ウチのおじいちゃんは もうかなりボケてしまい
今じゃひとりでは 何も出来なくなってた。

おばあちゃんの顔は
思い出の写真の中
鉄が降ってきた夜に 星になったと言ってた

ひとりぼっちのおじいちゃんは
おばあちゃんのこと 忘れずに
毎日二人が出会った桜を見上げながら
ハーモニカ吹いていた

「おばあちゃんがかけた恋の呪文は
けして消えないんだ」と
そう教えてくれた頃の瞳の色は
今のおじいちゃんにはない

もう動けないはずの おじいちゃんがいなくなり
みんなで探し回った夜に 事件は起こった

思い出の桜の木の下で
おじいちゃんは立ち尽くしていた
春の夜風が花散らせた時
私は
奇跡を見た

花びらの風の中に立っていた
キレイな透き通る人は
五十年前の姿をした
おばあちゃんがそこにいた

「ココデモウイチド」
呪文の言の葉は時を超え
桜の木の下で

おじいちゃんの頬を伝う涙が
桜の根に落ちたとき
にっこりと笑ったおばあちゃんは
頷いて
風に消えた

涙が止まらないおじいちゃんの
ハーモニカのメロディは
桜の花びらの中にとけて
いつまでも 響いてた

いつまでも、いつまでも
空高く
何処までも…

ライセンス

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