金の時計に　くちづけを
絵本片手に　夜の街
裸足のままで　駆けてゆく

夜色染まる　草むらに
時計兎の　道しるべ
やっとみつけた　兎穴

不思議の国へ落ちてゆく

暗い森で　夜のお茶会
振舞われる　薔薇色紅茶
青の帽子屋　垂らした魔法
水銀に似た　サテュリオン
一口飲んで　抱き寄せられれば
蜜の甘さに　身をゆだねる

嗚呼　幸福アリス
唯　愛欲の味を貪って
「此処が私の住む世界」
《薔薇色世界》を　謳いましょう

アリスは白い　薔薇の花
子供の世界　壊すため
白を散らして　赤薔薇に

快楽の儘　堕ちてゆく

暗い部屋で　独り目覚める
固いベッドと　襤褸い布切れ
「此処は私の世界じゃない！」
幸せに似た　錠剤を
一粒飲んで　瞼を降ろせば
あれは夢だと　思い出せる

嗚呼　幸福アリス
また　不思議の世界に舞い戻る
「此処が私の住む世界」
《薔薇色蜜》を咲かせましょう

帽子屋　チェシャ猫　時計兎
皆が　彼女を愛している

（ちくたく、ちくたく、）

金時計の針は狂ってゆく
幸福アリスの不思議な国は―

（夢みたいに砕けて、）

嗚呼　幸福アリス
もう　不思議の国は壊れてゆく
“此処は貴女の住む世界？”

嗚呼　幻想アリス
今　貴女の世界は終わってゆく
“何処が貴女の住む世界？”
《鉄錆色》を吐き出して

（ちく、たく、ちく、たく、）
（最期に軋む針の音）

あの金時計の　針と一緒に
彼女の息は　止まった



以下　平仮名表記



きんのとけいに　くちづけを
えほんかたてに　よるのまち
はだしのままで　かけていく

よるいろそまる　くさむらに
とけいうさぎの　みちしるべ
やっとみつけた　うさぎあな

ふしぎのくにへ　おちていく

くらいもりで　よるのおちゃかい
ふるまわれる　ばらいろこうちゃ

あおのぼうしや　たらしたまほう
すいぎんににた　さてゅりおん
ひとくちのんで　だきよせられれば
みつのあまさに　みをゆだねる

あぁ　こうふくありす
ただ　あいよくのあじ　むさぼって
ここがわたしの　すむせかい
ろーずれっどを　うたいましょう

ありすはしろい　ばらのはな
だれかのりそう　こわすため
しろをちらして　あかばらに
かいらくのまま　おちてゆく

くらいへやで　ひとりめざめる
かたいべっどと　ぼろいぬのきれ
ここはわたしの　せかいじゃない
しあわせににた　じょうざいを
ひとつぶのんで　まぶたをおろせば
あれはゆめだと　おもいだせる

あぁ　こうふくありす
また　ふしぎのくにに　まいもどる
ここがわたしの　すむせかい
ろーずれっどを　さかせましょう

ぼうしや　ちしゃねこ　とけいうさぎ
みんなが　かのじょを　あいしている


きんどけいの　はりはくるってく
こうふくありすの　ふしぎのくには――

あぁ　こうふくありす
もう　ふしぎのくには　こわれてゆく
ここはあなたの　すむせかい？

あぁ　げんそうありす
いま　あなたのせかいは　おわってゆく
どこがあなたの　すむせかい？
だーくれっどを　はきだして

あのきんどけいの　はりといっしょに
かのじょのいきは　とまった