#2



私はこの静かな図書館の空間が好きだ

下の階のカフェのコーヒーの香ばしい香りもリラックスさせてくれて、とても気に入っている


今日は天気が良かったので窓の外には夕日が見える

時刻は18時ちょっと前……

大抵の図書館はすでに閉館時間を過ぎているのだろうが、【うち】は近くの大学や高校があるので、彼らも使えるように夜8時までの営業である

かくいう私も学生なのだが……しかも、まだギリギリ義務教育である


……あ、そういえば、今日、新しいアルバイトの人がくるって、メイコさんが言ってたな

そう思って、本棚の角を曲がった時だった

どんっ!


「きゃっ!」


誰かとぶつかり、思わず変な声を出して、しりもちをついてしまった


「わ!ごめん!……あ、イアちゃん!」


あぁ……この人か……まぁ、納得

目の前にいたのは、【うち】でアルバイトしてくれているメグミさん

彼女が差し出した手をつかんで立ち上がる


「……えへへ、ごめんね」


笑顔で謝るメグミさんから、目をそらす

この人、これでも私よりも二つも学年上なのだ


「あの……大丈夫ですか?」


そこへ、見たことのない人が心配そうにやってきた


「うん!大丈夫だよ!ミクちゃん!」

「え……あぁ、そ、そうですか。よかったですね……」


ミクと呼ばれた人は苦笑いしている……どう考えても、さっきの言葉は私に向けてだと思う


「あ、イアちゃん!ミクちゃんだよ!」


………………いや、だから誰


「ミクちゃん、この人はね、この図書館の館長さんの娘さんで、イアちゃん!」


そっちはちゃんと説明するのか……


「は、初めまして!今日からここでアルバイトさせていただく、音宮ミクです!よろしくお願いします」


形式ばったきっちりとしたお辞儀


「……よろしく」


私はそれだけいって、軽く頭を下げた


そう……私はこの図書館を運営する側の人間

今は両親が館長という肩書で運営しているが、実態は司書のメイコさんに任せている

そもそも、ここは数年前までは私の祖父が運営していた

その祖父が亡くなって、私の両親が引き継いだ……【ろくに字も読めないくせに】


「あの……失礼ですけど……日本の方ですか?」


ミクさんが私をじっと見て、そういった


「ちがうよー?確か、イアちゃんはクォーターだよね?」


私のセリフをメグミさんがとる


「クォーターですか?どこの血が入っているんですか?」

「ロシアだっけ?すごいよねー」


またメグミさんが悪意なく、私のセリフをとった


「…………違う……逆」


しかも間違っていたので、修正する


「逆?何がですか?」


ミクさんには伝わってないようだ


「…………私は日本のクォーター……祖父が日本人」


私の両親、祖母はロシア人、つまり、四分の三がロシア、残りが日本である


「え?一緒じゃないの?」


メグミさんには、何度説明しても、この違いを分かってくれない



両親はロシア人なのに、日本の図書館の館長をしている

そう、つまり、字も読めないし、日本語だってあまり話せないのに館長なのだ

そりゃ、司書のメイコさんに任せることになる



「え……でも、日本語上手ですよね?どこかで勉強したんですか?」


ミクさんは、さっきからずっと質問の連発だ


「……育ちは日本」

「確か、おじいさんのところにいたんだよね?」


私は数年前まで両親と離れ、祖父のもとで生活していた

祖母は私が生まれてすぐに亡くなったらしいし、仕事で忙しい両親にはあまりあったことがなかった

祖父とこの図書館が私を育ててくれたといっても過言じゃない


「なるほど!よかったぁ……私、ロシア語、しゃべれないから」


ほっとして笑ったミクさん

いや、正直、私もそんなにロシア語はわからない

この見た目のせいでよく勘違いされるが……


「じゃ、私たち、配架しなきゃならないから!またね!」


メグミさんがそれだけ言い残して走り去る……

そうやって、私にぶつかったことをすでに忘れたのだろうか……

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

図書館はひみつがお好き#2【イア視点・しるる】

ゆあちゃんとのコラボ

今回はイアちゃん視点でイアちゃんの設定を主に書きました
次はゆあちゃんの番です
ミク⇒グミorイア⇒ミク⇒グミorイア⇒ミクって感じに回します
つまり、私はグミかイアの視点で書いていくことになります


また、いつものように前回、次回のリンク貼ります

前回⇒http://piapro.jp/t/Ba7J

次回⇒http://piapro.jp/t/tnhd


脚を引っ張らないように、最後までがんばるぞーww

閲覧数:120

投稿日:2013/10/21 20:16:47

文字数:1,732文字

カテゴリ:小説

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  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    このグミちゃんの感じがどうも『天然×不良』のグミちゃん想起させる天然娘ww
    いや、それはそれで最近のしるるさんのグミちゃんらしくて良いんだけどねw

    2013/10/18 09:52:58

    • しるる

      しるる

      ぎくっ!
      別に天然なつもりはないですけど、似た感じになったのは……言い逃れは出来ないw

      イアを設定通りに書いたら、グミがこうなったw

      2013/10/18 10:55:10

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