君と出会ったのは雨の日の午後。
びしょぬれのボクを見て、君は驚いていたっけ。
どうしてだか、無理矢理に連れて行かれた部屋の中。
君が浴びせる暖かな水は
雨よりも激しくて、雨よりも優しかった。
泣き言を言えない君が、僕の前では
何故だか、いつも泣いていた。
ボクは理由も解らずに、朦朧とした意識の中で
君の頬を伝う涙を舐めて拭った。
抱きしめられたことは微かに解っていた。
けれど……
ごめんよ。
君の事は忘れない。
ずっと傍に居たかった。
君の泣き言を聞いてあげたかったな。
そんなことを思いながら
ボクは、何も考えられなくなった。
冷たくなった小さな毛の塊を抱いて
また、呟くんだ
「泣いて帰って来るなら、泣いて暮らすよ。
返らないから、もう君は旅立って良いんだ。」
本当は泣き虫の癖に。
本当はボクにしか言えないくせに。
そう言い返したくても
ボクは、もう君の傍に居られない。
忘れないよ。
いつか
いつか、きっと
同じように、君の前に現れてみせるさ!
君に抱かれて、君の涙を拭ってあげる。
だから、ほら。
ボクの首輪は、今でも君の腕にある。
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