まず、召使レオナルドの行方について答えたのは眼鏡を掛けた魔術師、ダニエラであった。
「女王陛下。召使のレオナルドは現在、明日、フォレスタ・キングダムで催される姫君の誕生日パーティーへの参列に使用する、魔導列車の運行ルートを偵察しております」
「おおっ、そうであったか。流石はレオナルドじゃ。妾がミスティークの皆を呼んだのも、そのことについての段取りである」
リアーナ女王は側近たちの行動に感心していた。その理由は国の政治的外交活動、明日に執り行われる隣国の姫君の生誕祭に魔導国家ジャッロからの賓客として、リアーナ女王が招待されているからだ。
「妾とレオナルドの親友、メテ姫の誕生日を国を代表して祝わねばならん。新たに取得した華麗なる魔術をもってな」
その言葉はリアーナ女王にとって、メテ姫がどれほど大切な存在であるかが伺える台詞であった。
「あらん? お城のなかへ風が吹いてきましたわよ……女王陛下」
イザベラが渋みのある声色で女王の間に“風が吹いた”と言い出した。まるで悠久を帯びた風と表現するとしよう、その風は誰が吹かせたモノであるかとリアーナ女王は理解した。
「帰ってきたようじゃな……」と言って含み笑いを浮かべている。
悠久の風と共に女王の間の天窓から、羽音を奏でる一羽の鷹(たか)が降りてくる。鷹はクリーム色をした翼を羽ばたかせながら、女王が座る玉座の前にへと降着した。すると降りてきた鷹は、瞬時にその身をヒトの姿に変化させる。
「レオナルドが偵察より戻りました、女王陛下……」
自身の名をレオナルドと名乗ったのは、男性用の執事服に身を包む少年……ではなく男装姿の少女であった。
鈴鳴りの声を女王の間で響かせる執事服姿の少女。彼女の名前はレオナルド・ステッラ・オンダ=ジャッロ。彼女は姉と共にこの世に生を受けてから魔導国家ジャッロの古から伝わる習わしに従い、双子の妹にして忠実な“召使の男”として生きる道を選ぶしかなかった。
召使であるレオナルドは、女王の側近、三大魔術師ミスティーク1番目の柱である。
その容姿、リアーナと同じプラチナブロンドの髪を持つが長さは、うなじ付近までしか伸ばしていない。レオナルドもまた、姉と同じように前髪の左分け目をマスカットのヘアピンで止めている。レオナルドが得意とする魔法は、自身の姿を動物に変化させる魔術だ。
余談であるが、飼っているペットは“レオン”と名付けたカメレオン。レオナルドは日課でレオンを観察しようとしても、エサの時間以外は隠れているので“リアルカクレオン”と称している。
こうして、女王の間にリアーナが最も信頼をする側近たちこと、三大魔術師ミスティークのメンバーが揃った。
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次話
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リアーナ・インテルノ・リザイア=ジャッロ
Internoはイタリア語で[中]です
Risaiaはイタリア語で[田んぼ]です
レオナルド・ステッラ・オンダ=ジャッロ
Stellaはイタリア語で[星]です
Ondaはイタリア語で[波]です
悪ノ娘と悪ノ召使ファンの方々は、この名前がなにを意味しているか、おわかりだと思います。
僕も悪ノシリーズの大ファンなので、このお二方に最大の敬意を払っております↓
http://www.39amipro.com/akunomusume2019/
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