※警告という名の諸注意、やっちゃったよセルフパロ
・帯人×女性マスター(篠武)
・カイトは出てきません
・妄想による世界観、しかも本家よりダーク。
・オリキャラ満載(オリキャラは名前・設定ともにシャングリラと同じ・若干性格は変わっている場合もあり)
・帯人はアンドロイド・機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
※ここ大事※
多分いないとは思いますが…万が一、本家シャングリラを少しでも気に入ってくださっている方がおりましたら、今すぐ全力で引き返してください!本家シャングリラとは一切関係ありません。悪いのは全面的に私ですorz
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
FINAL STAGE
SIED・TAITO
「篠武、何見てるの?」
「ん、帯人も見てこれ、この動画!ほらほら早く!」
彼女と一緒に生活するようになって、もうすぐ一年が経つ。ここまでくるのにいろいろあったけど、概ね平和で落ち着いた暮らしが続いていた。
都内のマンションの一室、それなりに広いリビングで、ソファに座ってPCの画面を見ていた彼女の背後から、優しく肩を抱き締め包み込む。
長い髪に頬を寄せて、覗き込んだそこに映っていたのは。
「これ…、」
ステージに立ち、澄んだ美声を響かせ歌う『VOCALOID・KAITO』。
(これが、オリジナル…なんだ、)
歪みのない堂々とした立ち姿は、ぼくとは似ても似つかない。
蒼穹の髪、整った面立ち、長身でしっかりした体躯、何もかもが違いすぎる。
周囲を蕩かす甘い笑顔は陰り一つなく、彼が周囲から惜しみない愛情で満たされているのが感じられた。
「よかった、無事にプロジェクト成功したんだねー、」
ほっこりと笑い、動画に見入る篠武を可愛いと思うと同時に。
「何、その男に気があるの?浮気はダメだって言ったよね?」
湧き上がる嫉妬心を持て余してしまう。
彼女を信用してないわけじゃないし、本気で疑ってはいないけど。その視線を、笑顔を、言葉を向けられるのは、ぼくだけがいい。
(ねぇ、篠武もオリジナルが好きなの?ぼく以外に、あなたの気を引くものが存在するなんて許せないんだけど、)
我儘だよね、わかっている。でもどうしても、この欲求は止められないんだ。
「ん、ヤキモチ?なら、後ろからじゃなくて、ちゃんとオレの隣に座れって、」
伸ばされた手を取り、回り込んで彼女の隣に座る。そのまま指を絡めて引き寄せると、素直にその柔らかい身体がぼくの腕の中に納まった。
「答えて。ぼくよりそいつがいいの?」
自分でも怖いほどの、感情のない淡々とした声。冷たいどろどろした暗いものが、ぼくの奥深くから流れ出してくる。
『そんなことないよ』『帯人が好きに決まってるだろ』『妬くだけ無駄だ』なんて、聞かなくても予想できる回答じゃ、ぼくは納得しないよ。
「お前は言葉が欲しいのか?それとも、いつかみたいに…行動で示して欲しい?」
「…あっ、」
顔を上げた篠武が、いきなりぼくの身体に乗り上がり全体重をかける。不意打ちを食らったぼくは支えきれずに、背中からソファに沈んだ。
気付いた時には、覆い被さる彼女の琥珀色した瞳に囚われて、思わず息を吞む。
(あぁ、とっても綺麗…、)
鼻先が触れ合う距離にある頬が、淡く染まっている。密着した胸の柔らかさ、絡み合う素足の熱さに一気に鼓動が跳ね上がった。
いや、違う。これはぼくの心音じゃない。
彼女のリングから伝わる生体反応情報の波形が、その鼓動を伴い胸の中で大きく反響しているんだ。
(篠武、すごくドキドキしてる、)
ぼくの近くで、触れ合って、体温を感じて、こんなにも胸を高鳴らせている。
「で、どっちがいい?」
眼帯の上にちょこんと唇を落とし、彼女がにやにや笑っているのを見て、もっとして欲しくなった。
どっちかなんて、足りない。ぼくは欲張りだから、全然足りない。
「両方じゃ…ダメ?」
さっきまでの嫉妬心が完全に消えたりはしないけど、どろどろした何かは形を変え、いつの間にか甘さを含んだ緩い痺れに取って代わられていた。
「んー、帯人は本当に甘え上手だな、」
「だって、大好きな篠武に、もっと愛して欲しいから…、」
他者に向けたことのないその愛情を、独占できるのはぼくだけ。
だから、もっとたくさん実感させて欲しい。
「これ以上オレにどうしろと…。帯人を満足させるのは、なかなか難しいねー、」
「そういう篠武は…ぼくに満足しているの?」
ふと、思いついて聞いてみた。よく考えると、さっきみたいに彼女はぼくをやきもきさせるけど、その逆はない。
「ヤキモチとか、妬いたことない、よね?」
これまで人としての感情が足りてなかったと自称するくらいだから、もしかしたら『嫉妬』を知らない可能性も…?
「いやー、こう見えていろいろ考えちゃってたりするよ、」
「…例えば?」
「これとかさ、」
おもむろに身を起こすと、ぼくの腰の上に跨ったまま、つい今しがたまで見ていた『VOCALOID・KAITO』の動画を指し示す。
「本当は帯人が…。何の問題もなく、まー君の元に生まれていたら、あのステージに立っていたのはお前だったんだよなって思って…、」
「うん…、」
確かに、もしあの騒動がなかったら、ぼくの中にある基盤を使って創られた『KAITO』がデビューしていただろうけど、果たしてそれはぼくなのかな…?
「たくさんの人たちに囲まれて、超絶イケメンでもてはやされて、甘い歌声で女の子たちにキャーキャー騒がれてさー、」
「…ん?」
「それって何か腹立たしいってか…、激烈ムカつかね?オレの帯人なのにさー、」
「………、」
同意を求められても、わからない。
誰からも見捨てられた欠陥品のぼくが、あんな風にステージでライトを浴びているところなんて。
望んでもないのに、想像できない。
「でもさ、本来の道筋を辿ってたほうが、帯人にとって幸せだったかもな。…今より、きっと、ずっと幸せだったと、…思う、」
「なんでそんなこと、言うの?」
寂しげに目を伏せる篠武の腕を掴み、もう一度ぼくの上に引き倒す。もう離れないように、しっかりと抱き締めた。
「あんなところにぼくの幸せなんか欠片もないよ。華やかな舞台も、広い世界もいらない。どこの誰とも知れない、何千何万の人間たちの喝采よりも、たった一人…あなたの寵愛が欲しい、」
『VOCALOID・KAITO』として手に入るものは、例えそれがどんなに栄誉ある功績でも、ぼくにとっては全て意味がない。
ぼくが唯一望むのは、彼女だけだから。
「今こうしてられるのが一番幸せ。だからね、篠武の存在丸ごと全部、ぼくのものでいいよね?篠武が大好きだから、他には何もいらないから、ね?」
だからぼくを見て、余所見はしないで、何にも気を取られないで、一瞬たりとも気を逸らさないで。…なんて、流石に呆れられるかな?
「んー…、なら帯人も丸ごと全部オレのものってこと?」
「うん、ぼくは篠武のものだよ、」
彼女の指に光るリングが、その証。あなたが規則正しく響かせる胸の波紋で、ぼくは生かされている。彼女の命そのものが、ぼくを縛りつける鎖だなんて…これって最高の拘束具だよね。
「そか、…まぁ、お互い今更だな、」
紙一重の狂気が潜む願いを笑って肯定する彼女が、ぼくの胸の手術痕跡に頬を寄せる。
お互いの体温で温まったせいか、篠武から立ち上ってくる甘い香りが鼻孔を擽った。
「で、ぼくまだ貰ってないんだけど、言葉と行動、」
「…ん、そうだっけ、」
とぼける彼女の身体を反転させて、今度はぼくが覆い被さる。ちょっと狭いけど、その分密着できるのが嬉しいからいいや。
「ねぇ、両方くれるって言ったよね?」
少し掠れた声で、呟くように耳元で息を吐くと、面白いくらいに篠武の肩が跳ねた。
「おわっ!?わかったから、意図的に声色変えて囁くのやめろ、腰が砕ける。そういうところVOCALOIDだよなー、」
「…早く、」
「あーもー、急かすなって、」
苦笑した彼女の額に唇を落とすと、おもむろにぼくの背中に腕が回される。クスクスと笑う愛らしい声が耳に心地いい。
「…篠武、大好き、」
「ん、ありがと。…オレもね、愛してるよ、」
やっぱり、ぼくの幸せは今この瞬間ここにしかない。
ぼくはPCの電源を落として羽織っていたコートを脱ぎ捨てると、再び高鳴る篠武の鼓動を全身で感じていた。
欠陥品だからこそ手に入れられたもの、こんな尊い幸せを知らない、味わえないなんて…。
オリジナルの『KAITO』のほうが可哀想だな、とか。
愉悦と蔑みの混じった笑みを浮かべてしまうぼくは、紛うことなき『不良品』だね。
終わり
※亜種注意※Lost.Eden//叶わなかったシャングリラ【帯マス】最終話
終わりましたー。長かったー;
でも、まだ書き足りなかったりするんですが…とりあえずこれで終了です。
ここまでお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました!
あとは、また小ネタとか懲りずにちょこちょこ書こうかとか思ってます。
本家のカイマスも書きたい…。でも分家(?)の帯マスも楽しい…。
あ、そういや最後まで『マスター』になってないような…;
帯人の所有者=マスターってことで、許してくださいorz
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