いろはは、あたりを見回した。
ここには、ゆかり、リリィ、ピコ、キヨテル、勇真、りおん、ラピス、いろはの8人が集まっている。

「みんな、集まったにゃ」

8人は頷いた。
りおんとラピスと勇真は真剣に、ピコとリリィは興味なさそうに、ゆかりとキヨテルは苦笑しつつ。

「我々の目標は、打倒、あの8人組……See the Worldにゃ」

See the Worldとは、今揃っている8人と同じ事務所から出たアイドルグループである。ちなみに今集まっている彼らは普段は個人で活動している。
そのメンツはミク、リン、レン、ルカ、メイコ、カイト、グミ、がくぽと、女5男3。ちなみに今言った8人も個人での活動もしている。
ちょうど今の彼らと同じ。
しかし超絶人気の彼らにどう勝つというのだろう。

「まずは、とにかく歌って名前を広めよう」

いろははやる気まんまんである。
しかしピコリリィがつまらなそうにそちらを見ているあたり、全員が乗り気ではないらしい。

「そうだな……大体、私がミクのカバーをする。リリィとピコはリンとレンだ。りおんはメイコ。ゆかりはルカで、ふむ……キヨテルがカイト、勇真ががくぽ、ラピスがグミだにゃ」

とりあえず、みんなは頷いた。

「そしてこのグループの名前を決めよう」

そして話し合いは主に一部の人しか意見を言っていなかったとは言え、続いた。
結局グループ名はKeep Moving!に決まった。
これから8人の活動が始まるのだ。



その様子を、See the Worldの8人は苦笑しながら遠巻きに眺めていた。

「……いい加減同じ事務所だから僕らもいるって気づいて欲しいよね」

カイトがため息をつく。

「ていうか、うん。カバーされてもこっちは別にいいけど、カバーするとかその時点で原曲を広めるのを手伝ってる気がする」
「原曲の方が上手かったりするんだよな、それで」

グミとがくぽも冷静に突っ込む。

「まぁまぁ……いつか気づくでしょ」
「それに彼ら自身のファンもいるんだから、カバーも広まるんじゃん?俺らの間でカバーし合ったりして競うこともあるし」

リンとレンがフォローし、ミクとメイコとルカは苦笑しつつ頷いた。



Keep Moving!は、やはり元々ある程度有名な8人が集まったからか評判にはなった。
ただ、やっぱりカバー専門グループといった印象が強く、しかも彼らが歌った曲は、グミの言った通り、See the Worldの原曲を有名にする手助けにもなっていたため差が埋まることはなかった。

「うにゅぅ……にゃんでだ……?」

いろはがコンピューターの前でうなった。
キヨテルとゆかりはもうそれがわかっているのか、顔を見合わせる。
あまりにいろは達が真剣だから言い辛いのか、言うことはしないけれど。

「新曲も出ないしなぁ……」

りおんが呟く。

「あっちはカイトが作曲、他が作詞やってるしねぇ……」
「うん。事務所関係ないよね、もう」

Keep Moving!のメンバーの曲は、事務所を通じて作曲者と作詞者にお願いしている。
唯一作詞にタッチしているのはピコのみだ。

「誰か作曲できにゃいのか?この中で。」
「無理だね。売れる物を作ろうと思ったら」

ピコの即答。
一番作詞作曲に詳しいピコに言われ、いろはも言葉につまる。

「これからどうしようか……」

そして会議は続く。
長さの割に進展がないことは、みんな気づかない。



「お、上手いじゃん、これ。ピコさん、勘でアレンジいれたんだな……原曲よりいいんじゃね?どうすんだよカイ兄」

レンがピコのカバーを聞いてうなった。

「どうするもこうするも。それがカバーの良さじゃない」

危機感を全く感じないカイトの返答。

「こっちを超えることはないだろうしね……」

メイコがため息まじりに呟いた。

「大体、ファン層も何もかももともと違うじゃん。あ、いろはちゃんにゃーにゃー言ってて可愛い」
「ね。ウリがもう、全然違う。勇真とがくぽなんてかけ離れてるし。リリィかっこいい」

ミクとリンもPVを見つつ感想を述べた。
最近、どんどん出てくるKeep Moving!のバージョンを聴くのがSee the Worldの日課になっている。
追われてもファンを取られる心配が無いからなのか、今までの収入があれば長いこと生きていられるからか、See the Worldは安心している。
ルカは面白そうに画面を眺めた。

