今日はメイコの誕生日。
「ミクちゃん、こっちー!」
「ごめんごめん、ちょっと遅くなっちゃった」
今日は午前中で仕事が終わるスケジュールになっている。
誰かの誕生日にはいつもそうするのだ。
先に終わったリンとレンにミクが合流して
途中、予約していたバースデーケーキを受け取って家に帰った。
「カイ兄は?」
カイトは今日1日オフの予定だ。
「飲み物買うついでにおねえちゃんを迎えに行って帰るって」
「ついでっていう距離かよ…」
「過保護なんだよねー、おにいちゃん」
ミクとレンがあきれている間に、リンは部屋の飾り付けをはじめた。
今回はリンが飾り付けの指揮をとるのだ。
「えー、みなさん!今からメイコおねえちゃんのバースデーパーティーの
飾り付けをはじめますが、その前にひとつ注意があります!
おねえちゃんのイメージカラーは赤ですが、決してクリスマスっぽく
ならないように!クリスマスは来月です!分かりましたかー?」
「ハーイ!」
ミクが元気よく返事をした。
いかにも"くだらねえ"という顔をしていたレンにも無理矢理返事をさせ
3人は飾り付けに取りかかった。
カイトはスタジオの前でメイコの仕事が終わるのを待っていた。
もう1時間は待っている。
メイコの仕事が長引いているわけではなく、カイトが早く来たのだ。
プレゼントを渡して気を惹こうとする、けしからん輩を邪魔するために。
さっきからプレゼントらしきものを持ってスタジオを周辺をうろつく男性を
みかけると、無言の視線を送っている。
長い足を組んで座り、いかにも機嫌が悪そうな風で目線をやると
大抵の男性はバツが悪そうに退散する。
すると1人、いかにもまじめそうな男が向こうから歩いてきた。
手には「今どき?」なバルーンラッピングされたぬいぐるみを抱えている。
とたんにカイトの顔が曇った。
この突っ込みどころ満載の男は危険だ…。
一瞬で悟ったようだ。
おそらく無言のプレッシャーなんて効かない、
空気を読むなんて一切無理という雰囲気を漂わせている。
めーちゃんはこういう不器用そうなタイプに甘いからな。
視界に入らないうちにアイツを帰らせよう。
カイトはおもむろに立ち上がるとスタジオへと歩いてくる男の前に進んだ。
「このスタジオに用ですか?」
一応確認する。そうですと答える相手にメイコに用かと再び尋ねる。
思った通り答えはイエスだ。
「君メイコちゃんの弟くん?今日おねえさん誕生日だよね?」
どうしよう。イライラする。
メイコのことを抜きにしても男のくせに「弟くん」なんて言ってくる男に
堪え難い嫌悪感を感じ、カイトは思わず目を逸らした。
「もう少しで終わりそうかな?」
予想通り空気を読まない男は見るからにウキウキしているようだ。
早く自分のプレゼントを渡したい気分は、誰も同じらしい。
無意識にバルーン入のぬいぐるみを抱きしめる手に力が入ったのだろう、
ぱぁん、という晴れやか(カイトにとっては)な音がしてそれは割れてしまった。
ぬいぐるみは床に落ち、一緒に入れてあった色とりどりの紙吹雪があたりを舞っている。
「あ、カイト!迎えにきてくれたの?」
そこにタイミングよくメイコが現れた。
カイトが男に気を取られている間に仕事が終わったらしい。
男はぬいぐるみを拾い上げ、メイコに声を掛けたいが散らかった紙吹雪が
気になるといったふうにあたふたしている。
「うん、早く帰ろう。ミク達も家で用意して待ってるよ」
カイトはすばやくメイコの腕をとると足早に歩き出した。
