わたしね,わたしね,おおきくなったら,まいにちおどるの!

それでね,みんなをしあわせにしてあげるの!!




「そう,頑張ってね」


うん!!


「私は,いつでも貴方の味方だからね」


うん!!
わたしも××の,みかただよ?


「ありがとね」


どーもどーも
おきになさらずー


「ふふ」


へへへ


























目の前に引かれる一本の線
【境界線】と呼ばれるものらしい


それは,貴方と私の間に引かれ,二人を引き裂いている
とってもとっても,邪魔な存在







「ねぇ,これさ,踏み越えたらどうなると思う?」



貴方は訊く



『?
 やる,みたら?』


私の乾いた返事




「それっ,と」



貴方はその線の上に器用に乗ってみせた



「どぉう?」



ニヤリと笑う貴方

興味なさそうに目をそらしつつも,少し感心してしまう私
でも,紡ぎだされる言葉はこれ




『私,境界線,違う,あの,階段,いい』


「えぇ? あれ?
 ……あれは,無理じゃない?」



分かってるわよそんなこと

冗談なのに,真に受けてる
貴方って面白いのね




「このまま,この白しかない世界で一生を過ごすのなんて,ヤだよねぇ」


『そう,ね……』



心にもない言葉

何?
貴方はここから出たい訳?

めんどくさ……




「ねぇねぇ,一緒にあそこ,行ってみない?」



私に有無を言わせる前に,手を引っ張っていく貴方
ちょっと,強引なんじゃないの?



「このまま,ここにいたって,全然良いことなんて無いでしょ?」



笑顔の貴方

はっ
何で,そんなに笑顔なんだか……




「あそこはね,夢の場所なんだよ」


『はぁ,そう,なの……』


「私はね,あそこに立って,皆に自分を認めてもらうのが夢なの」



【夢】ね

私も,昔は持ってたような気がするけど……
今となってはどうだか



「あぁ,胸が躍るわねぇ」



貴方,散々躓いてたじゃない
あんな,無様な姿を魅せる?
馬鹿じゃないの?



「ねぇ,貴方も応援してくれる?」


『気,向く,そうしたら,ね』



貴方のその笑顔が消える頃に,私は貴方の味方になってるんじゃないかしら?




「あのね,私ね,貴方のことが大好きなの」



ふぅん
で?



「でもね,それ以外にも大好きなものはいっぱいあるの」



興味,ない



「優しくしてくれたパパもそうだし,時に厳しく叱ってくれたママもそうかな?」



誰,それ?



「あとは,熊のルナもそうだし,兎のレムもそう
 猫のレイも忘れちゃいけないよね
 あ,コレ全部ぬいぐるみね」



なぁんだ
ぬいぐるみか



「それから,それから……」



夢見る女の子みたいね,貴方

私はそれをぼーっと眺める







でも,何でかな?

そんな貴方を見てると,目が眩む
頭がくらくらする
耳がキーンってなる
体はぐつぐつなるし……


もう,貴方嫌い!





『私,遠い,行く,ない』



私の数少ない自己主張



「えぇえ?
 やっぱぁ,成長するためには遠くに羽を伸ばさなくっちゃぁ」


『ここ,踊る,したい』


「ここでぇ?」


『うん
 ここ
 この,場所
 一緒,どう?』



何でだろ?

何で貴方なんかを誘うんだろ?
むしろ,離れたいぐらいなのに……






















うるさい!
もうちょっと静かに出来ないの!?

キーキーキーキーと,貴方は何?
何処かの野生の生物なの!?


この白の空間に音が反響して耳がおかしくなりそう……
頭がガンガンする
体に響く……





でも,これで良い
これで良かった
だから,私は想いを口に出さなかった


この空間が貴方の声で埋め尽くされてなかったら,
この空間を埋め尽くしていたのは,それはそれは嫌なもの
最低なもの

貴方の言葉はそれを包み込み,消滅させた


全ての音が渦巻き,それだけ闇へと葬られた




でも,それで良くなった訳じゃない

ただ,私が嫌うもの
それが居なくなっただけ

それ以外は,何の変化も無い



『これ,まだまだ,駄目』


「えぇぇぇ
 頑張ったのにぃぃ」



頬を膨らませ,拗ねる貴方

何です?
子供なんですか?



『全て,吐き出す,いい』


「吐き出す……?」



それは,声や感情だけじゃない
自分が出せるものを全て吐き出す

それで,体が壊れようと知ったことじゃない


そう!
吐き出してしまえば良いの!!!







貴方と私が交わす言葉は,どれもこれも同じ長さ
話していることは違っても重さは同じ
文字数は全く違っても,長さは同じ


共通することは短いといこと




そんな,短い言葉で繋がれている,と思い込んでる貴方がいる
それは不思議な感覚

繋がっていると思っている相手と真逆のことを考えているなんて……


面白いったらありゃしない






私は,貴方によく訊かれる

「私のこと,嫌い?」と


私はすかさず『えぇ』と応える

貴方は一瞬沈んだような顔をし,それから笑う


「嘘ばっかりぃ」と





私は自分でも分からない

どうして,顔も合わせたことのない貴方のことが嫌いなのか
どうして,私という存在が貴方のことを毛嫌いするのか



少し悩んで,それから馬鹿馬鹿しくなって,疲れて止める
そして寝る

そんな毎日









貴方は可笑しなことをよくする


だって,笑いながら怒るのよ?

口角を上げて,はにかみながら「それは,酷いんじゃないの?」って怒る




また,ある時は俯きながら笑ってる

目を伏せて,誰にもその顔を見られたくないかのように,笑っている


私が『何故,嗤う?』と訊くと,
貴方は「嬉しいときには笑うのよ?」って,教えてくれた


睫にはキラキラ光る雫がついていた













『ねぇ』


「なぁに?
 そっちから,話しかけてくるなんて珍しいね」


『気,向く,た,だから』


「そうかぁ
 嬉しいなぁ」



貴方は笑ってる

何処を見てるかは分からない

でも,笑ってる
だって,口角が上がってるもの


それが,笑っているというものなんでしょう?
教えてくれたのは貴方じゃない



「で,どうしたの?」


『つまん,ない』


「……え?」


『仮面,いらない
 つまらない,から』


「……仮面…………?」
























「ほら,いくよ?」



頭の中を流れる心地よい音楽



「ここで,跳ぶ!」



その旋律に乗る貴方の声



「ホップ,スッテプ,ジャーンプ!!」


『ジャンプ,違う』


「わ,分かってるってー
 いや,つまんなそうにしてたからさ
 笑って欲しかったから……」



それは無駄な努力

私は嗤うとき以外,笑わないから




私たちがいるこの世界は,とってもとっても狭い

この部屋
この白の部屋だけ


でも,この部屋の全てを知ろうと思うと,とってもとっても広くなる





この部屋の隅で,私達は踊る
舞う
蝶となる
飛躍する










「だ,大丈夫!?」



ちょっとクラッときた

あぁ
いつもの感覚


足場が安定しない
きっと,世界はもうすぐ終わるんだ



そんな終末感を楽しむ
本当に世界が終わるってなったら,私はこんなにも冷静でいられるのかしら








パッと,体を離す
手は硬く握ったまま


足場が崩れた
フラッとバランスを崩す



このまま,私は消えちゃうの

そしたら,こんな狭い白ともバイバイ
きっと,綺麗なお花畑へ出られるわ


ふふ
楽しみねぇ







ふと,顔を上げると,私の目が捉えたものは心配そうな貴方の顔

花と比べたら,雑草以下のその顔だけど,何だか安心する
私の心を安定させる


そんなこと,しなくていいのに……






目を一度閉じる
もう一度開く

視界を闇が覆ったのはほんの一瞬


……だったはず







なのに,私が再び貴方を見たとき,貴方は目に水をためていた
そして水は溜まり,雫となり私の頬の上に落ちる





目を閉じる
そして,もう一度開く

視界を闇が覆ったのは,どれほどの長い時間だったのか







その間,だったと思う時間



世界が回っていた
くるくるくるくるりと
回っていた


私はその場所に留まったままなのに,世界が,貴方がくるくるくるくるりと回った


私のことはそっちのけで,仲良く回ってた






酔った

闇の中で,何も見えない中で私はただ,吐き気を抑えるのに苦労していた
















それを,眺めていた私
闇の中の貴方を眺めていた私


闇の中で蠢く貴方は,私には光のように見えた




