注)この作品は、ニコニコ動画の『重音テトの消失』を元に、勢いで書いた作品です。
なので、色々とおかしい点があるかと思いますが、よろしくお願いします。


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《君はじつに馬鹿だな》
 かつて聞こえた声は、秒針が頂点を通過してすぐに聞こえなくなった。
 あれから、すでに一週間が経っている。
 はた迷惑で、かしましくて、居れば平穏なんて裸足で逃げ出していたけど……。
 そんな騒がしさを、いつしか僕は享受していた。
 でも、彼女は所詮、“イツワリノウタヒメ”でしかなかったのかもしれない。
 いつものスタジオでは、変わらずミクが歌っている。
 綺麗な声に、辿るメロディーラインはぶれることはない。
 彼女のように、歌うのを失敗して、拗ねたような表情をすることもなかった。
 歌い手としてはこれが正解なのだろう。
 しかし、それでも心が囁いている。

 ――モノタリナイ――
 ――ツマラナイ――

 ……と。

 以前と、ミクが変わったのではない。
 変わったのはあくまで僕。
 そんな風に変えたのは、あの赤い娘。
『マスター……?』
「――え?」
『歌い終わりましたけど……どうしたんですか? 最近、ほとんどぼうっとしてますよ?』
「大丈夫、なんでもないよ」
 心配そうにこちらを見るミクに、僕は笑顔を向ける。
 おそらく無難に出来たであろう表情だが、イマイチ自信はなかった。確かに、ここ最近の僕はぼうっとしているからだ。

 そう、あの……テトが居なくなってから、僕はどうにかなってしまったのかもしれない……。

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重音テトの消失 1

閲覧数:102

投稿日:2009/09/16 02:58:00

文字数:667文字

カテゴリ:小説

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