「キミは……誰……?」

「ボクかい?」

「うん……」

「ボクはキミを救いに来た、救世主さ!」

「嘘ばっかりぃ……」

「嘘なんかじゃないよ」

「ボクはキミを救いに来たのさ!」

「……?」

「キミはもう違うんだよ!」

「何が……?」

「キミはもう、×××じゃないんだよ!!」

「……」

「本当?」

「もちろんさ!」

「……」

「ばぁか」








































もう嫌

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だよぅ



ワタシの頭の中にあるこの脳味噌
どうせ、大したことなんて入ってないんだから、今すぐにでも捨てたい

全て全て捨てて忘れて軽ーくなったらきっと空に飛んでいけるの!
ふわふわーってね
それでふわふわになったら、そのままびゅーんってあの場所に飛んでいくの!




全部忘れちゃったらどうやって行くのか分からないか……

でも
きっと大丈夫

そういうことは脳で記憶するんじゃないの
心で記憶するの

だから
頭なんて無くなっても大丈夫


大丈夫大丈夫
大丈夫なんだから……






全部全部無くなったら本当に何もかも忘れちゃうのかな?
キミのことも忘れちゃうのかな?

ううん
それを忘れたいんだったね



あれ?
あれれ?
キミを忘れたいの?
何を忘れたいの?
ワタシを忘れたいの?

あれれれれ?
頭がぐちゃぐちゃだぁ



もう
だから嫌いなのよ







それからね
頭だけじゃなくてもう一つ消したいものがあるの

きっとね
記憶を消すなんて無理だから

どんな嫌なこともどんな嬉しいことも
大切なワタシの記憶であることに変わりは無いから

だから
誰にも消すことなんて出来ないの



きっとね






それに
その記憶はワタシだけのものじゃないの

一緒にその記憶を作った人が居るから
その人の為にも記憶なんてものは消せない
割ろうと思えば簡単に割れるガラス製なのに、皆が皆大事に大事に抱えちゃってる

ワタシももちろん大事に抱える
だって割れたら嫌だもん

ワタシは割れても良いの
全然構わない



でもね
これが割れると悲しむ人が居るの

だからね
ワタシは何があっても割っちゃいけないの

ちょっと気を抜くと手からするって落ちそうになるの
ずっと注意してなきゃいけないもの

地面とぶつかったら最後
ぱりーんのばりーん
粉々でもう二度と形を取り戻すことは出来ない



キミの悲しい顔は見なくないから
ワタシはぎゅっと抱えるの









あれ?
何の話してたんだっけ?

あぁ
消し去りたいものの話ね



ワタシね×××が嫌いなの



だから
今ここにいる私が大嫌いなの

全部全部消し去りたい
こんなにも惨めなワタシという存在を
小さく蹲ることしか出来ない非力なワタシを





























元々はね
キミが悪いの

うん

きっと全部キミの所為なの
悪いのはぜーんぶキミ

いっつもそうだったじゃない






キミは覚えてるのかなぁ?



あの日
雨の日だったかな?
キミはいきなり、とっても大きな人を殴っちゃった

『どうして?』
って聞いても訊いてもキミは俯くだけ



知ってた?
あの時ワタシすっごく心配したんだよ?

それで
あの後、結局起こられたのワタシだったしぃ……



でもね
嬉しかったよ

知ってたから
ワタシ

キミがワタシの為にしてくれたって






あぁ

これじゃあ、キミの駄目なところじゃないや
まるで良いところを言ってるみたいじゃない

ワタシが今言いたいのはこれじゃないの
キミがどれだけワタシに迷惑を掛けてきたのかを言いたいのに……









そうだ

じゃあ
あのときの事はどうかな?



キミがいきなり硬い銀色を持ってきてガラスを粉々にしたこと
あれも怒られたのワタシだったんだからね?

……ってこれもそうか……
ダメだダメだ

どうして?
どうしてキミはそんなにもワタシに意地悪するの?



酷いよぅ……





























いつも通り朝起きた

もそもそと起き上がり

『眠い』と一言

朝日が嫌で

毎日行く小屋が嫌で

でも

そこにはキミが居るから楽しくて



でも

でも

今日は

キミが其処に

いつもの場所に居なくて



国の中を歩き回る

ぐるぐるぐるぐる

キミは何処にも居ない



『も、もう』

『これだから子供は困るのよ……』

『迷子になって御巡りさんのお世話になっても知らないんだからね……』-

『ワタシ嫌よ』

『交番に行って連れ帰るなんて』

『どうして出て行っちゃうのよ』

『国境線を越えると見つけるのが大変なんだから……』

























これは
キミの病気

とっても思い病なの
一筋縄じゃいかない



だから
キミもワタシも根気強く直していかなきゃいけないの


ワタシは違うわよ?

あくまで付添い人



病気を治すのってさ
×××じゃ寂しいでしょ?

だからワタシも一緒に居てあげるの
そう約束したから









そんなパートナーの私だけど
やっぱりよく分からないことがたくさんある

キミの病気は新種のものだから
対策方法はまだ見つかってない



自分たちで導き出さないとね









小屋に着く

嫌だよ

キミが居ないから

こんな小屋

嫌だよ

嫌だよぅ

何なの?

