レイン(仮)は俺に近づき、「どうしたの?」と聞いてくる。
ちなみに俺が驚いているのは、ただの錘と思っていたヘッドセットの右側が実は立体映像の射影機だったことだ。それと、立体映像なんてもう出せるんだ。と言う、科学の進歩への驚きだ。
「立体映像が映し出せるとはな・・・。正直驚いた。」
「でも、まだモノには触れないんだ。ほら・・・。」
そう言うとレイン(仮)はそこにあったヘッドセットに手をかざして見せた。もちろん手はすり抜ける。レイン(仮)はなんだかさびしそうな顔をしていたが、俺はあえて言わないことにした。
「マスターがデータに触れないのと同じようなハンデかな?」
「なるほど。データはパソコンの中では物質なのか?」
「う~ん・・・。まぁ、そういうこと?」
わざとらしく考えるしぐさをしているところを見ると、やはりプログラムなのだと言うことが分かった。
「外出してみるか?そのためにヘッドセットになってるんだろ?」
「その為ってわけじゃないけどね。行こう行こう!」
レイン(仮)はパソコンの方に行ってキーボードを打つ真似をして電源を切った。俺はその間にヘッドセットをつけて、靴を履く。
「おっしゃ、名前考えに行くか。」
俺はデパートではなく、もっと遠出することにした。

私はなんとなく、カササギが歌ってる鼻歌を聞いていた。今流行の曲で、いたるところからその曲が聴こえる。
私はその曲を歌うことにした。
「ねえ、カササギ。その歌もらうよ。」
「へ?」
カササギが次の言葉を言う前に私は歌いだしていた。
初めての歌。これが、私の始めて歌う歌。これが私の声。ねえ、聞いてる。私歌ってるんだよ。もうちょっとちゃんと聞いてよ。そんな目で見てないでさあ。もっと、私に優しくなって。
「レイン(仮)。その歌止めろ。」
「へっ?」
私はカササギの言葉にショックを受けた。今の歌、何がいけなかったの?音が間違ってた?歌い方が違うの?
「マ、マスター?なんで?間違ってるなら直します。」
「そういう意味じゃない。」
そう言うとマスターは来た方向に帰っていった。

俺は周りの視線が気になったのだ。
だからあいつに歌うのを止めさせた。
そして恥ずかしくて帰ったのだ。今はレイン(仮)に見せられるような顔でもない。俺は布団の中で丸くなっていた。これは俺の癖で、昔から体が熱くなると布団の中で丸くなる。昔インフルエンザになったときに「お前は猫か!」と言われたこともあるが、その時は俺も弱ってたし反抗も出来なかったのだが、なんとなく今思い出した。今度言ってやろう。
俺はなんとなく布団から出たい気分になり、なんとなく飲み物を飲みたい気分になった。とゆーわけで、俺は布団から出る。すると目の前にはレイン(仮)の顔があった。
「マスター。さっき私何か間違いました?」
俺は驚くよりも前にその不安げな顔を見つめていた。
「マスターに見捨てられたら、私生きていけないですから。見捨てないでください。」
「・・・は?」
考えるよりも先に声が出ていた。
「・・・は?」
レイン(仮)も同じような言葉を繰り返す。
「ん?ああ、止めろっていったやつ?あれは街中だから止めろって意味だよ。」
「・・・へ?」
俺は心底きょとんとしているレイン(仮)にデコピンをするような真似をしてから、ヘッドセットを頭につけた。
「見捨てたんじゃなかったんだ。・・・よかった。」
そう言ってレイン(仮)は胸の前で手を組む。それから笑顔でこっちに向き直った。
「じゃ、もうこのことは忘れよう。もう一回ゼロからってことで・・・。」
「はい。」
「お前の名前は零音(ゼロね)・リフレインだ!」
俺はゼロと回想の意味を持つリフレインを組み合わせ、名前を作り出した。
それが俺のボーカロイドXXの名前となった・・・。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

ボーカロイドXX

今回で四回目のこの作品。
皆さんに感想を聞きたいです。
感想はぜひここにkinokuniomu@yahooへ

ちなみに木国 多夢は小説を書くときの僕の名前です。

閲覧数:93

投稿日:2009/07/22 15:26:32

文字数:1,573文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました