※警告という名の諸注意、やっちゃったよセルフパロ
・帯人×女性マスター(篠武)
・カイトは出てきません
・妄想による世界観、しかも本家よりダーク。
・オリキャラ満載(オリキャラは名前・設定ともにシャングリラと同じ・若干性格は変わっている場合もあり)
・帯人はアンドロイド・機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
※ここ大事※
多分いないとは思いますが…万が一、本家シャングリラを少しでも気に入ってくださっている方がおりましたら、今すぐ全力で引き返してください!本家シャングリラとは一切関係ありません。悪いのは全面的に私ですorz
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
23.
SIED・TAITO
「…はい、これ飲んで、」
白い服を着た男が、ぼくの目の前に、白い液体の入った小さなコップを差し出してきた。
何これ、要らない。
「……、」
ぼくが無言で顔を逸らすと、男は盛大に溜息をついて、傍らにいる篠武に目配せする。それを受け、彼女が苦笑して頷いた。…視線だけで会話するとか…何、この二人どんな関係なの?
「あのね、これは薬なんだよ。帯人の身体は不安定で、傷も治りにくくて…だから少しでも安定するようにって、まー君に作って貰ったんだ、」
まー君…へぇ、二人はとっても仲がいいんだね。
「やだ。要らない、」
この男は嫌い。蔑むような、まるでぼくの存在を完全否定するような鋭い視線が突き刺さる。きっとこの男も、ぼくが嫌いなんだ。
「でもほら、帯人の身体、このまま放っておいたら大変なことになっちゃうんだぞ?」
篠武はぼくの顔を覗き込むと、新しくつけられた眼帯に手を添える。昨夜から右目に血が溜まり、視界もぼやけてきていた。多分、彼女の言っていることは本当なんだろう。どんどん壊れていく身体は、誰よりも自分がよくわかっている。
「…でも、いやだ。信用できない、」
あんな男が、ぼくを嫌ってる奴が作った薬なんて、何か変なものが入っているに決まっている。これを機に、ぼくを廃棄するつもりなのかも知れないじゃないか。
「もういいんじゃないの?本人が飲みたくないって、要らないって言ってるんだからさ、」
「ダメだよ!絶対にダメだ!!帯人が死んじゃうだろ!!」
肩を竦める男に食って掛かる篠武が、その手からコップを受け取る。
ぼくが死んじゃう、か…。
篠武は面白いね。逆にそれ飲んで、どうかなるとは思わないんだ。そんなにその男を信頼しているの?だったら、ぼくにもわかるように証明して見せてよ。
本当にその薬が、安全なのかどうか。
「ねぇ、どうしてもそれ、飲まなきゃダメだって言うんならさぁ、」
なんだろう、胸の奥がどろどろする。湧き上がる何か、黒いものが全身に広がって吞み込まれそうなのに、頭はやけに冴え冴えとしていた。
「篠武がぼくに、口移しで飲ませてよ、」
その得体の知れない液体を、口に含む勇気はある?ぼくを本気で助けたいって思ってる?
ねぇ、行動で示してよ。
「な…ッ!!!コイツ!!!」
気色ばみ声を荒げる男を尻目に、彼女は何処か安心したように表情を緩めると、持っていたコップを一息に煽る。躊躇いもせず、すんなりと。
(……え、)
まさか…だって、そんな…え?
あっけにとられるぼくの唇に、篠武の柔らかいそれが押し付けられて。
(!!!!!!!!!!)
次の瞬間、物凄いえぐい味のする液体が、口の中に流し込まれた。あ…ぼく、味覚があったんだ…。
「…うげぇ!?なんだこれ、クッソ不味ッ!!!うわ、気持ち悪ぃぃぃ!!!!!」
その酷い味に眉を顰めるぼくの脇で、篠武が悶絶している…うん、本当に…不味いね。
さっき触れ合ったばかりの唇を指でなぞり、残っている白い薬を拭き取る。
口移し、してくれたんだ…ほとんど一瞬の出来事だったけど、思い返すと頬に熱が集まり、胸の中にあったどろどろまでが全部蒸発したみたい溶けてなくなった。
代わりに今は、ざわざわするような、ふわふわするような、変な気持ちで一杯になる。
(何これ、ぼく、どうしちゃったの?)
でもそれよりもなによりも、焦ったのは男のほうだった。
「篠ちゃん!?何馬鹿なことしてんの!!??それはアンドロイド用の薬なんだから、生身の人体には凄く有害なんだよ!!早くうがいして、口腔内粘膜から吸収される前に!!僕は中和薬持ってくるから!!」
(有害…?)
急いで部屋を出る男の言葉に、今度はぼくが青褪めた。有害って、…ぼくには薬でも、篠武にとっては毒ってこと…?
「…篠武、大丈夫…?」
「………、」
口元を両手で抑え、うずくまる彼女の顔色がどんどん悪くなっていく。ぼくの問いかけにも、何の反応も示さない…。
ああ、そんな…どうしよう、どうしよう、…あっ、うがいさせなくちゃ。
「篠武…、こっち、」
部屋に備え付けの洗面所に、半ば引きずって連れて行くと、コップに水を酌んで口に含ませようと試みる。お願い、頑張って、口を開けて…!
「……う、」
「ごめんね、ごめんね、」
篠武が死んじゃったらどうしよう、ぼくのせいだ…!
ぼくがつまらない意地を張って、試すようなことを言ったから…。
「ごめん、…篠武、ごめんね、」
後悔と贖罪の念で、絞り出す声が震えている。
どうしてあんなことを言ってしまったのか、あんなことをさせてしまったのか。
(多分、ぼくはあの男に嫉妬していたんだ…、)
この数日彼女に構って貰って、すっかり親密になったつもりでいた。なのに、知らない男との信頼関係を目の当たりにして、やきもちを妬いたんだ。
完全に、ぼくのエゴじゃないか。
「…篠武?」
しゃがみこんで立てない彼女の身体を抱き締めていると、ぼくの背中にゆっくりと手が回される。
少し震えながら、それでも優しく撫でてくれるその手は、確かに暖かかった。
「…帯人、は、…身体、大丈夫?」
「ぼく…?」
どうして?辛いのはあなたでしょう?
苦しそうな息の下、こんな状況でもぼくを心配してくれるの?
「だ、大丈夫…、ぼくは、…何ともない、よ、…、」
「ん、…そ、か、」
ほんの僅かに微笑んで、彼女は撫でる手を背中から頬、頭へと移動させる。何度も何度も、辛い身体を無理やり動かして、ぼくを安心させるように。
「…篠武、」
ぼくは彼女の柔らかい身体を一層強く抱きしめ、その髪に頬を埋めると、生まれて初めて涙を流した。
ごめんね、ごめんね、こんな出来そこないだけど、篠武…あなたが大好きなんだ。
続く
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