いつもと変わらない光景・・・

わたしは教会の前に立っていた。
「少し時間があるかな」
わたしは少し教会の周りを歩いてみた。
「雑草増えちゃったなぁ・・・。」
以前は、神父様とリンと一緒に草をむしっていた時もあったなぁ。
リンは、今は自由気ままに動いているし、神父様もいない・・・。
今度あいつ引っ張り出してやる。

・・・・・
ミクは雑草を掻き分けて教会の後ろを歩いた。
海が見える。
そこにはベンチがあり、良くここで歌っていた。
観客は、リン一人。
しかし、いつしか彼女は歌を聴かなくなった。
色々な物に興味を示し、その好奇心が赴くままに歩き始めたからだ。
それは嬉しいことであり、寂しいことでもあった。
ベンチにおもむろに腰をかけ、海を眺める。
一人で眺める海は、切なさを呼んだようだった。

・・・・・
「そろそろ行くかな。」
わたしは、ベンチを立った。
錆び付いた扉を開き、老夫婦が座る席を掃除する。
そこに、老夫婦が来てくれた。
「今日も来てくれたのかい?」
「はい。」
わたしは微笑んで老夫婦を出迎えた。
「いつもありがとう。」
「いえ、わたしこそ。」
祈りを捧げ、わたしは歌った。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm2033322
※イメージ曲
まうP氏の作品
初音ミク合唱団のモーツアルト:「Ave verum corpus」

古い講堂に歌が響き渡る。
※イメージ曲終わり

「今日もありがとう。あなたに祝福が訪れますように。」
「少ないけど、これを持っていって。ネギ多めにしたよ。」
老夫婦は、ミクに野菜を渡す。
「いつも有難うございます。あなた達にも祝福が訪れますように・・・。」
最初は断ったのだが、老夫婦の押しに負けたのだ。
それからは、有難くいただくことにしているようだ。
「私達はもう十分に幸せだよ。もう私達は長くないしね。」
「そんなこと仰らずに・・・。」

・・・・
わたしは悲しい顔をしたのだろう。
おじいさんが、わたしに言った。
「これはね。いずれ訪れることなんだよ。いつも最後にあんたの歌が聞けてよかったと思っているんだ。」
「長生きしてくださいね。」
わたしは、老夫婦に別れを告げ、家に向かった。
おじいさん達がいなくなったら、どうなるのかな・・・。
そんな事をふと思い、そして何縁起でもないことをと首を振った。
早く帰って掃除と食事の準備しなきゃ。

・・・・
あたしは、みーちゃんの帰りを待ってた。
ちょっとしたサプライズがあったのだ。
「あれ・・・?ただいま。早かったのね?」
みーちゃんは少し驚いていたようだ。
あたしだってさ、たまにゃあ早く帰る。

「実はですね、あたしにはお金が全然ありません。」
「知ってるわよ。」
「そこでです。釣りをしていました。」
「あ、そうなんだ。だったらこっちに顔出してよ。やってもらいたい事が・・・。」
肝心な事を聞かないよねぇ。みーちゃんは。

「釣果は聞かないの・・・?」
「釣れたの・・・?」
きたきた。
「ちょっと待ってね!」
重い・・・・・

「じゃ~ん!」
「きゃぁ~!!!」
「ほら、みーちゃん見てますよ。」
「何言ってるのよ!なにこれ!」
「・・・ヒラメかなぁ・・・?」
「・・・・こんなに大きいの・・・・?」
「リン・・・ところで・・・」
・・・ん?
「どうやって取ったの?」
何で釣ったかだよね。

「これ。」
「・・・・!!!!早く捨てて!!」
やばい。みーちゃんは本気だ。
みーちゃんは本気で怒るとたちが悪いんだ。

「後で海に逃がすから。でさぁ・・・今晩の夕食はこれを・・・」

・・・・
冗談じゃない。こんな大きい魚なんて捌いた事が無い。
本当にわたしを見ているような気がするし・・・。
わたしはリンをにらんで言った。
「あなたがやってね。」
リンは不満な表情を浮かべている。
「出来ないよ・・・。」
やはり・・・。
「だってこれをどうしろと・・・。」

わたしとリンはただ横たわる魚を眺めていた。
変な事言うから、見つめられているような・・・・。

・・・・静けさから一気に嵐のようになった一日は幕を閉じた・・・・


ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【第1部:シーン2】教会【壊れた人形】

曲の紹介です。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2033322
まうP氏の作品、
【修正版その2】初音ミク合唱団のモーツアルト:「Ave verum corpus」
です。
http://www.nicovideo.jp/mylist/2934561
まうP氏のマイリスト
主に、オリジナルのクラシカル音楽を作成しております。
ミクの透き通る高音が特徴的ですね。
代表曲として上げられるのが、【マリオネット】【音女】です。
特に、マリオネット(通称姉)は(私個人では)秀逸でして、
3:10からの物語の展開は、鳥肌が立ちます。
・・・この物語が、何故5分で収めることが可能なのか、それも脅威です。

豆知識コーナー
普通はヒラメが釣れるわけありません。
あれは沖釣りで、魚自体もフィッシュイーターです。
何を釣ってきたのでしょうか・・・・。私も分かりません。

閲覧数:217

投稿日:2008/12/29 22:30:25

文字数:1,734文字

カテゴリ:小説

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