シーマスの家でメイコが「見た」ものをカイトの時と同じ方法で確認した後、全員揃ってリビングに集まり、今まで起こった事柄を大まかにまとめることにした。　―――まず、メイコの主人は某国会議員だった。不正にボーカロイドを所持し、更にボーカロイドとしての「歌う」以外の機能を…それも酷く人間性を害った機能を付加していた。　で、彼はメイコの目の前で刺し殺された。　ここまでを整理したところでシーマスはふんと鼻で嗤い毒づく。
　
「ふ。映像は一寸たりともカットせずネットの海に放り投げてやる。死後も尚苦しめハゲ。お前の党には今後票は入れん」
「私もそうしよ…、てかさ、もしかして映ってた犯人ってカイトの時と同じ感じだった？　メイコさんが“黒い男”って言ってたんだけど」
「ああ。間違いないだろ。身長、動き方、身に着けてる物、全部同じだった」
　
私はシーマスに映像を見る事を止められたので確認のしようがないが、シーマスが言うならまず間違いないだろう。となるとこれは連続殺人ということになる。　カイトの主人の次はメイコの主人、しかも彼らのボーカロイドの両方と私は出会ってしまった、なんて一体どんな事件エンカウント率の高さだよ私は名探偵か？　解決しろってか？
　
「で。メイコには、どうも破壊しようとした痕跡があった。流石に頑丈なつくりだったから、内部にも外部にもそう影響は与えられなかったようだが。　強盗や殺人が目的なら、ボーカロイドを破壊するなんて面倒なことはしないだろう。時間がかかればかかるほど不利だし、第一あれだけかっつり着込んでサングラスまでして人相隠してるんだ、映像記録ちょっとくらい残ったところで捕まりっこないしな」
「…じゃあ何が目的なの、その、連続殺人犯」
「…推測だが、恐らく“ボーカロイド”だろ」
　
シーマスの双眸が、目の前のソファに腰掛けているカイトとメイコ、二人に向けられる。　もしシーマスの言う通り、犯人の目的がボーカロイドだったとして、それならば何故カイトやメイコを破壊しようとしたのだろうか？　人を殺してまで手に入れようとしたのだから尚更わからない。
　
それに疑問はまだまだある。　殺されたカイトたちのマスターは、ボーカロイド―――それも、不正なボーカロイドを所持するくらいだ、相当に気を使って情報が外へ漏れないようにしていただろう。だが犯人はその情報を知っていた、だから彼らを襲った、そういうことになる。どうやってその情報を手に入れた？
　
「…わからん」
「後は警察に任せとけよ。そのために税金払ってンだ。　いくらなんでもカイトの時の映像とあの映像見りゃァ関連性に気づくだろ」
「だといいけど」
　
ため息をついて、そっとメイコを見やる。　―――アンドロイドだ、それはわかっている。わかっているのだけれども、あのどこか遠くに行ってしまってる瞳と、無表情な顔を見ているとどうにもいたたまれない。　主人にされた仕打ちが彼女を傷つけたのでは、本当は泣きたいんじゃないのか、人間に抱くような思いで彼女を案じてしまう。　シーマスもじっと彼女を見つめ、そして妙にしみじみと言った。
　
「…にしてもお前、よくメイコが着られるような服、持ち合わせてたな」
　
言って振り返ったシーマスが目を向けたのは私の首より下の方。　にこりと笑って拳を握り、一瞬の躊躇もせずその拳をみぞおちに叩き込んだ。
　
　
　
　
To Be Next .