僕の名はレン・カガミネ。
地元で舗装業を営んでいる熱血仕事人だ。

今僕がいるバーは地元でも穴場中の穴場。
穴場過ぎて僕以外の客を見たことが無いくらいだ。

古めかしく薄暗い店内のカウンターに一人。
今時音楽の一つも流していないのも、静かで気に入っている。

このバーへ仕事終わりに立ち寄るのが僕の今一番のブーム。
僕が必ず寄るには理由がある。
僕がこの店でおすすめする隠しメニューだ。

僕がゾッコンのその一品は、
どこかのおいしいらしい湧き水から、マスターの熟練の技で生み出された一級品のカルピス。

その名も、
『あの頃をもう一度。-Never Ending Story-〈想ひ出〉』

もちろん、
「いつもの」
で伝わるのも常連のたしなみというものだ。

渋い名前と同様に、後になって滲み出るこの苦味が大人の味だ。
14歳にしてこの味が分かってしまう大人な僕自身に思わず酔ってしまう。

カランカラン

「マスター、ご機嫌麗しゅう~」
明るい声と共に薄暗い店内に入ってきたのは、僕と同じ黄色い髪、緑色の目をした可愛らしい女性。

彼女の名はリン・カガミネ。
僕以外で見た唯一の客だ。
その黒で統一されたオシャレな格好からは想像しにくいが、某チェーン店のお弁当屋でバイト中のいわゆる受付嬢だ。

実は彼女、僕の双子の姉である。
姉弟そろって、だって?
僕だって最初この店で見かけた時には驚いたさ。
まさか同じ店をお気に入りにするとは。
そんな時双子を実感する。

「あら?レン、先にやってたの?
マスター、私にもレンと同じものちょうだい」

無言で頷くマスターを見ながら隣に腰掛けるリンに、僕は訂正を促した。

「『ヤッてた』なんて女の子が使わないで欲しいな。
 せめて『見かけ通り早いのね』とでも言って欲しいものだね」
「あら、今は女性もオープンな時代よ。
 ・・・というかそっちの発言の方がどうなの?」

楽しい夜の時間はあっという間に過ぎていく。

「相変わらず苦いわね。ここのカルピスって」
「大人だろ?」
「ww」

そして古時計が告げる閉店時間。

「あら、もうこんな時間?」
「気付かなかったなぁ」

カランカラン
扉を開ける軽快な音色が妙に哀しさを誘う。

「今日も楽しかったわ」
「また明日かな?」
「えぇ。また明日ね」

こうして今日も別れを告げ、僕らは日常へと戻っていく。


マスター〈KAITO〉が誘う魅惑のBar【ギャランドゥ】
明日への潤い。非日常を味わいたい貴方のために。
一度足を運んではいかがかな?

そういえば僕達って、同じ家に住んでるんだよなぁ・・・。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【BAR】 ぎゃらんどぅ

ふざけ過ぎました。
気軽に読んで苦笑してくれるとありがたいです。
軽快な音楽と共に、レン君推薦の魅惑(?)のお店をご堪能ください。

ちなみに一級品カルピスのネーミングに深い意味は全く無いのであしからず。

閲覧数:124

投稿日:2009/03/06 00:25:54

文字数:1,101文字

カテゴリ:その他

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