ずっと貴方が好きだった。
貴方との出会いはいつだったかな。
出会ってたかもだけど、最初はあんまり話もしなくて。
小学校で部活が一緒になっても、スポーツが得意な貴方とはチームが違ってて。
でもたまにペアでやる練習で貴方と一緒になったときは、嬉しくて少し頑張ったんだよ。
部活の時は一緒に帰ったりもしたよね。
貴方は私に「いつまでも親友だからね!」と言ってくれた。
嬉しかったけど、なぜか少しもやもやした。
中学に上がっても、私たちの関係は変わらなかった。
一緒に登校して、一緒に部活をやって、一緒に下校して。
だから、私は油断してたのかも。
貴方は必ず、私を見捨てたりしないって、依存していたのかもしれない。
学年が上がって、夏休み。
私は貴方と遊ぼうと電話をかけた。
「ごめん!その日友達と約束があるから遊べない!」
そう言われて、私は受話器を落とした。
元々、人見知りだった貴方。
対して、明るくて誰とでも仲良く出来た私
でも人は、変わるもので。
貴方は、明るくなってすぐ友達が出来るようになった。
私は、人と関わるのが怖くなって壁を作っていた。
良いように変わって、友達が増えて、私との距離が広まって。
その夏休みは、ほとんど誰とも遊ばなかった。
完全に依存していると気付いて、年が明ける。
年賀状に書いてあった貴方からのメッセージ。
―――いつも待っていてくれてありがとう―――
その文字を見たとき、私は思った。
貴方が、私に感謝してくれてるって。
そう思ってからは心が軽くなったように行動できた。
そして、部活引退の日、私は貴方に《告白》した。
「・・・リリィ!」
「何?ミク・・・改まってさ」
リリィの家の前。
もう汗だくでここに来ることもないのかと思うと、寂しくなるな。
このときの私は、どんな顔をしていたのだろう。
「あの・・・さ、もう、部活終わりなんだよね」
「さっきまで目が腫れるほど泣いてたからねぇ」
少し笑いながら貴方が言う。
他人事のように言うけど、一番泣いてたのは貴方だよね。
そんなところも愛しい。
「で、何かなミク?」
笑顔で貴方が問いかける。
ついに、このときが来た。言わなければ。
そう思っても、口から出てくるのは「えっとね」ばかりで。
でも、貴方に言わなきゃ、きっと後悔するのは分かってるから。
「あのね、リリィ。実はね・・・ずっと、好きでした!」
一瞬で空気が変わる。
貴方の綺麗な蒼色の目は丸くなってるのかな。
もしかしたら、引かれちゃうかも。
そうなったら寂しいな。
「・・・ミク、私も好きだよ?ミクのこと」
「そうじゃなくて、友達としてじゃなくて」
そう、私の好きは・・・。
恋人とか、そういう関係になりたい、ということだから。
「っ!?」
「ごめん、気付かなくて」
突然、貴方に抱きしめられた。
わけが分からなくなって、私は貴方を引き剥がそうとした。
だけど、貴方の細い腕は、私を離してくれなかった。
「私も、ミクのこと好き・・・いや、愛してるから」
私の耳元で、貴方はそう囁いた。
頬に雫が落ちる。
ここまで暖かい涙は、初めてだな。
そのまま暗くなるまで、私は貴方に抱きしめられながら泣いていた。
ありがとう、ありがとうと呟きながら。
別々って、こんなに辛いんだね。
いつも貴方の近くにいたから分からなかった。
高校に入って、私と貴方は違う学校にそれぞれ入った。
貴方は陸上、私は演劇という夢に向かって。
「ねえ、ミクちゃんって彼氏いるの?」
高校のクラスメートにそう聞かれた。
聞かれて思いついたのは貴方。
じゃあ答えとして適切なのは、貴方という存在がいるということ。
「ねえどんな人なの?」
「その人はね・・・」
スポーツ万能で、凛々しくて。
友達も多くて。
でも涙もろい。
そんな所も、やっぱり愛しいと思える。
「私にとって、無くてはならない、大切な人なんだ」
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