「うん、あ、あの人どうしたのかな。何か私に用なんじゃ…」
渡す予定のプレゼントがあんなことになってしまって、
とっさに掛ける言葉が浮かばなかったであろう男は
胸の前でぬいぐるみを抱いて、こちらを見ながら紙吹雪の上で
立ち尽くしていた。
「ああ、あれはオレへの祝福の紙吹雪なの」
ある意味そうだろう。めんどくさそうな敵は、いやあの程度敵でもないな、
とにかくイラッとくる奴だったが自滅してくれた。
腑に落ちない顔をしたメイコの腕を引きながら
カイトは最後にもう一度あの男に目をやった。
一生懸命紙吹雪をかき集めている、と、またぬいぐるみが床に落ちた。
かわいそうなぬいぐるみだ。かわいくはなかったが。
スタジオを後にした二人は、みんなの飲み物を買って家に帰った。
その頃家では、すっかり飾り付けも完了して、ルカとがくぽも揃っていた。
二人が持ってきてくれた料理がテーブルにところ狭しと並んでいた。
「ただいまー」
「おかえりー!おねえちゃんお誕生日おめでとー!」
メイコがリビングに入ってくると、ミクの声で一斉にクラッカーがならされた。
みんなもそれぞれにおめでとうと言葉をかけ、食事がはじまった。
「そろそろプレゼントタイムにうつりまーす!」
今日の司会進行役はミクが務めている。
「えーと誰からあげる?じゃあルカちゃんとガクポから」
二人からのプレゼントは紅茶用のカップアンドソーサーだった。
「ルカからこちらのメイコちゃんはお酒より紅茶派だって聞いて」
「がくぽさんと選んだの。ちょっと季節が違うけどさくらとチェリーの
絵が入っているのよ」
とても繊細なつくりのティーカップで一目で高そうだと分かる。
かわいらしいが華やかでもあり、メイコにぴったりだった。
「ルカ、がくぽさん、ありがとう!こんなの欲しかったんだ」
メイコはそう言ってにっこり笑った。
「でもロゼのシャンパンだけは好きなんだよね」
そう言ってカイトがシャンパングラスにロゼを注いでメイコに手渡した。
グラスにはいちごが入っている。
「わーぁ、キレーイ!」
ミクとリンが声を揃えた。
グラスの側面に小さな泡がたち、いちごにグラスに光が当たってとてもきれいだ。
メイコは小さな声でお礼を言うとグラスを受け取った。
グラスが自分にしか用意されていないようなので居心地が悪いのだろう、
少し顔を赤らめてグラスを揺らしている。
「飲まないの?」
カイト顔を近づけ低くささやくとメイコはさらに顔を赤くし「飲む」とつぶやいて
グラスに口をつけた。
自分たちも飲みたいと騒ぐミクとリンには「大人になってからねー」とかわし
「ルカとガクポはあっちにあるから勝手に飲んで」ともてなす素振りもみせず
カイトはひたすら隣のメイコをみつめている。
「メイ姉ホントに居心地が悪そうだな」レンがぼそっとつぶやくと、隣のリンが言った。
「うーん、カイト兄ってメイコおねえちゃんへのえこひいきがハンパないもんね。
でもリンは内心メイコおねえちゃんも嬉しいと思ってると思うよ」
「へー、そんなもんかよ…」
「はいっ!じゃあ次のプレゼントの人ー!」
ミクが仕切っている。絶好調だ。
「はーい!リンです!」
「じゃあリンちゃん!」
リンは自慢のプレゼントをメイコに手渡した。
レンには不評のあれだ。
「でた、ドクロ」
誰よりも早くレンが言った。
「かわいい!」
「リンちゃんセンスいい!」
「でしょ?ミクも欲しいもん!」
レンの予想に反して、女性陣に大好評だ。
リンもエヘヘと頬を赤らめて喜んでいる。
ホンキ?そうなの?オレもしかしてダサイの?