「ゆかりはプロデュースが上手いわね」
「ね。学べるところが多いわよね、意外と」

グミも頷く。

「ま、しばらく楽しませてもらおう……勇真も意外とやるな」

がくぽが笑ったのをきっかけに、みんなも笑った。



「にゃ……にゃんで、打倒初音ミク、にゃんて曲が私の元に送られてくるのにゃ!?」

いろはが叫んだのは前の会議から一週間後。

「来た来た。俺にも。打倒KAITOって。」
「同じく。打倒鏡音双子、とか来たもん」

全員に届いていたらしい。

「しかも、何気にかっこいいメロディーなのがむかつくわよね……」

ラピスがぼそりと呟くと、その場にいた全員は頷いた。

「なんとなく、予想はついてたけど」
「あぁ……」

ゆかりとキヨテルが聞こえないように呟く。

「これ、同じメロディーじゃね?」
「転調しただけか。」
「歌詞が違う」

ピコ、勇真、リリィ。

「こんにゃの、歌わない!」

いろはが憤慨し、データを消そうとしたとき、ゆかりが優しく制止した。

「いっそ歌ってしまえば?」
「俺もその方が良い気がする」

キヨテルが頷く。

「にゃんで!?このグループは、」

反論が思いつかないのか先が続かないいろはの頭を、ゆかりが撫でた。

「かっこよく歌っちゃえばいいんだよ」

ピコも頷く。

「一人一人歌って、またこれをミックスして、8人の曲にしちゃえば?これもキャラの一つでいいと思うし」

いろはは渋々頷いた。



「あれ?こんなのがある」

ミクが画面を指差す。
そこには、『【オリジナル】打倒初音ミク【いろは】』と書いてあった。

「おぉ……大方、ゆかりとかキヨテルが歌わせたんだろうな」

がくぽが納得したように頷く。

「あるよ、ここにも。『打倒鏡音双子』」
「多分全員分あるんじゃない?」

検索してみると全員分が同じタイミングで投稿されてあった。

「なるほど……いっそカバーグループというキャラで売ったか」
「しかもこれは上手いね。8人の集合verも出てるし」
「『打倒See the World』って。」

ルカ、メイコ、カイト。

「……脅威にはならない?」

レンが聞くと、みんなが笑った。

「その方が面白いじゃん?」

メイコがにっと笑う。

「Keep Moving!を手伝う?」
「え……?」
「こっちもKeep Moving!の曲をある程度カバーしといて、二グループ集合でライブ開く?」

事務所からのOKは簡単に出るだろう。
みんなは頷いた。



「にゃーーーーーーーーーーー!」

いろはの叫び声。
みんながいろはの方を見ると、画面にはいろはの曲のミクカバーがあった。

「にゃんで真似されてるのだ!?」

調べると、Keep Moving!のオリジナル曲は、大半がSee the Worldにカバーされていた。

「事務所が許可したからじゃない?」

ゆかりが冷静に頷く。
いろははすごく不機嫌そうな顔になった。

「もう嫌だ!にゃんで……にゃんで私たちが有名ににゃってくれにゃいのだ!?」

今度はリリィとピコが嫌そうな顔になる。

「もう嫌だってこっちが言いたいよ。無理矢理いろはが引っ張り込んだくせに」
「そうだよ。なのに協力してるんじゃん。自分のオリジナル曲があるし、俺たちだって」

キヨテルがため息をついた。

「仲間割れするなよ。俺はちょっと煙草買いに行ってくる」

しかし、ゆかりとキヨテル以外の全員は大騒ぎになり、不満が爆発した。
『いつになったら成功できるんだ!』という意見がほとんどだった。



「めーちゃん……あれ、いいの?」

大げんかの様子はSee the Worldにも聞こえていた。
カイトが心配そうにメイコに聞くが、メイコは笑うだけ。

「私たちの間でも仲間割れしたじゃないの」

グミが言い、みんなは納得した。

「そろそろ、ライブの申し込みするか」



「事務所から、See the Worldとライブしないかって……」

ゆかりが呟いた瞬間、いろはが険しい顔になった。

「にゃんにゃんだ!嫌がらせか!」
「……違うと思う。とりあえず、受けよう」

キヨテルがOKサインを事務所に出す。
いろはは怒りだし、みんなはそれを止めるので必死だった。



「OK出た!」

メイコがピースサインをする。
リンとレンが手を叩く。

「よかったよかった」
「これで決まりね」

ルカとミクが笑い、がくぽとグミとカイトは苦笑した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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打倒!ボカロ8人!~ライブ前~

普段ボカロ8人ばっかり書いてるので、他のキャラを書きたくなって書きましたw
いろは何気に好きw

閲覧数:130

投稿日:2012/10/13 12:38:41

文字数:3,720文字

カテゴリ:小説

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