はじめよう、
さぁ、怖がらないで逃げてごらん
きっと待っているのは…



ボカロ小説5
「かくれんぼ」作詞&作曲:buzzG 様 唄:初音ミク



それはそれはとても綺麗な、それでいて何処かに飲み込まれそうな夕焼けだった
なんて言えばいいんだろう?
′世界中のオレンジ色を思いっ切り零したような空?′
あまりにも極端すぎて、あまりにも笑える言葉かもしれない
そんな夕焼けの中、僕はただひたすら誰もいない場所を走っていたんだ

いつもなら誰かが通ってもおかしくない通学路
いつもなら誰かが通ってもおかしくない大通り
どうして誰もいないの?
どうして音すら聞こえないの?
僕を追いかけてきてるのは「何」?

途中、路地裏に入って少し休憩した
この辺りで隠れていれば簡単に見つからないはずだ…
息を押し殺しながらゆっくりと息を吸う

この途方もないかくれんぼの始まりは、ただなんてことない日常を送っていた僕にとっては衝撃的だった
学校に行って、くだらない会話をして、机に向かって
ただ、ただ、ひたすら輪を乱さないように過ごすつまらない日常

そんな帰り道、いきなり立ち眩みがした

一瞬の眩みは、何かが始まる合図

僕はただ、「何か」に脅え、「何か」から捕まるな、そんな思考に侵され
考えが落ちつくころには後ろから「何か」が僕に向かって走ってきた

姿さえ曖昧な「何か」に名前をつけるとしたら、きっと「鬼」
表情が少ししか見えなかったけれど、その鬼はね、凄く不思議な顔をしてたんだ
とても悲しそうで、とても苦しそうで、遠くのほうで僕を笑いながら追いかけてきてる

どうして僕を追いかけるのさえわからないまま、ずっと走っていたんだ


ねぇ、どうして僕を追いかけてくるの?


そんなことを考えれば頭からノイズのかかったような声

『僕…キ………じだ…ら』

微かにしか聞こえないそれを、幻聴だと思いたかった
だけど確かに聞こえた僕以外の声


一体キミは誰なの?なんで僕を追いかけるの?
理由を教えてよ


地面に座り込みそうになったとき


「みーつけた」


甲高いような、それでいてどこか安心感があるような僕と似た声
姿を見る前に僕は急いでその場から逃げだした

どうしてこの場所がわかったの?なんてもう考える余裕すらない
その場から出来るだけ早く逃げ出したかった

でも



行く着く先には



「鬼」



『もう…終わりにしよう?』

そう言われて、一瞬見えたその顔は今にも壊れそうな笑顔だった
腕を掴まれた瞬間に力が抜けて流れ込んできた感情


♪~~♪~~~~~♪~♪


この曲は…何…?

~~~~~~~~~~~~~~~~~
「今日帰りに遊びにいこーぜ」
「よっし、今日はまけねーからな!」
「何言ってんだよ、どうせそんなこと言って負けるんだろ」
「なぁ、あいつどうする?」
「どうせあいつは誘ってもこねーよ」
「だよなぁ、ノリわりーもん」
「「「あははははっ」」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~

これは、なに?

~~~~~~~~~~~~~~~~~
「友達まだできないの?いい加減に自分から話しかけたらどうなの?」
『あんな奴らと居たってつまらない』
「周りに少しは合わせることぐらいできるでしょう?笑って話しかければ少しぐらいは」
『うるさいな、ほっといてくれよ。一人のほうが楽なんだ!!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~

これは、僕…?

~~~~~~~~~~~~~~~~~
『もういいんだ、やっぱり一人のほうが楽だよ…』
『音楽さえあれば、それだけでいい…』
『他に大切なものなんていらない…』
『友達なんて、いらない…』
『もう、何もかも…いらない…』
~~~~~~~~~~~~~~~~~


♪~~♪~~~~~♪♪~――


…ね、いらないじゃないか
どうせ変わらない日常
もう、このままずっと独りがいいんだ

『本当にそれでいいの?』


座り込んだ僕の前に現れた「鬼」
どうしても「鬼」の姿を見る気にはなれなかった


だって、どうしたらいいの?
誰に言えばいいの?それで解決できるの?
そんなことだったら初めからやってる

『独りで平気?』

平気さ、
前からずっとそうだった、今さら何を言ってるのさ

『嘘つき』
『本当は寂しいくせに』
『本当は誰かに』

うるさい!黙れ!そんなことあるはず

『愛されたいくせに』

…そんなことデタラメだ
嘘ついてるのはお前だろ

『じゃあなんで泣いてるの?』

泣いてる…?僕が…?なんで…?


頬を伝うのは生温かい滴
何かが外れたように止まらなくて


『思い出して』

何を…


喋ろうとする前に意識が飛んだ

~~~~~~~~~~~~~~~~~
『どうして僕は独りなの…?』
『どうして…どうして仲間外れにされるの…?』
『わからない、わからないよ』
『どうしたらみんなに必要とされるの…?』
『誰か…お願いだから僕に気付いてよ…っ』
~~~~~~~~~~~~~~~~~

あれは昔の僕だ…


ねぇ、どうして…キミは知ってるの…?

『僕とキミは同じだから』


ゆっくりと僕は目の前にいる「鬼」の顔を見ようと顔を上げる
視界に映ったのは、僕に似た誰か
その「鬼」は、とても悲しそうで、とても辛そうで、ただ、僕を見て笑ってた

あぁ、そっか
キミは僕と一緒にいてくれたんだね
僕の気持ちを全て大事に持っていてくれたんだね
ごめんね、気付けなくて
ごめんね、弱くて


キミは、僕?


そう問いかければ、少し笑って後ろを向いた


「さぁ、かくれんぼを始めよっか」


そう言って走り出す「僕」


今度は僕が「鬼」
今度は僕がキミを捕まえる番

ねぇ、どうしたらキミは笑ってくれるかな
僕が忘れていた想いを、ちゃんと受け取ってくれるかな

もう忘れないよ、大事なメロディ(記憶)
まだ少ししか思い出せてない
また迷うかもしれない、また逃げてしまうときがくるかもしれない

そのときはまた追いかけてくるのかな


今度は僕の番
僕が思い出させてあげる
だからもう独りで泣かないで
僕(キミ)がそばにいるから

僕も、忘れない…


何を捕まえるのかわかってない
でも、確かにいる「何か」を追いかけて僕は走り出した


きっと、
今度はキミの番





′かくれんぼしよう?′

―END―

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

かくれんぼ

buzzGさんのかくれんぼをお借りしましたっ
リクエストだったので、ちょっとまぁ頑張ったのですが、良作がががががが(

申し訳ないです(

閲覧数:196

投稿日:2010/12/05 03:04:07

文字数:2,650文字

カテゴリ:小説

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