人影のない茂みの奥は
ぼくだけの秘密基地
段ボールにおやつに大好きな本
泣きたくなったらいつも駆け込んだ
茂みの奥に人影を見た
ためらったようにぼくに近づいてきて
ここから見上げる空が好きだから
淋しい時は来るんだと言った
初めて気づいた
シャワーみたいな木漏れ日
だからもうここは泣くためじゃなくて
ふたつの笑い声が重なる場所
大人になってもきっと忘れない
きみとぼくの秘密基地
久しぶりに戻ってきたから
よく通ったあの道を歩いてみたけど
鍵をなくしたみたいにたどり着けずに
胸にかすかな穴があいた
あの日の茂みは
今は見慣れぬ家が建って
後ろ手に閉めるドアの向こう側に
いつでも待ってくれる人がいる
ただいまとお帰りで満たされた
今も誰かの秘密基地
いくつもの季節に手を振り続けてきたけれど
セピアに染まってく景色の中
きっと褪せない色があるよ
向かい風の日も冷たい雨の夜も
朝を待つ勇気をそそいでくれる
泣きたい時には闇のように
笑顔あふれる日はこだまのように
振り返ればいつもドアを開けて
迎え入れてくれる場所
変わらずにある秘密基地
胸の奥の秘密基地
きみがぼくの秘密基地
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