そんなこと言って愉しいの?

……声潜めたってワタシには聞こえるの!!









もう嫌
嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌
嫌嫌嫌嫌嫌いや嫌いやイヤ嫌いヤいやい

全部全部嫌









もう
全部消えちゃったら良いのに

もう
大事なものとかどうでも良い

こんなにぐるぐるなら、全部全部消えちゃった方が良い

楽しいことなんてなくても生きていけるから









どうしよう

ねぇ
どうしよう



このままだったらキミのこと嫌いになっちゃうかも

それにね
ただの《嫌い》じゃないの



《大嫌い》だよ?



えー
うあー
いやだねー
かわいそうだー






嫌だったら今すぐ帰ってきてよ















約束したでしょ?



×××で何処かに行くときは、

行く場所と

帰ってくる時間を

言ってから行くことって



これじゃあ
約束破りだよ?

そんなの
駄目だよ




















小屋とはおさらばしたんだし、キミを探してみる

うぅ
こんな言い方してたら適当に探してるみたいだぁ

見つからなかったら
『お前の探し方が悪いからだろう』
とか言われちゃうよぉ



でも
しょうがないんだよ

前を見れないから
下を向いてないと恥ずかしいの



それに第一
前を向いたってぼやけて何も見えないよ?

な……!?
わ、ワタシの目が悪いんじゃないわよ!

分かる……?
分かってるんでしょ!



み、水よ


目に溜まる水よ



え?
何でって?

そ、それは……



何よ!?
×××が寂しくて泣いちゃいけないの?
×××が怖くて泣いてたら何か愉快なの?



しょ、しょうがないでしょ
ワタシは昔から弱い子なんだから……









ふと顔を上げる

流石にずっと下を向いてるのは危ないから
車とかも来るからね

此処はトンネルの中かな?



目に飛び込むのは壁に描かれた大きな落書き

誰なのかなぁ
こんな公共の場に馬鹿みないな落書きをする人は
後で消す人の気持ちにでもなってみればいいのに




でもこういう処の落書きって意外と上手かったりするんだよねぇ……






ん?
あれ?



……
…………



どうして?

こんな処じゃなかったはず
もっと違う場所だったはず



何で何で?



どうして
あの絵が此処にあるの?

あの絵は
ワタシがこっそり描いたものだけど……



だけど
だけど……



こんな穢いトンネルの中じゃなかった
もっと綺麗な
もっと輝いてるトンネルだった

ん?
トンネルだったっけ?



もう
分かんない

もう
いいや

もう
何かどうでもいいや

難しいことは嫌いなのぉ

























迷子くんを見つけたら何て言ってやろうかなぁ……



『心配したんだからねバカ』



どうかなどうかな?
結構良いんじゃないのかな?

これ
一回言ってみたい台詞なんだよねぇ



それでそれで
頬をぺちんって叩くの

もちろん軽ーくね?
キミは俯いたまま黙ってて
ワタシはそれを黙ってぎゅってする



キミなら分かってくれるよね?
ワタシがキミをぎゅってする理由

もちろん
大好き☆ぎゅーもあるけどそれだけじゃないことを



ワタシさ
目から出てくる水が嫌いなんだよ

だってさ
格好悪いじゃん



ただでさえ弱いのに
更に弱虫に見えちゃうでしょ?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

家出少年と迷子少女  ……今回のテーマはただ一つ! 『爽やか』…………

皆さん、お久しぶりです!


計4ページ!





もう分かった方もいらっしゃるかもしれませんが、
何回も登場する『×××』には全部同じ言葉が入ります

今回の伏字はこれだけです

閲覧数:468

投稿日:2011/07/05 23:47:06

文字数:3,812文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • 零奈@受験生につき更新低下・・・

    おやおや、地震の話ですか?
    読ませていただきました! 零奈です。
    この街《ステラ》シリーズのバッドエンドがこんなに爽やかになるなんて・・・
    やっぱりアリサさんは凄いです!
    いつかこんな小説書けるようになりたいです・・・

    何気に出て来たシスターさんにニヤニヤが止まりませんww
    多分引き攣った笑みを浮かべていたのかなと思うとその光景がもうごちそうさまですw

    修道少女やその他の曲の小説を楽しみにしてます。
    何をリクエストするか考えながら楽しませていただきますw

    あと、がくぽのCD買っちゃいましたwww

    2011/07/06 22:48:01

    • アリサ

      アリサ

      感想ありがとうございます!


      「爽やか」目指しましたからそういって頂けて嬉しいです!

      はい
      何気に……
      いや、でもかなり不自然だった気がしますww

      今回では、シスターさんのキャラが定まりませんでしたww





      自分もがくぽのCD買いましたww

      メイトの特典のヴェノ公のポスターが欲しくてww
      Dr.リアリストはそのとき知りました





      それでは、次のテーマは『メルヘン』で行くと思いますのでww
      林檎が出てくるあのお話です

      2011/07/06 23:49:55

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