※注意※
この小説には、ボカロ以外のキャラクターも出てきます。
オリジナルキャラクターに嫌悪を抱かれる方は読まないことをおすすめします。
それでもおk! って方は↓↓どうぞ!
光は、知らない。
自分の裏側にいる闇のことなど、なにも。
*
ばあちゃんの家にいるあいだ、一日は農業から始まる。
農業は、毎年夏休みと冬休みにきてやっているので、慣れてはきた。もちろん、年中無休で農業三昧なばあちゃんには負けるわけだけども。
「蛍、そこのねぎをとっといておくれ」
「了解」
大きいかごを担いでしゃがむ。この体勢、腰にくるんだよなあ……こんなの毎日やってりゃ、そりゃあ足腰強くなるだろうよ。ばあちゃんを一瞥する。スーパーで売ってるのよりも確実に大きい大根を掘り出し、かごに投げ入れるさまは、老人と言われても納得できるものじゃない。年寄りの皮かぶった若者じゃないかとか思ってしまうのも無理はないんじゃないか。そんなことを考えつつ、ねぎを引っこ抜く。
長さは普通のとあまり変わらないが、ふとい。一般のと比べると倍くらいあると思う。さすがはばあちゃんの作る野菜。そこらへんのとは格がちがうな。適当に、育ってそうなものを選んで収穫していく。引き抜くこと自体はさほど大変じゃないが、いかんせんこの体勢を続けるのがつらい。これだけは何年やったって慣れない。これから一週間、筋肉痛の日々がくる。いやだなあとひとりごちる。止まっていたって仕方がないので、とりあえずのろのろと再開。
三十分くらいやり続け、ようやく終わりが見えてきた。腰が限界に近いので、一旦手を止めて立ち上がり、伸び。腰がものすごい音を立てた。
「…………」
遠くにいたばあちゃんが、目をしばたたかせながらこちらを見ている。聞こえたらしい。あ、意外と日常茶飯事なので大丈夫です。
さて、あと一列なわけだが……空に向かって伸びるねぎを見て、ふとあいつの姿が脳裏に浮かんだ。
そういえば、ミクってねぎ好きだったっけか。病院じゃなかなか出ないって文句たらしてたのを思い出す。ばあちゃんに言って、ミクの家のぶんももらって帰ろう。よし、そうと決まれば早く終わらせるべし。善は急げ。やるぞ。おー。
しかし、ミクは元気だろうか。きっと元気なんだろうな。僕なんかいなくても、あいつはきっと笑える。
女ってのは、強いから。
手に力が入り、ねぎが一本、ぱきんと折れた。
*
農作業が終わると、あとは自由時間だ。フリーダム。昼食と夕食の時間に居間にいれば問題ないので、僕は部屋で寝転がっているか、外の散策をしている。
外というのは、入ったら迷子になること間違いなしの森のことだ。自分で言うのもあれだが、僕は方向感覚が優れているので、一度も迷ったことがない――というのは半分うそで、たんに毎回決まった場所から決まった方向へまっすぐに進んでいるから、迷子になる要素がないだけだ。最初のころこそなりかけたが、十年近く同じところを通っていれば、自然と道はできるもの。ぼろっちい家の裏手に回れば、その獣道はあった。木々がささやく声を聞きながら、崖へと繋がっているその一本道を歩き出す。
葉こそ落ちているものの、ここらの木は冬でも元気だ。倒れたり、折れたりしているところを見たことがない。十数年ものあいだ、いつきても彼らの様子が変わったことはなかった。僕の揺れた心を落ち着かせるように、ただそこにいる。
いったい、何歳なんだろう。突然降りてきた疑問に、となりにあった木を仰ぎ見た。年輪で樹齢はわかるというが、残念ながら人の手が及ばないこの森に年輪の見える木はない。
わからない。
なにも、かも。
視線を落とせば、足元の落ち葉が、僕を嘲笑うように乾いた音で大合唱。
舞った枯れ葉は、視界の端で地面に落ちた。
つづく
盲目の宇宙飛行士―04―
どーもどーも。盲目の04、お届けにまいりました。
ちなみに、メモ帳でここの下書きしてるときに大きな揺れが。心臓に悪い……。
作品解説という名のつぶやき場。
・最初の、「裏側にいる」。「ある」じゃなくて「いる」。ここテストに出ます(笑)
・最近の若者は弱っっちいんだよと最近の若者が風刺してみたりしてなくもないです。自分への言い聞かせでもあります。
・おや、とあるせりふが二度目の登場ですね。大事な語句は、繰り返すことが多いです(当社比)。探してみるのも一興かも?
・ばあちゃんは脱ぐとすごいんです。
・ミクは ねぎ が だいこうぶつ の ようだ!
ちょっとずつ、伏線も仕込んでいっています。
しかし、書いてる本人もこの先どうなるのかわかりません。蛍くんが思ったよりもべらべら喋るので、長くなりそう。
というわけで次回、【決戦! 命がけの雑巾がけレース!】お楽しみに。
※タイトルと内容は、予告なく変わる場合があります。ご注意ください※
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