カイメイ、ミクメイでカンタレラです。
長いのでいくつか分ける予定です。
お好きな方がいらっしゃいましたら、フーン、くらいにみてもらえれば幸いです。
注意※この小説内でミク→ミクレチア、KAITO→カイザレ、MEIKO→メイコ
となっております。
妄想捏造がかなり酷いですが華麗にスルーしてやってください
********
―1―
こんな森の奥にあったけか。馬車から見える風景に溜息をついた。
十年以上も前だったか。詳しい数字は忘れてしまった。けれどあそこに住んでいたのは一年も満たなかったような。
進んでいるのに変らない風景にうんざりしながら、もう一度溜息を。
細い道に馬が窮屈そうだ。喪に服すので黒く長いドレスを着たメイコも、何処も彼処も窮屈で仕方がない。
「ねぇ、私だけでその馬で・・・」
黒くてつやつやした毛並みの気性の荒そうな馬だ。
そんな馬だからこそ乗りがいがあるといったものである。
馬車の外でムチを振るう男に声をかけたが、無言で首を振られた。
鬱蒼としげる森の陰気な空気はメイコに毒だ。気分が悪くなる。
それ以前に左目が疼くのだ。湿気は傷に毒。医師にそういわれた。
光を失ったのは光の溢れる場所。メイコの左目は、今は薔薇をかたどった眼帯で隠されている。
しようがないのでまた窓に目をうつす。
規則正しい馬車のリズム。時折鳴く甲高い馬の鳴き声。そんななかで思い浮かぶのは、
『めーちゃん!はやくはやく!』
(・・・・カイ・・・・ザレ・・・・・・・)
父が死んだ。
教皇であった彼は買収だけでその地位にのし上がっていた。
残虐非道、そんな言葉が良く似合う。しかし、メイコの父だ。
メイコは父は何かなさねばならぬこと、どうしようもない理由があって行ったことだと信じている。
流行病で母を失ったメイコを優しく迎え入れてくれたのが突然現れた父だった。
カイザレという腹違いの弟との楽しい日々、悲劇、そして申し訳なさそうに眉間を寄せる父。
『カイザレが流行病になってしまったんだ、メイコ、一緒に暮らせなくなってしまったんだよ』
そういって服と少しの金貨、劇場を営む友人への手紙を託してメイコを送り出した。
哀しい別れだったが、メイコは強かった、立ち直り、劇場で精一杯働いた。
辛いことも父と森の奥の屋敷の記憶を呼び起こせば、やっていけた。
父は自分に金も居場所も与えてくれた。感謝しても仕切れない。
今では劇場での看板女優となり、歌を歌い忙しい日々だ。
しかし、片時も忘れなかった、屋敷の薔薇の匂い。父の顔。
死んだ、と聞いて愕然とした。
そんなにも時がたっていたと哀しくなった。
屋敷の執事からの手紙はあまりにも簡潔で温かみにかけた。
いや、貴族なのだからそんなものなのだろう。メイコは羊皮紙にペンを滑らせる。
『大好きなお父様と優しい弟との思い出のつまった館です、
どうか、もう一度足を踏み入れることを許していただけないでしょうか』
そんな文面を送ると、返事は二週間となかった。綺麗なディープブルーのインクの文字。
最後のサインはカイザレ。彼が今、館の主だそうだ。
あんなに小さかった私の弟、
「メイコ様、御屋敷が見えました」
ぼそぼそと歯切れの悪い声で我に返る。かなりの時間自分の世界に入っていたらしい。
初夏の空気なぞお構いなしに、ひんやりとした外気が肌を包む。
鳥肌が立ったのは多分冷気のせいなどではない。この館の雰囲気に圧倒されたからであろう。
これは、檻だ。黒い見えない手が誰も逃さぬように手を伸ばしてるのだ。
ゆっくりと土を踏む、呼び鈴を鳴らさずとも門が開いた。そこに立っているのは
「御久しぶりです、メイコ姉さま」
ご機嫌麗しゅう、と柔らかい物腰の男が、
「カイ・・・ザレ・・・・・?」
そういうメイコの瞳を覗き込んで優しく微笑んだ。
何処か異質なものを含んだ笑みだった。
自分よりも背が高い、瞳の光が闇の中に今にも飲まれてしまいそうな、
こんなにも変ってしまった、私の、弟
(狂い始める秒針の音が聞こえる)
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