オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボで書けることになった。
オリジナルマスターがメイン、というか、マスター(♂)×マスター(♀)です、新ジャンル!
そして、ところによりカイメイ風味です、苦手な方は注意!
コラボ相手は、かの純情物語師(つんばる命名)、桜宮小春さんです!
(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)
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ゆるりと溶け落ちるように垂れた悠サンの腕に、いまここにある現実を改めて突き付けられた気がした。
慌てて立ち上がり、目についた適当な袋をひっつかんで悠サンの口に当てる。
「ゆっくり息して、だいじょうぶだから……!」
袋をあてがいながら、悠サンの頭を抱きこむように抱える。袖にかかる指に、力が入っていない。痺れがあるのだろうか(過呼吸は、ひどければ手足の痺れを引き起こす。自立できなくなることすらあるのだ)。
ぜいぜいと深く荒かった呼吸が、だんだんゆっくりになっていく。よっぽど苦しかったのだろう、伏せた睫毛が湿っている。
ほんとうに、このひとは、ばかじゃないのか。なにもそんな、文字通りの必死に、ならなくてもいいのに――いや。
「……ばかは私か」
呼吸が落ち着いてきたのを見計らって、そっと袋を外す。閉じた瞼は動かない。このひとの端正な鼻筋を、こんな至近距離で見下ろすことなんて、絶対にないと思っていたのに。
「……ごめん、改めるよ」
きっと、私が逃げていたのは、このひとのこのまっすぐさが怖かったからだ。踏み込まれたら拒めない。それはつまり、捕まったら最後だった、ということでもある。
もうとっくに、罠にかかっていたも同然なのに、私はどこまで素直じゃない態度を取って、このひとを困らせようとしたことか。
今更あんたのことを、鈍感だの何だのと罵れないね。口には出さずに、その黒くさらさらした髪をそっと撫でた。
(……私より髪につやがあるじゃないか。悔しい)
―Grasp―
アキラ編 第十三話
身体を少し揺すっても、悠サンは起きる気配がなかった。とはいえ、ずっと玄関に居座られたままでは困るので、担いで布団まで運んでやることにする。
けれど、後ろから抱えるようにして悠サンを立たせようとしたのだが、うまくいかない。意識のないからだと言うのは、どうも扱いにくい。それに、普段なよなよしている(ように見える)からそうとは思わなかったけれど、意外と上背もあるしそこそこ重い。いちおうこのひとも男だったということか……できればもっと別のところで実感したかったけれど。
なんとか(若干引きずるようにして)部屋に運んでいる途中で、パソコンから延びたヘッドフォンのコードを踏んづけ、勢いでヘッドフォンの端子がパソコンから外れる。ついでにパソコンのスリープモードが解除され、最初に画面に出てきたのは、青と赤のふたり組だった。……いつの間に起動していたんだ、ふたりとも(まあ、いつものことではあるけれど)。
「ま、マスター!?」
「あんまり大きい声を出さないでくれるかな、かいとくん」
「そ……それ! どうしたんですか!」
「カイト、『それ』って言わないの! 失礼でしょう!」
「だってめーちゃん、あれ、あれっ! は、悠サンの死体……!」
ん?
改めて、自分の状況を見る。ぐったりとした状態の悠サンを、引きずるように薄暗い部屋に運び入れる私の図。パソコンから見えている範囲では、きっと悠サンがどういう状態なのか、判別できないだろう。
……いやいやいや! それにしては思考が飛躍しすぎだろう、かいとくん!
