古い国の古い図書館。
そこは自分だけの世界を見つけることができる場所といわれていた。
会社員、初老の紳士、生活に疲れた主婦、そして孤独な少年。
多くの人が図書館を訪れ、夢の世界を探して本を読んだ。
会社員は偉人の本を読み、自分の理想を見つけていった。
初老の紳士は宗教の本を読み、これから逝く世界への恐れを消した。
生活に疲れた主婦は娯楽雑誌を読み、他人の不幸を舐め笑った。
そして孤独な少年は、古い、古い本を見つけた。
そこに描かれていたのは夢にあふれる魔法の国。心が躍る大冒険。
少年は時間がたつのも忘れて本を読み続けた。
どれだけ読んでも飽きない物語。想像力をかきたてる美しい挿絵。
少年は時間がたつのも忘れて本を読み続けた。
描かれるのは勇気ある少年。多くの仲間に慕われ旅をする。
少年は時間がたつのも忘れて本を読み続けた。
そして遥かな時が過ぎた今も、少年は白く細く朽ちながら、終わらない
ページをめくり続ける。
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