でも,ただ見てるだけ
私はただの独りの傍観者








「ねぇ,大丈夫?」



闇の中で,貴方はそう云ってきた
私に手を差し伸べてきた

私はこくり,と頷くと貴方の手を取った





「貴方は,何処に行きたいの?」



貴方の質問



『最終電車』


「さいしゅう……?」


『そこ,行く,そうする,た,全て,終わる』


「……」


『だから,行く』


「私は,終わってほしくないかなー」


『ん』




私は貴方の手を引いた


貴方の驚いたような顔は知ってる
一瞬,振りほどかれそうになったのも知ってる
それで,その後すぐにぎゅっと握り返してくれたことも知ってる


でも,私は貴方の顔を見ずに,進む



急がないと最終電車が行っちゃう
乗り遅れて,駆け込み乗車なんてしたら車掌さんに怒られちゃう









今の私はいつもの私じゃない


何だか,何か,普段と違うことをやってみたくなる
うずうずする

胸の中にぽっかりと穴が出来た



この穴を創ったのは貴方
他の誰でもない貴方







でも,この穴の御陰で,アレを信じても良いかなっ,て気分


運命




私の大嫌いな言葉だけど,ちょっとぐらいなら信じてもいいかな


だって,貴方と逢えたんだし
運命って,よく分からない





運命は,とっても幼稚
いつもイタズラを仕掛けようとする


私は,大抵無視
スルーして,よけて,何も無かったかのように歩き出す




でも,貴方は違う


貴方は目の前にあるそれが見えてるはずなのに,自分から突進していく

馬鹿なんじゃないの? って思うけど同時に少しうらやましい


イタズラに巻き込まれてる貴方はいつも笑顔だから





どんなときに,笑顔になるのかなんて私は忘れたけど,きっと貴方は今幸せなんだよね










だから,私も少し思った
幸せになりたいな,って





「おっと……」



躓いた
貴方は,躓いた
私は躓かない




貴方が躓いたのは己の蟠り

私には,躓くそれが無い




とっくの昔に捨ててきたから




「ん?
 今,笑った!?」


『うん
 嗤う,した』


「べ,別に,今のはわざとだからね!?」




そんな大きな声を出さなくても私は近くに居るんだよ
それとも,貴方の目には私はとても小さく映ってるの?




『……どんくさ』


「な……!?」

『私,躓く,ない』


「むっきぃぃ!!
 何よ!?」


『……面白い』


「もぉぉう!!」



貴方は笑ってた
私をバシバシ叩きながら,楽しそうにしてた




「こういう,日常的な会話が幸せなんだよねぇ」




笑顔の貴方はそう云った
私には,そう聞こえた









(前のバージョンに続きます)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ワールズエンド・ダンスホール  ……コレ,ミクとルカの歌なんだよね? マイワールドの中にはミクしか,出てこなかった…………

ここまで,よんで下さった貴方
ありがとうございます!!


まずは,素晴らしき原曲様のURLでもどうぞ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10759623

駄文の後の,お耳直しは大切ですぞ!





今回は現実逃避P様の『ワールズエンド・ダンスホール』です

解釈がムズかった……
この曲は前から知ってたんですけど……
ムズかった



菜流さんから頂いたリクエストだったんですけど……

すいません!
こんな文章になってしまって…………





いや,この歌,最初聞いたとき,ミクだけだと思ったんですよ
で,後でルカも歌ってると聞いて驚きでした



なので,この文章も結局,人間(っぽいもの?)は1人しか出てきませんのですよ


『壁から出てきた』のは,まぁ,同一人物ですよね

心なしの空っぽの器と,器なしの心だけの存在のお喋りになりましたねー
本当はこんな歌じゃないはずなのにぃぃ





ご意見・感想いただけると,すごくすごく嬉しいです!
よろしくお願い致します

閲覧数:336

投稿日:2011/04/02 00:35:01

文字数:4,953文字

カテゴリ:小説

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