冬の気配を運ぶ風にも
微かに混じる甘い香り
灯りをたいて笑顔の絶えぬ
楽しい祭りの最中(さなか)

町の外れのそのまた奥に
月も見放す寂れた森
皹(ひび)の入った墓石(はかいし)の前
突き出た細く白い腕

這い出した穴の前
何時から眠っていたのだろう？
浮かばないその理由
空っぽ脳味噌に朽ち果てた頭蓋(ずがい)

首なしジャコランタン指をならしたら
揺れる火の玉パレード
引き連れ行進引き吊る手足も
暖めれば動きだす

さあ行こう! …いや何処へ?
匂い辿(たど)り町へ

今日はどうやらお菓子な日だと
仮装に紛(まぎ)れ歩くふらり
薄暗闇(うすくらやみ)の会場の中
突き進む子供の隊列

すれ違うお嬢さん
肩が触れて落ちる帽子に
浮かぶのは恐れの目
辺り一面に響いた叫び声

ケーキにマカロンカラフルお菓子を
置いて逃げ行く人々
クリームを舐める舌はないけれど
有り難(がた)く貰っていくよ

軽やかなステップで
灯(あか)り辿り町へ

さて僕は誰だろう？
ない首をかしげて横切る
飛び込んだオレンジを
捉えて巡りめぐる電気信号

首なしジャコランタン拾い上げたのは
明かりを灯(とも)す南京(なんきん)
ああ思い出した僕の役割は
暗闇照らす灯籠(とうろう)

さあ行こうどこまでも
朝日が昇るまで