「マスター、なんでそんなことしちゃったんですか! チジョウのモツレとかいうやつですか!」
「カイト、野暮なことを訊いちゃだめよ、マスターがどんなひとでも、私たちはマスターのいうことに従うだけ……!」
「でもマスター、やっちゃったもんはしかたないからせめて自首を……!」
「どうしても私を殺人犯にしたいみたいだね!? 冗談じゃない!」
若干青ざめたように見えるかいとくんに対して溜め息をつきながら、とりあえず悠サンを布団に放る。それにしても、ここまでしても起きないということは、彼はよっぽど疲れたのだろう。
部屋の電気を点けて、改めてパソコンに向き直る。
「あのひとは、なんともないよ。過呼吸起こして、疲れて、寝ただけ」
「ホントですか、マスター?」
「……めーこさん、かいとくんは、最近何を見たんだい」
「探偵もののweb漫画を」
「そんなことだろうと思ったよ」
まあ、めーこさんの反応はあきらかに冗談だとわかる代物だったからいいけれど、かいとくんは、ほんとうに私をなんだと思っているのか。き、と画面の中を睨みつけてやると、かいとくんはその大きな身体をすこし縮めた。
「そもそもなんで白瀬さんがうちに?」
めーこさんが、冷静に訊いてきたが……さて、なんと答えたものか。ふと視線を泳がすと、落ちたヘッドフォンが目に入った。
「さっきの歌が、何か関係しているんですか」
……さすがかいとくん、妙なところで聡い。めーこさんが、続けて口を開く。
「歌詞も声も、複雑でした。ゼロとイチじゃ表せない、深い思いがあるように思います」
「おれたちには、そのうたに込められた意味を憶測することしかできませんが……」
ゼロとイチで構成された彼らは、二元論がとくいだ。ゼロじゃなければイチ、イチじゃなければゼロしかない。すぐに、「唯一の回答」を導きたがる。曖昧を好まない。だから、どこまで複雑な感情が読みとれているのかわからないけれど。
「……聴いていたんならわかるだろう、『キミら』には」
彼らが語る、悠サンがうたったうたの印象は、想像は、憶測は、解釈は、きっと間違っていない。
すべてのMEIKOとKAITOがそうだというわけではない。だけれども、ウチにいるめーこさんとかいとくんは、周りがそれとわかるほどに「恋の歌の意味を知っている」アプリケーションソフトウェアだった。
「マスターは、どう思ったんですか」
すがるようなめーこさんの声に、私は背を向けた。
「私の代わりに、美憂先輩に連絡入れてくれないかな。悠サンを引き取りに来てもらわないと」
ふと、寝ていたはずの悠サンが、上体を起こしているのに気がついた。意外と覚醒が早い。まあ、ずっと寝られたままでも困るのだけれど。
「起きた?」
「ああ、起きた……」
まだ頭はぼんやりしているらしい。ふわふわと視線を彷徨わせていた悠サンは、寝起きの子どもよろしく頭を掻いたかと思うと、やっと驚いた様子でこちらに向いた。
「って、どうやって運んだ!?」
「どうもなにも。担ぐしかないでしょうが」
「担ぐって……!」
「正確には、担げなかったから引きずって。意外と重いんだね、悠サン」
腕を組んで見下ろしてやると、驚愕というような形容がしっくりくるような雰囲気で、絶望的だとでもいうような表情をした悠サンは、次の瞬間には頭を抱えていた。……なんだか、おもしろいいきものを見ているような気分だ。
「お、俺って……」
「なんだい、女の子に担がれたくらいで、そんなに落ち込まなくてもいいじゃないか」
「そうじゃなくてだな……」
はあ、と吐かれた息は、溜め息だろう。こちらまで溜め息をつきたくなってしまう。
マイナス思考に陥った悠サンは面倒くさい、と、いつか思ったような感想が湧きあがるけれど、自分もなかなか人のことを言えないので、あからさまに態度に出すことは避ける。その代わり、
「過呼吸のことを気にしているのかい」
すこしだけ気遣う風に、言ってやる。それでも、悠サンは、顔を上げないままだった。
「ホント、俺、ダメだな……」
「それ、いつかも言っていたね。でも、悠サンは、悠サンが考えてるほどだめなやつじゃないと思うよ」
「……お前が知らないだけだ。俺がどれだけしょうもない男か」
「しょうもない、ねぇ……」
まあ、たしかに、自己嫌悪している男の人ほどしょうもないものはない気がする。
無反省なのもそれはそれでこまるけれど、自分で自分をしょうもないというということは、所詮その程度、という感じもしてしまう。
いやだな、と、思った。悠サン相手じゃなかったら、すぐに家から追い出しているところだ。
「女って上手いこと生きていくよな」
「……どういう意味だい」
