※警告という名の諸注意、やっちゃったよセルフパロ
・帯人×女性マスター(篠武)
・カイトは出てきません
・妄想による世界観、しかも本家よりダーク。
・オリキャラ満載(オリキャラは名前・設定ともにシャングリラと同じ・若干性格は変わっている場合もあり)
・帯人はアンドロイド・機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
※ここ大事※
多分いないとは思いますが…万が一、本家シャングリラを少しでも気に入ってくださっている方がおりましたら、今すぐ全力で引き返してください!本家シャングリラとは一切関係ありません。悪いのは全面的に私ですorz
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
※若干グロ(?)表現アリ
50.
SIED・SINOBU
「……で、オレって一体、何回死ねばいいの?」
病室のベッドの上、横向きに寝ているオレの脇に立つ加奈さんに問う。まぁ、そうは言っても、まだ二回目だけど。
って、病院に喪服はまずいんじゃないか?ものっそ不謹慎だぞ!?
「そんな顔しないで、大丈夫よ。多分、これで最後だから、」
最後、だったらいいんだけどな。
あれから、加奈さんのとこの特殊医療班から派遣された、救急救命士の皆様の迅速な対応で病院に担ぎ込まれたオレは、何とか一命を取り留めた。
だけど、有栖の息子(実際には娘ですが)の存在が榊に知れてしまった手前、そのまま死んだことにして…今日、偽装葬式をしてきたらしい。
なんつー手間暇かかることを…。
「篠武さんの代わりの遺体、探すのも苦労したのよ。身元不明の若い女性体は絶対数が少ないから、系列病院片っ端から当たって…、」
やめろ!!死者を冒涜するな!!
「でもぼくは、感謝してるよ…。誰かもわからない女のおかげで、篠武が自由になれたんだもん、」
「帯人…、」
そうだね、でもオレは居たたまれないよ。こんな欠陥品を生かす為に、その人の人格は消されてしまった…。
「でもそれは、篠ちゃんも同じだったんだよね。所長に全部聞いたよ、…ゴメン、何も知らなくて、」
いや、別に…そこは謝るところじゃないと思う。
「さて、これからのことだけど。もう二度と、私たちは会わないほうがいいわね、」
「所長…!!」
「仕方ないでしょ、死んだ娘が私の周りをうろうろしてたら、変な噂がたっちゃう、」
「ですが!!」
「いいんだ、まー君。…わかってるから、」
これまでと同じ暮らしは、もう出来ない。
今まで加奈さんの庇護のもと、何の不自由もなく生活していたけど、それももう終わり。
でも何故か、心の何処かでほっとしていた。
(不自由なく?本当に?)
オレの為にと用意された籠の中、義母の監視下で生きる毎日は、ただ息をしているだけの退屈なものだった。
それでも、飼われていた鳥が突然野に放たれて、上手く羽ばたけるのかと不安も少なからずあるけれど。
(まぁ…何とかなるだろ、)
「でも、代わりと言っては何だけど、あなたに贈り物があるのよ?」
「贈り物…?」
なんとなく意味ありげな笑顔の加奈さんの言葉に眉を顰めると、ふと背後で影がゆっくり動く。
首だけ少し動かすと、寝そべったままのオレの手を取り、帯人がその指に唇を押し付けるのが見えた。
「その贈り物は、…『ぼく』だよ、」
「…帯人?」
え、何それ、どういうこと?
意味が呑み込めなくて、彼の眼を見返しても笑うばかりで答えは返ってこない。
困惑していると、加奈さんが帯人からオレの手を受け取り、指にリングを通した。
ちょ、何してくれてんの、これ。
「稼働データ収集も終わったし、うちではもう帯人はいらないから、篠武さんの御守りにちょうどいいんじゃないかって、」
「いらないから御守りって…、」
そういう言い方はないんじゃないか?帯人が可哀想すぎるだろ?あとこの指の、何?
「これは、あなたの生体データを、帯人にインストしたアプリに連動するリングよ、」
「…生体、データ?」
「ちょっとやそっとじゃ外せないし、壊れないよう丈夫に作ってあるから。ほら、見た目は普通の指輪だから目立たないし、ワンポイントのアメジストも帯人の瞳の色と合わせてあるの、素敵でしょ?」
「待って、…何で?何の為に?」
まだ痛む傷を庇いながらそろそろと身体を起こすと、帯人が肩を支えてくれた。
触れた拍子に、彼の着ている黒いコートの合わせ目から、真新しい包帯が覗く。
こんなところ、怪我なんかしてたっけ?
