(こちらは心の手紙を元に書いた二次創作小説です。不快に思われる方の閲覧はお控ください)
「何を書いているのだ?」
「あっ!もう…見ちゃだめだって」
陽射しの少し強すぎるくらいな夏の午後。
海の見える田舎街に
ポツンと建っている赤い屋根を見下ろした丘で。
緑の髪のその子は背後から抱き締められ手に持っていた便せんを取り落とした。
その様子を見て腕の主は直ぐに彼女が何をしていたかを察して微笑む。
しかし彼女は座ったままぷりぷりと可愛らしい頬を膨らませて恥ずかしさに怒っている。
「すまないミク…見なかったことにしようか?」
「…!」
頬に熱が上がってミクは力強い腕から視線を上げた。
そこには逆さまの笑った彼がいて。
その笑顔にパクパクと何かを言いたそうに口を開閉させるけどやがて真一文字に唇を引き結び
落ちた花柄の便せんに手を伸ばそうともがいてみる。
それなのにしっかり腰の周りに回された彼の腕はミクを逃がすまいとして…
やがて風にさらわれてその紙は空へと飛び
「「あ…」」
同時に声を上げた二人
風よりも早く駆けだす彼はとても慌て
自分宛の手紙を追いかけた
二人だけの秘密の
秘密の手紙
それは取り戻せない穏やかな時間
だけど
目を開ければ朝はそこにあって
何も変わらないみたいに空はそこにあって
花柄の便せんを散らす丘はそこにあって
きっと新しい時間が流れても彼の心もそこにあるのを……知っている
「ミク」
優しくその名を呼ぶ彼でない声に振り返って
彼女は笑った。彼によく似た笑顔で。
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