密さんは押し黙ったまま何も言わなかった。どうして黙ってるの?嘘だって…冗談だって言って…今直ぐ言って!お願い…お願いだから…!
「密さ…!」
「すまない…。」
搾り出す様な声だった。
「嘘…嘘…ですよね?…何かの冗談…ですよね?」
「浬音…話を…!」
「私の…私の家族…なんですよ?酷い事したかも知れないけど…偽りかも知れない
けど…私には…私にはたった一つの家族なんですよ?ねぇ…?密さん…!!」
「家族なんかじゃ無かったじゃないか!三人共浬音の事を家族だなんて思って居や
しなかったんだぞ?!」
「密!」
「…あっ…。」
全身からサーッと温度が消えて行った。目の前が涙で滲んで、瞬きすら出来ずに頬を生暖かい何かが伝い落ちた。頭が殴られた様に痛くて手足の感覚が無かった。
「浬音!」
どうしたら良いのかも判らなくて、弾かれる様にその場から逃げ出した。ロビーも入り口も振り切って、いつの間にか雨が降っていた外へ飛び出していた。冷たい雨が針みたいに突き刺さった。痛みは無い…感覚も無い…だけど…だけど!
「…っく…!うっ…ふぇっ…!んっ…!」
声を必死で飲み込んで泣き続けた。雨なのか涙なのかも区別が付かなくて、立ってられなくて、気付けばその場にへたり込んでいた。ずっとずっと涙が止まらなかった。私にはもう帰る場所は無い…家族も…最初から居ない…私は…一人ぼっちなんだ…。
「おい、誰だ?何してる?」
「…………………………。」
「朝吹浬音…?おい、どうした?!」
「…………………………。」
「こんな雨ん中何やって…ずぶ濡れだぞ?!密さんは?!」
「密…さん…?」
「一緒じゃないのか?兎に角戻ろう、密さん絶対心配してるぞ?ほら…。」
「や…嫌…!嫌!嫌ぁっ!!」
「痛っ…!おい…?!落ち着け!」
両手を掴まれて引き寄せられた。そのまま痛い程強く手を握り締められ振り解けない。
「どうした…?何があった?」
「…嫌…もう…嫌…!」
消えて無くなりたかった。前にそう思った時は密さんが止めてくれた、助けてくれた。あの大きな優しい手で守ってくれた。だけど…密さんは私から家族を奪おうとしてる…そして私の家族を否定した…一人だって事を、寂しいって事を思い知らされた…。判らない…判らないよ…私どうしたら良いの…?恐いよ…一人ぼっちは嫌…!
「一人にしないで…。」
掴まれていた手が解かれると同時に抱き締められた。
DollsGame-63.ミルトニア-
涙を止めて
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