というレンの気持ちを察してか
「オレも女の子にドクロってあんまり好きじゃないよ」と
ガクポがこっそり耳打ちした。
そうだよね!とガクポに無言の笑顔を向け、ちらっとカイトに
目を向けると何食わぬ顔をしてメイコの頭をなでていた。
女子がリンのドクロインカムで盛り上がり、レンとガクポが
謎の同盟を組んでいる間に、カイトはメイコをなでている。
レンは目眩を覚えた。
あれだけ普段カイト×メイコネタで盛り上がる姉達は
こんな時絶対と言っていいほど気づかないのだ。
「まぁいっけどな」レンは不貞腐れたようにそっぽを向いた。
「じゃあ次は、レンくん!」
急に名前を呼ばれて驚いた。
ミクが次のプレゼンターにレンを指名したのだ。
「あ、オレからのプレゼントはこれなんだ。
気に入ってくれたらいんだけど…」
視線を逸らし気味にプレゼントを手渡した。
包みを開けると赤いロング手袋と黒いベレー帽が出てきた。
「かわいい!レンが選んでくれたの?」
「ええ!レンが選んだの?やるじゃん!」
みんな口々にレンのプレゼントを誉めた。
レンの折れかかった心は修復されたようだ。
少し嬉しくなって顔をあげるとカイトと目があった。
ほおづえをつき、もう片方の手でメイコの髪を玩んでいる。
その表情はあくまで勝ち誇っている。
イラっときつつもレンは「オレのプレゼントは以上」と
次をうながした。こうなったら早くカイトのプレゼントが知りたい。
「じゃあ次は私ね」
ミクはクリスマス限定コフレをプレゼントした。
きれいな赤のネイルとルージュ、グロスのセットだ。
「やっぱりおねえちゃんは赤だから」
「ありがとうミク!明日さっそく使わせてもらうからね」
ミクのプレゼントが終わって残すはカイトのみだ。
「HAPPY BIRTHDAY めーちゃん」
そう言ってカイトは小さなショッパーをメイコに渡した。
今人気のアクセサリーショップのだ。
「今だ!行け!」「ブチュッと!」
ミクとリンの妄想虚しくキスは行われなかった。
メイコがラッピングをほどくとボックスが出てきた。
中には細いゴールドの鎖に1つぶのダイヤが施された
ネックレスが入っていた。
「あ、これ…」
「うん、めーちゃんが欲しがってたやつ」
「覚えててくれたんだ」
ああ、なんて乙女チックな展開…
ミクとリンは憧れ、レンは食あたりみたいな顔をしている。
ルカとがくぽは少し離れたところで二人の世界を作っている。
さて夜も深け、バカップル2組とお子様3人によるバースデーパーティーも
お開きの時間だ。
ルカとがくぽを玄関まで見送り、メイコとカイトがリビングに戻ると
ミクとリンは眠っていた。レンは起きてはいるが眠たそうだ。
「風邪ひくわよ」とメイコが揺らしてもいっこうに起きそうにない。
「起こさなくていいよ。オレが部屋に運ぶから」とカイトがリンを抱き上げた。
レンじゃまだ無理だろ?と言われた気がした。
「レンも眠そうね」カイトがリンを連れて行き、リビングには眠っているミクと
今にも眠りそうなレンとメイコが残った。
「ううん、オレはそんなには…」強がってみてもまぶたが重い。
リンを部屋に寝かせてカイトが戻ってきた。
「レン、リンをそのまま置いてきたから布団かけてあげて」
そういうとカイトはミクを抱えた。
レンは眠そうに目をこすりながらおやすみなさいとリビングを出かけたところで
聞き捨てならないカイトのセリフを聞いてしまった。
「めーちゃんも後で運んであげるからね」
なんだとー?!
ここから先が第二のプレゼントなんだろうか?と真相を知りたい気がしたが
眠気には勝てなかった。
聞こえないふりをして、レンは部屋に上がって行った。
明日ミク姉とリンに殺されっかもな、オレ。
と思いながら、ものの1分で眠りに落ちた。
(後日につづく…予定)
めーちゃんハピバ02
つづきのバースデー当日話を。
無駄に長くなってしまいすみません…。
追加キャラ設定
ルカ…近所でがくぽと同棲中?クールでおっとり。
がくぽ…侍ではなく現代人っぽいイメージ。ノリも良くやさしい。
ヘタレなカイトと酒豪のツンデレめーちゃんという王道カップルも
大好きですが、オールウェイズ攻カイト受メイコも見てみたかったので
自給自足で…。でも細かい描写が多くて無駄に長くなって後悔してます。
できたら後日談を書きたいと思っています。
気が向いたら見てくださると嬉しいです。
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