私は、急いで台所に向かい、大きなタオルを持ってきて、半ば投げるようにしてタオルを写真立てに被せた。

「な、なんなの、これ・・・?」

流石の私も動揺を隠せなかった。
今日はおかしい。何かがおかしい。

私の言葉を一言一句漏らさず無視したママ。
カバンに入っていた包丁。
そして、この血のついた写真立て。

考えても考えても答えは出てこなかった。
私は気持ちを落ち着かせるため、本屋に出かけることにした。

本特有のあの香りに包まれていたら、きっと忘れる。

そう信じて、私は家をでて、本屋に向かった。




















本屋に入ると、私はうつむきながら週刊誌が山積みにされているコーナーへと走った。
学校帰りの高校生や、少し顔に皺の浮かんだおばさんの間を通り抜け、そのコーナーに着く。

雑誌を手に取り、読む。

「この夏はこれで決める!!最新の夏コーデ100選!!」

という見出しがあったので、目的のページへ飛ぶ。
様々な人が、いろいろなカッコでポーズをとっていた。


この服は高いな~。あんまりよくないのに。
この人なんかウザそ~。

とか思っているうちに本屋の香りにまぎれて私の気持ちも晴れるとか思っていたが、実際そんなことはなく、
本屋の香りは私の心に雨雲となってたまっていく一方だ。

私はため息をつき、雑誌を戻した。
本屋の店頭においてある新着の本の棚をぼんやりと眺めながら、私は本屋を後にした。



















家に帰るともう夕食はできていて、もうパパとママは食べ終わったらしく、食器はママたちの前から消えていた。

「いただきます」

私は今日のおかずのナスの炒め物を口にいれた。

途端、異変に気づく。

(なんか、思いっきり冷めてるな・・・まるで作り置きしたみたいに)

ママは料理については妥協しない人だ。作り置きなど絶対しない。

「リンも料理の得意な女にならないとダメよ」

それがママの口ぐせだった。
しかし文句をいうと怒られるので、異変を感じながらも、完食した。



















食後、私はニュースを見ながら紅茶を飲んでいた。
テレビはニュース番組を流しており、暗い世界情勢などをリビングに吐き出していた。

突然、画面がスタジオに切り替わった。キャスターが原稿を受け取り、緊張した面持ちで原稿を読み上げる。

「速報です。今日午後未明、簿価炉山山中でリュックに入れられた女性と男性のものと見られる死体がみつかりました。死体は両方とばらばらにされており、警察は身元の確認を急いでいます」

「やだな~簿価炉山なんて近所じゃないか」

「ホントね~」

パパとママが口々にそういう。
一瞬、私に冷えた視線が向けられた気がした。

私は、胸騒ぎを感じていた。












ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

閉ざされた記憶 第3話(少し血表現あり)

いや~本屋の香りっていいですよ~

皆さんも是非(ry

閲覧数:319

投稿日:2011/07/31 00:45:07

文字数:1,192文字

カテゴリ:小説

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  • 苺ころね

    苺ころね

    コメントのお返し

    みなさんに面白いといっていたただいて幸いです?
    今構成を考えているので、いましばらくおまちくださいね?

    2011/08/03 23:15:36

  • 日枝学

    日枝学

    ご意見・ご感想

    読了! いやあ展開面白いです。
    だんだんとおかしいことが増えて行って、同時に嫌な予感も高まっていくのが読んでてぞくぞくします。こういうの良いですね。
    執筆GJです! 続き期待してますよー

    2011/08/01 00:29:58

    • 苺ころね

      苺ころね

      コメありがとうです?

      がんばって書かせていただきます?

      2011/08/02 10:17:49

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