ドタドタドタドタッ!
ガチャッ!
「レンくぅぅぅんっ!」
バンッ!
ドタドタドタッ!
ガチャッ!
「レンくぅぅぅんっ!」
バンッ!
穏やかなスタートを切った土曜日だったが、静寂は一人の女の子によって、いとも簡単に破られた。
ドタドタッ!
ガチャッ!
「レンくぅぅぅぅぅぅんっ!」
ドタドタドタッ!
「ぁあっ!もぉ、ネルってば、うるさいっ!」
台所から小さな女の子が顔を出して怒鳴った。
ネルと呼ばれた女の子が振り返る。
怒鳴った方も、怒鳴られた方も金色に近い髪であった。
ただし怒鳴られた方は長い髪を片側でくくっている。
ダンダンダンッ!
ネルはその女の子に大股で詰め寄り、細い肩をつかんで激しく揺らした。
「ねぇっ!リンッ!レンきゅんドコ?ドコいるの?あんたドコに隠したのよっ?!」
リンと呼ばれた女の子が迷惑そうに顔をしかめる。
「あんたねぇ・・・」
「のんきにバナナの皮なんて剥いてる場合じゃないのよ、リンッ!」
「あたしが何剥いてたっていいでしょ?だいたい何でそんなにテンション上がってんのよ?」
「ふふん。知りたい?」
ネルがニヤリと笑う。そして両手を腰に当て、クイッとアゴを上げて、リンを見下す態度を取った。
しかし、背は同じくらいなため、実際には見下せていないことをリンは知っていた。
「お子ちゃまなリンは知らなくてもいいことだけど、一応教えといてあげる」
「知る必要が無いなら聞かない。早く出て行ってよ。うるさいから」
リンがクルリと背を向ける。
「ちょっ、おまっ!教えてあげるって言ってるでしょ!」
「聞く必要を認めない」
「ま、待ちなさいってばぁっ!」
台所に戻ろうとするリンの肩をつかんで強引に振り向かせた。
「・・・ちょっと、痛いんだけど。肩」
振り向いたリンの怒気混じりの声に、思わずネルは怯んでしまった。
「あ、えと・・・教えて・・・」
更に瞳にも怒りが満ちて行く。
「痛いって言ってるでしょっ!」
慌ててネルが手を離した。
「ご、ごめん」
リンが肩をさすりながら尋ねた。
「で?何教えてくれるって?」
「あ、あの、レンくんと、・・・えと、痛い?」
「いいから。全部言いなさいよ。レンと何?」
すっかりテンションが下がったようだ。しかし、リンは気の毒とも思わなかった。
「あたし忙しいの。言うなら早く言って」
「あ、うん。で、今日レンくんと、あの、遊びに行く約束したんだけどぉ」
「あっそ。あたしは聞いてないけど」
「うん。レンくんにリンには言わないでって、お願いしたから」
リンの手に握られているバナナが変型した。
「あ、だってリンに言ったら、ホラ、絶対怒っちゃうでしょ?」
本人を前にして、度胸があるのか、無神経なのか?
リンの額に血管が浮き出てくる。
「ふ、ふぅん。そうなんだ。二人だけの秘密ですってか」
「えへへへ。しょーにゃのです。秘密にゃのれす」
ネルの表情がホニャっと崩れた。
・・・コイツっ!
リンは怒りと苛立ちを驚異的な精神力で押さえ込みながら言った。
「・・・で、でも、レンだったら、今朝ミク姉と一緒に古代ネギ展覧会に行ったわよ」
「えぇぇぇっ!そんなの聞いてないぃっ!」
即座にケータイを取り出し、レンの番号にかける。
しかし、いつまでも出ないらしい。数回試した後、リンに問い掛けた。
「そのネギオフ会って、ドコでやってんの?」
「教えて下さい」
「え?」
「教えて下さい、でしょ?」
「ぐっ・・・・・・お、し、うぅぅ・・・」
ネルは欲望とプライドの間で揺れている。
「じゃ、お帰りはアチラですから」
リンが玄関を指差した。
「ぅうう・・・お、お・・・し・・・ぇてくだっ!」
「聞こえない」
「お、教えて下さいっ!」
「ぅんぅん、最初からそう言えばいいのよ」
リンの口の端っこが上がったが、目が笑っていなかった。
リンが古代ネギ展覧会の場所を教えると、ネルは礼も言わずに飛び出して行った。
-後編に続く-
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