日も暮れた街。
大通りは行きかう人に賑わっていた。
街を白に染める雪は街の明かりにきらきらと光り、大きなモミの木に付けられた飾りも静かに雪をかぶっている。
街中には聞きなれたこの日の代名詞と呼べるような曲が流れている。
毎年賑わう今日は、12月の24日、クリスマスイヴ。
なぜか次の日のクリスマスよりも盛り上がる今日。
今夜から次の日にかけて遊ぶからだろうか?
まあ、そんなことは別にどうでもいい。
ただ、気になることがひとつある。
カップル
そう。
カップルがやたらめったらに多いのだ。
8割、いや9割はカップルといっても過言ではないだろう。
もともとこの辺はなかなか私生活では訪れないような高級品を多く売っていることもあり、一般の人はほとんど通らない。
そのせいもあって、道行く人はカップルばかり。
手をつなぐカップルは勿論、腕に抱きついているカップル、果てには、人目も気にせずに体を寄りかからせているカップルもいる。
「はあ」
と、俺はため息を…………つきたかった。
正直、つきたかった。
いつもならついていただろう。
だが。
今はつけなかった。
なぜかって?
ここに来て俺は初めてため息をついた。
別の理由で。
「どしたの?」
「どしたのじゃねーーよ!」
ミクの一言に俺が勢い良く突っ込む。
「はあ」
そしてため息をまたひとつ。
「だからどうしたの?」
そう言って、ミクが俺の顔を覗き込む。
「街行くバカップルたちを見てため息をつこうと思ったけど」
「うんうん」
「つけないんだよ……」
「へ?」
ミクは驚いてというよりも混乱したように言った。
「なんで???」
首をかしげながら尋ねてくる。
「お前だよ! お・ま・え!」
「え? 私?」
俺はまたため息をつき、失望するように首を横に振った。
これのどこをどう見たらカップルじゃないように見えるんだよ。
心の中でそうつぶやく。
ミクは見事なまでに俺の腕に抱きついている。
俺はカップルとは思っていないし、ミクも思っていないだろう。
だが、周りから見たら、完璧なまでのカップルだ。
「いや、あのな、ミク。この様子見てカップルじゃないって思う人いるか?」
「う~ん、カイト?」
「いや、まあ、あいつはな……」
俺はカイトを頭に思い浮かべるが、アイスとマフラーが顔よりも先に頭に浮かんでくる。
あんなに鈍感なやつは他にいないと思う。
「じゃあ、OKでしょ?」
「OKじゃない!!!」
つい俺は声を張り上げ、周りの視線を集める。
その空気に耐え切れず、俺はミクを引っ張って早歩きでその場を立ち去った。
「じゃあさ」
「ん?」
早歩きの途中でミクに話しかけられ、足の速度を元に戻す。
すると、ミクがぐっと顔を俺に近づけてきた。
「私とじゃあカップルはいやなの?」
「え!?」
突然の一言に驚き、俺の足は無意識に止まった。
よく見ると、ミクはしかめっ面だった。
「どうなの?」
「えっと、その……嫌じゃないけど……」
言った途端。
ミクの顔がパーと明るくなった。
「やった!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるミク。
あれだけ長い髪が揺れ、余計に人目を集める。
「あのなミク、頼むから落ち着け」
苦笑いで言った俺を見て、ミクは着地した。
「分かったー」
「はぁ……」
「あ、またため息!」
ミクは俺のため息を指摘して、またしかめっ面に戻る。
「ため息をつくと幸せが逃げるんだよ!」
って、言われてもねえ……。
お前の行動のせいでため息をついてるんだよ!
とは、さすがに言わない。
だが、そんな俺の心情を読み取ったのか、ミクはぽんと何かを思いついたようだ。
「じゃあね」
「うん?」
また顔を覗き込んでくるミクに俺は首をかしげる。
たまにミクはとんでもないことを言いだす。
ましてこんな人がほぼ真横を通るような込み具合の中で爆弾発言をされたら俺はどうすればいい?
などと心配しているうちにミクが口を開いた。
「カップルになっちゃえばいいんじゃない?」
「な!?」
予想的中。
ミクの口からはとんだ爆弾発言が飛び出した。
周りからの視線をまた集める。
「人がたくさんいるところでそんな冗談言うな!」
「冗談じゃないよ」
もはや、爆弾発言を通り過ぎた気がする……。
でも、どうも表情は冗談ではなかった。
「どうなの?」
俺は戸惑う。
返事に困る。
「私は……私はマスターの……唐渡の彼女になりたいの!」
俺は驚いた。
ミクが俺を名前で呼んだことなど今までであっただろうか?
だが、それは「=本気」である。
しかし、俺は動返事すれば言いか分からない。
確かに俺はミクのことが好きだけど、ミクは仕事相手だし…………!?
俺はミクのことが好きだったのか!
ようやく俺は自分の気持ちに気づいた。
今まで感じていた、なんとも言えない照れや恥ずかしさは恋の一部だったのだ。
静かにミクに向き直る。
「ミク」
「うん」
「俺でよければ、付き合ってくれ」
「!?」
ミクは驚きで、言葉を失った。
しばらくの沈黙。
ようやくミクは言葉を取り戻した。
「えっと、あの、その、私でいいの?」
「ああ、俺はお前のことが好きだ」
言った途端、ミクの眼から涙が零れ落ちた。
「な、なんで泣くんだよ!」
「だ、だって嬉しいんだもん。嬉し涙が止まんないの」
泣きながら言うと、ミクは俺に抱きついた。
しかし、もうため息が出ることはなかった。
「よしよし。じゃあ、帰ろうか?」
「うん!」
涙を拭きながら、ミクは答える。
先ほどと同じように俺の腕に抱きつくミクを俺はもういやとは思わない。
そして、変わらない速さで家に向かって歩き出す。
俺とミクは、今までで一番高価な、いくらお金を積んでも手に入れられない大切なクリスマスプレゼントを手に入れた。
メリークリスマス 2009
メリークリスマス!
こんにちは
ヘルフィヨトルです
遅くなりました、ごめんなさい><
今回もいつも書いているボーカロイド話です。
今回は珍しく二人だけでした^^
いつもは他にカイトとかメイコとか出るんですけどね^^
これは私のオリジナル設定ボーカロイド3作目ですね。
ミク誕生日、ハロウィン、そして、このクリスマスです。
本当に遅くなってすみません><
もう、明々後日は元日なのにTAT
とにかく楽しんでくれるとうれしいです。
そして、感想を残してくれるとうれしいです^^
ではでは、また元日で会うことになるのかな^^
bye
読んでくれた皆様にワルキューレが微笑むことを
コメント1
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「僕の命の歌で君が命を大事にすればいいのに」
「僕の家族の歌で君が愛を大事にすればいいのに」
そんなことを言って本心は欲しかったのは共感だけ。
欲にまみれた常人のなりそこないが、僕だった。
苦しいから歌った。
悲しいから歌った。
生きたいから歌った。ただのエゴの塊だった。
こんな...君の神様になりたい。
kurogaki
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ご意見・ご感想
Hete
ご意見・ご感想
やばい・・・
ニヤケがとまらねぇ・・・
2010/03/29 15:12:08
ヘルケロ
お!
メッセージ待ってました←
そう?
にやける??
まあ、狙ってるんだけどね←
2010/03/29 18:36:53