…俺はあの3人をなめていたようだ。
あのはしゃぎようでは、バテるのも早いだろうと思っていた。特にリンは。
だが。
「こ…子供って…元気なんだね…」
「何を…おっさんくさい事…言ってんのよ…」
互いに肩で息をしながら、俺とめーちゃんはその場に座り込んだ。
―Error番外編―
~ありがとう~
第3話
背後にあった木に、背を預けて息をつく。
ついさっき、雪玉の弾幕にあったばかりで、俺もめーちゃんも雪だらけだ。
今度はマスターが相手になっているのか、離れたところから、賑やかな声が聞こえてくる。
「なんでいつまでたっても、あんな高いテンションを保てるのかな」
「3人はまだ解るけど、マスターはすごいわよね。さっき見た限りでは、まだぴんぴんしてたわ」
「うわ…」
それはすごい。
ボーカロイドの俺たちは、人間であるマスターよりも体力がある、はずだ。自信はないけど。
だがそれを差し引いても、俺たちがへばっているのに、まだ何ともないのはすごい。俺は内心で舌を巻いた。
「仕事の後はいつも疲れてるみたいなのに…」
「長くはもたないんじゃない?短距離走と長距離走の違いみたいなものでしょ」
ここで、俺はめーちゃんの声の調子が、どこか投げやりな事に気が付いた。
見ると、また今朝の渋い表情に戻っている。
「…めーちゃん、本当に何かあったんじゃない?」
「何でもないって言ったじゃない」
「そうは見えないけど」
そう言ってやると、ふいと目を逸らされた。
その様子に、少しだけ腹が立って、思わず彼女の両肩に手を置いていた。
「っ、何よ…!」
「あの時とは違うんだよ、めーちゃん」
なるべく静かな声で、続ける。
「何かあるなら、話して。あの時みたいに、1人で考えて溜め込んで、そんなめーちゃんは見たくない」
「でも、カイト…」
「そりゃ、マスターと比べると頼りないかもしれないけど、少しは頼ってほしい。俺は、めーちゃんの彼氏なんだから」
言ってから、少しだけ後悔した。自分でも、顔が赤くなっているのが解る。
彼氏、ね。初めて自分で自分の事、めーちゃんの彼氏って言った。思ってたより恥ずかしい。
言われためーちゃんはというと、これまた面白いくらい素早く真っ赤になって、一瞬何か言いたげに息を吸ったが、肝心の言葉が出てこない。
しまいに、諦めたように息を吐いて、俺の胸にこつんと額を寄せた。
「めーちゃん?」
「誰のせいでこんな事になってると思ってんのよ…」
「え、ええ?!」
俺、めーちゃんに何かしただろうか。
慌てて記憶を辿り始めたところで、めーちゃんはすっと身を引いた。
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