#12「好きと好き」



グミは、やはりグミだった

嘘なんてつけないし、隠す気もなかった

彼女は手袋をアイツにあげたことを正直に話した

それはあまりに彼女らしくて……

怒っていた自分が馬鹿らしくなるほどだった



許した私にいつも通りの笑顔をくれる

それで十分じゃないか

私が彼女に求めているものは、それで十分……十分……




私が部室の窓から登校してくる生徒たちを見下ろしていると、グミが私の隣にやってきた


「あのね……リンちゃん」

「んー?」


私は視線を外からグミに移した


「私、リンちゃんに出会えてよかった」


突然、グミはそういって笑った


「え?え、ええ?」


私はなんだか恥ずかしくなって、ガラにもなく慌ててしまう


「私、今、とっても幸せなんだ……それって、リンちゃんのおかげなんだと思う」


グミのその一言に、私はどこか釈然としないものがあって、うれしさが半減する


「それって……私のおかげでアイツに出会えたって話?」

「それもあるけど……」


あるんだ……やっぱり……


「けど、私はリンちゃんのおかげで変われたと思うの!」


拳を胸の前にもってきて、真剣な目でみてくるグミ


「リンちゃんと出会う前の私だったら、男の子と会話することはもちろん、こうして被服部をつくろうなんても思わなかった……思ったとしても行動できなかった」


目線を下に落としながらグミがそう話しはじめた


「覚えてる?出会ったばかりのころ、私、リンちゃんに【好きなことをやっている人って、かっこいいよね】って言われて……」

「……?」


正直いって、おぼえていない

意外とこういうことは言った本人は覚えていないもんだ


「ふふ……それにね、私が男の子との会話に困っているといつも助けにきてくれて……」


うん、それはいつものようにやっていたから覚えている


「リンちゃんが男の人だったら、私、もうその時に好きになっていた自信あるよ」


冗談まじりに笑うグミの笑顔が、私の心には棘となって刺さる


「私はそんなリンちゃんに憧れてて……結局、今もリンちゃんのように強くはないけど、それでも一昨日のことで、ちょっと自信ついたんだ。私も自分の力で頑張れるんだって」


あまりにキラキラと話すグミに、私は目をそむける

強くなんて……ないのに……私は……


「私はリンちゃんのおかげで、少しずつだけど前に進めている気がするの。リンちゃんは、私の目標なんだよ」


そういって笑うグミ……




その幸せそうな彼女の笑顔は、私にある答えをもたらした……




ああ……そうか、そういうことだったのか……

昨日はどうしてこんなことになったかと、ずっと考えていた……



なんのことはない……すべては私のせいだったんだ……

私が……グミに好かれようと世話をやいて……

私が……グミのために男の人から守ってあげて……

私が……アイツとの恋を偽善で助けてあげて……

私が……グミに希望や勇気を与えてしまった……


私が適当な励ましや、心にもない偽善を口にした結果なのだ……

つまり……これは罪に対する罰だといえる

なんだ……そんな簡単なことだったのか……

だったら……もういっそのこと……




「ねぇ?グミ?」

「ん?」


私は微笑みを浮かべてグミをまっすぐ見る

グミも優しい表情で私をまっすぐとみてくれる





「好きだよ……出会った時から、ずっと」


私の言葉は部屋の中に時の静寂をもたらす








「うん、私もリンちゃんのこと好きだよ。だって、私の目標の女性だもん。これからも親友として、色々乗り越えていこうね!」


ニコリと笑った彼女に、私は笑顔で「うん」とこたえた

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

私とアイツとあの子 #12

すべては自分のせいだと悟る

好きと好き

LOVEとLIKE

そういう意味です

閲覧数:187

投稿日:2014/01/30 21:02:35

文字数:1,588文字

カテゴリ:小説

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  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    ほおああ……
    もう、ああ、もう、みんな悪くないのに、なんか、もう……

    2014/01/31 18:49:11

    • しるる

      しるる

      それぞれの想いが明らかになっていく

      これが一人称のいいところ
      ほかの人の考えは話してくれないとわからない

      2014/01/31 19:55:06

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