ここは戦乱のヨーロッパ。
明くる日も 明くる日も血が流れていった
そんな戦禍の中に、ただ一人どこの国にも属しない、女剣士がいた…。
齢16ほどで、小柄でありながら、溢れんばかりの気迫を放っている姿。
少女の名は… ミク
ミクの強さは圧倒的だった。
侵略を進める軍の正面に立ち、あっという間に100人斬りをしたかと思うと、次の瞬間には敵将の背後を捕らえていた。
常に弱者の味方となり、暴虐を尽くす国に刃向かった。
討った兵士の数は万を越えようかという数。
その紅い剣は元は緑色だったが、敵兵の返り血で紅く染まっていったという。
村の者はミクを畏れ、敬い、慕い、信じていた。
ある時、決して自ら名乗ろうとしないミクに名前を聞いた村人がいた。
ミクは言った
私に与えられる名前などあってはならない、私は明日を斬るためだけに生まれてきた。
と。
いつしか村人はミクをこう呼ぶようになった。
『時の救世主』と。
それからである。ミクは自分のことを『時』と名乗るようになった。
ミクはただ一人だけ、信頼した男にミクという名前を明かしていた。
男の名はカイト。今は遠い国にいるらしく、思い出も幼少の頃のもの。
しかし、ミクは彼を愛していた。
毎日のように敵兵を斬っていく…
罪悪を振り払うように…
彼女は戦うたびに涙を流していた。誰にも気付かれないように。
たくさんの兵を殺してきた。
緑色の美しい髪が紅く染まる程、剣を振るった。
こんな私を見て、彼は何を思うだろうか…
ミクは葛藤していた。
弱者の味方として、一人の少女として。
月日は過ぎ去って、軍の最終侵攻の指令が出た。
戦費が尽きかけているのだという。
その日は、カイトが帰国してくる予定の日だった。
ミクは最後の戦場へと向かった、平和な国でカイトを迎えるために…
疲労が蓄積していたのだろう、ミクは苦闘を続けていた。
もう何時間剣を振るったであろうそんな時、ミクの目にある人物が飛び込んできた。
カイトだ。
来てはダメ… そう彼女が言いかけた時、敵兵の剣が彼女の胸を貫いた。
カイトの叫び声が遠く聞こえた。
意識が薄れていく…
ミクの目の前が暗くなっていった…
戦場の中に倒れた少女の屍は、微笑みを浮かべ冷たくなっていった。
救世主と呼ばれながら戦った少女。
本当に救ってほしかったのは、彼女だったのかもしれない。
その翌日、戦いは終わった。
一つの伝説とともに…
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