だったら、私が恐い話でもしてあげようか?」

 突然リーダーからでた台詞にレンは、冷や汗を垂らしていく。なんで女の子って、不気味だと思うロケーションに来ると恐い話をしたがるのだろう……とだ。

「あっ、いいねえミクちゃん。どんな恐い話をしてくれるの?」

「じゃあ、私がお母さんから聞いたことのある話をするね♪。クエストに合わせて、ヴァンパイアさんに関する恐い話を……」

 ミクはリンとレンに、お母さんから聞いたと言う恐い話を語りだした。

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肝試しをしているのに恐い話をするのはやめられない

次話
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投稿日:2020/01/10 01:00:26

文字数:1,128文字

カテゴリ:小説

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