ー鴨脚樹譚ー
君が飲み干した錠剤と
幻想と虚栄と白熱灯
秋を知らない君と私
信号と夜道 金木犀
秋雨前線が燻る頃
君は何処にもいなくなって
統計上の人になった
遠近感はとうに消えた
君を殺した明け方の太陽
アルコールで噎せる声が震える
いつも遠く先を俯瞰していた
東雲の薄い 明かり 溶けて 弾け 消えた
私の秘密はもう届かない
答え合わせは誰も知らない
君は薄ら笑い宙に舞った
鴨脚樹並木を背景にして
物語を書き切ったんだ
君が飲み干した錠剤と
幻想と虚栄と白熱灯
秋が来たら思い出すから
鴨脚樹並木が 嫌いだった
『愛を知らず』『言葉を探す』
『私の秘密』
『 何かを探すのはもう遅かったんだ』
『嫌いだ』『こんな秋は』
『君がもう居ないことを思い出す』
私の秘密はもう届かない
答え合わせは誰も知らない
君の記憶辿り栞代わりに
鴨脚樹の葉を挟み込んだ
物語が終わらぬよう
君の秘密なら私の中
答え探し踠いて掻き分けた
どうして私にさそんな愛を
残酷な程透明なまま
こんな秋に残してったんだ
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