確かに、一時期の帯人は身体が脆く自己崩壊しかけていたけど、正隆さんの薬でだいぶ改善されたはず。完璧ではないにしろ、胸元は結構綺麗になったと思ったんだけど…。
「…見る?」
「え、…え?」
オレの視線に気が付いて、帯人が着ていたコートを床に落とす。
包帯を解いて、ガーゼを剥ぎ取った中にあったのは、まだ生々しい手術痕。
「これはね、ぼくと篠武が繋がった証なんだよ、」
愛しそうに傷口を指でなぞる帯人が、喜びに満ちた笑顔を見せた。
「帯人の中に、仕掛けをしたの。そのリングから送られる生体反応が消えて死亡を表す信号を受け取れば、彼もまた機能を完全停止するように。でも安心して、逆はないから、」
「…それって、」
もしオレが死んだら、…帯人も死ぬって、こと?
でも帯人が死んでも…オレは死なない。いや、死ねない…?
「なんで、…どうしてそんな酷いことを!?…痛っ、」
「篠武、ダメ、傷が開く、」
加奈さんに食って掛かるオレの腰に鋭く痛みが走る。
じわりと滲む涙は、悔しさのせいか痛みのせいか判別がつかない。
「これはね、ぼくが望んでして貰ったんだよ、」
「…望んだ?」
「だって、ぼくは一人じゃ生きていけないから…、篠武に何かあったら、アンドロイドのぼくは、どうすればいいの?誰にも必要とされない欠陥品は、何処に行けばいいの?」
「………、」
零れ落ちた切ない声に、胸が詰まされ絶句した。
「篠武と一緒に、終わりたい。ねぇ、僕を一人にしないでよ、」
切実な願いを甘えるように強請られて、オレは思わず帯人の頭を抱き寄せた。
大丈夫、ずっと一緒にいる、傍にいる、だから…。
「加奈さん、オレも帯人と同じ処置して欲s」
「無理ね、篠武さんは人間だからアプリインスト出来ないでしょう、」
……ごもっともorz
「もともとは、帯人に『安全装置』として、あなたに危害を加えそうになったら自己停止するよう設定してあったの。彼は一度事件を起こしているから、何も処置せず譲渡するのは不安だったし、」
「危害って…、」
「平たく言えば、命を奪うような状況よね。…あ、貞操を奪うような状況は指定外だから、どんどんやって貰っても構わないわ、」
「誰も聞いてねぇしそんなこと!!」
意味わからんわ!!ってか、親指を立てんな!!!
「まぁ、それはともかく、」
「さらりと流した!?」
「帯人もメンテが必要な場合もあるし、何かあったら瑞樹に連絡を取りなさい。対応は北澤君にさせるわ、」
「…ん、わかった、」
瑞樹は加奈さんの実子で、世界的に活躍しているピアニストだ。彼の扱う楽曲のほとんどは、オレが提供している。いわば、ビジネスの相手といったところか。
世間的にも関係性は公表してないし、そもそも『木崎篠武』の名前は一切出していない。よかったー、銀行の口座も凍結は免れてるなこれ。
今後唯一、オレが接点を持てる人間になるな。
「それと、新しいスマホにPC。…じゃ、そろそろ行くわね。後のことは、医師たちに任せてあるから、退院したら瑞樹に一報だけ入れといて、」
「うん、…今まで、いろいろありがと、」
「篠ちゃん、…またね、」
「ん、まー君、…また、ね、」
締まるドアの向こう、気配が完全に消えるまでオレは見送り続けていた
二人が部屋から出ていくと、大して広くない空間が急に膨張したように感じる。
でも、寂しがっている暇はない。
「あー…、あとどれくらいで退院できるのかなー…、」
「確か…全治一か月って言ってた、」
「一か月!?最悪…、」
布団に突っ伏し、盛大に溜息が出る。
治療に検査にリハビリに…。あっ、お風呂っていつから入れるの!?
「…ごめんね、ぼくが…護ってあげられなかったから…、」
「や、お前のせいじゃないだろ、」
しょんぼりする前に、そろそろコート羽織れ。いつまでも裸は困る。あと、その手術痕消毒しないとかな。
「それにあの時は、オレも油断してたし…ってか、何でオレ殺されかけたのか、今もってわからんし、」
そう言えば、あの後どうなったんだろう?
帯人があんまり取り乱すから、頭撫でてる間に意識失って…気付いたらここにいて…?
(あんま深く追求しないほうがいいのかな、知らぬが仏って諺もあることだし…、)
「………、」
うーん、どうしたもんかね。
きゅっと唇を引き結び、項垂れている帯人の髪を指で掬う。そこにあるリングに付いたアメジストがチラリと光っていた。
(あ…そだ。くよくよしてる場合じゃないな、)
「帯人にちょっとお願いしちゃおう、」
「…お願い?」
「退院したら二人で住む家、一緒に探してくれる?」
「うんっ!!!!!」
これからは二人きり。
何が何でも、生きていかなくては。
まずは基盤を固めるために、住居選びから始めよう。
「篠武は、何処に住みたい?」
「やっぱ都会かなー、便利だし。人が多いとこのほうが、逆に目立ちにくいだろ?」
「うん、そうだね、」
ほんのりと頬を染めて喜ぶ帯人を見て、オレは新しい生活の先にある未来も、悪くないんじゃないかと思った。
続く
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想