「自分の言葉が相手にどう影響を与えるか、考え尽くした上で、自分のペースで話を進める。その場が上手くまとまるように、思ってもいない事を、平気な顔で吐いて……腹の中で考えている事は、ずっと溜め込んでる」
私個人としては聞き捨てならないような文言の数々に、思わず眉間にしわが寄る。しかしこの口ぶり、なんだか面倒事が面倒の皮を幾重にも被ってしているようなにおいがする。
放っておくと悪化する気がする。そしてたぶん、私は、この人のこの状態を、悪化させたくないと思っている。
「俺が知ってる女は、本当の思いを、俺には絶対に見せようとしてくれなかった。俺も自分と同じなんだと思ってたんだろうな……俺が思い切って伝えた事も、本気だとわかってもらえなかった」
……完全に浸っている、と、冷静な私は分析する。このひとは『可哀そうな自分』の『記憶』に酔っている。それがどれほど不毛なことか、救いようのない痴態なのか、このひとは知っているだろうに(なにせ私がついさっき、同じような状態だったのだから)。
さて、どう反論したものかと、思考を巡らせるけれど、その前に、悠サンが口を開く方が早かった。
「怖いんだ。本当は何を考えているか……腹の底が読めない、そんな女が怖い」
その言葉に、霧が晴れた、気がした。
きっとこれが、白瀬悠の本心で、過剰なまでに、『他人からきもちを否定されることと、好意を拒絶されること』を恐れる理由。
「アキラに会ってやっと、怖くない、大丈夫だって思えるようになったのに……結局、これだもんなぁ……情けなくて涙も出ねえよ」
「……悠サン」
ああ――ちくしょう。
こういうときこそ考えてものを言うべきなのに、私のもつ、いささかうっかりやの口は、私の頭がなにを言うべきか考えるより先に、空気を震わせていた。
「それが本心かい? じゃあ、さっきのあれは、そんなきもちで言ったことばだったのかい?」
しかし、言い方は考えなくてはいけないものの、伝えたいことは変わっていない。
このひとに、気付かせてやらねばなるまい。知らせてやらねばなるまい。
私の考えていることを。私の思ったことを。私があなたに対して、してやれるかぎりのことをしてやらねばなるまい。
「私のことを、心根からものをいわない人間だと、そう思っていたの?」
悠サン、あんたは、こうして私の前で諸々をさらけ出している時点で、十分なさけない。
けれど、私は、白瀬悠というひとが、こうしてやっと面と向かって本心をさらけ出してくれたことが、とても嬉しいと思うくらいには、あなたのことを――。
【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第十三話 【アキラ編】
マスターの設定で異様に盛り上がり、自作マスターの人気に作者が嫉妬し出す頃、
なんとコラボで書きませんかとお誘いが。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。
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アキラ、めんどうくさがるの巻。
落ち込んだ人への対応や反応って、個人の性格が出る気がします。
作中のアキラは言葉だけ見ると追い討ちかけてるように見えますが、個人的には、
「落ち込んでいる本人がのぞんでいるこ」とをしてやることだけが、よい対応では
ないと思うのです(´・ω・`)
そしてまたしても遅くなって申し訳ない/(^o^)\
更に今回は本編の後半をこはさんに丸投げするという暴挙まで発動しました……。
こはさんに助けられてばかりのつんです、ほんとうに頭が上がらない。
悠編では、先輩がかなりうちひしがれてるようなので、こちらも是非!
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今回投稿から、つんばるは1ヶ月くらい創作をお休みします、Graspの続きを楽しみに
して下さっている方、及びコラボ先のこはさんにはたいへん申し訳ない話なのですが、
実はつんばるは2月に卒業論文を提出しなければならない身の上なのですよ^p^
こればっかりはリアルオワタになると色々まずいので、しばらくリアル優先で
いこうと思ってます、ご理解いただけるとうれしいです。
多分2月の中旬くらいには戻ってくるんじゃないかな!
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白瀬悠さんの生みの親で、悠編を担当している桜宮小春さんのページはこちら!
⇒http://piapro.jp/haru_nemu_202
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