月光が純白のカーテンを通して輝いている。
カッターを置いて立ち上がり、部屋の電気をつけた。
純白のカーテンが照明を反して月光は私の目には映らなくなった。
リストバンドを付け、ベッドの端に座り、膝をかかえる。
…何でこうなったんだっけ?
深々と意味の無い考えに沈んでいく。
…心身に異常があるから、だったりして。
どんどん片隅に追いやられる。
罪を感じながら、ずっと同じ場所にいて、何もしない。
…まるで囚人みたい、なんて馬鹿なこと考えて。
これからは、精進します。
…何回も考えて結局は何もしなくて。
皆に揃って起立、礼、着席はしません。
…君と一緒ならいいけど、なんて。
非常口では足元を良く見て歩きましょう。
…そんな暇なんてなくて。
ふと、目線を上げると扉が見えた。
何と無く近付いて、そっとドアの鍵穴に触れる。
何時の間にか、随分錆び付いていた。
外には長い間出ていなかったからだ、と直ぐに理解出来た。
そして、また過去のことを思い出す。
『君が隣にいない』
それから未来は見えていなくて。
過去にすがって生きてきて。
想像して涙が溢れて止まらない。
リストバンド越しに手首につけた傷を眺める。
この傷は案外深くて、痛い、痛い。
自分で傷付けて後悔して。
いつか背負った涙は、もうどこかで零れてしまった。
辺りを見回しても君はいなくて。
名前を呼んでも君はいなくて。
私がどんなに泣いても抱き締めてくれなくて。
また泣いて、泣いて、泣いて。
明日が見えなくて。
見ようともしなくて。
何もかもなくて、無くて、無くて。
――ああ、此処は何処だろう。
朝になっても、君はいなくて、いなくて、なくて、無くて、泣く、泣いて。
昨日はどうだっただろう?
忘れてしまった。
直ぐに消え去ってしまった。
だって、君がいないから。
ぽつりと呟く。
――ああ、孤独は嫌だよ
パラパラとアルバムのページをめくる。
一心同体の心を閉ざしながら。
君との記憶の記録を閉じ込めながら。
小さい頃からずっと一緒で、笑い合って、傷付き合って。
私が一番大好きな人で。
また涙が溢れてしまいそうになる。
堪えていると、部屋の隅の暗がりで咲いた花が目に映った。
そんな一輪の花にひとつだけ願いを託して。
いつか君と見た夢の果ては此処に。
たくさん考えた、君との理想は変わり果ててしまった。
私と君とで描いた情景は日に日に薄れていって、遂には瓦礫と共に崩れ去ってしまった。
あんなにキラキラと輝いて眩しかったものは、ガラクタになってしまった。
君がいないこの部屋はとても暗い牢屋のようでした。
君がいないだけで、こんなに居心地が悪くなるとは知りませんでした。
机の上にある、固くなってしまったパンをかじりながら、窓の外を眺める。
あの青々とした遠い遠い空の雲の王国の中に、今も君の笑い声が響いているといいな。
ただの希望でしかないそれは、叶うのかわからないけど。
明日の天気は晴れのち大雨だって。
外に出ない私には関係の無いことですが。
今から眠りについて、君に会いに行く。
だから、あの雲と雲の隙間は開けておいてね。
――おやすみなさい
――いってきます
この笑顔は、この手は、この声は、君の――――
――やっと会えたね
――ただいま
やっと、君との未来が見えた、見えた、見えていた。
fin.
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禀菟
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久しぶり!
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良かったよ、会えて(´;ω;`)
余談だけど、この曲最初見たときマナビジョンにみえたwww←
2012/03/08 00:52:01