通話の向こうで、ミクさんまであわて出したようなので、リンちゃんは変だな、と思った。

「そうね、紙魚子さんに聞いてみよう。何か、わかるかも」
ミクさんの、つぶやくような声が聞こえた。

リンちゃんは、聞いてみた。
「あのー、サナギが、どうかしたの?」
「うん」
はっきりとは答えずに、ミクさんは言った。
「リンちゃん、早く家に帰って。気を付けてね!」

そして、通話は切れてしまった。


●有難うございました。お気をつけて

リンちゃんは、スマホをしまうと、持ち物をまとめて、ホテルの部屋を出た。

1階のフロントに寄って、名前を告げ、部屋のキーを渡す。
「加賀美 凛さまですね。お支払い等、すべて完了してあります。有難うございました。お気をつけて」
ていねいな応対をフロントでされたので、彼女は会釈をして、ホテルを出た。

外は真っ青な秋晴れの、よい天気。時間は朝の10時半ころ、街もそろそろ、活気が出はじめている。

しばらく、振り返って、昨日まで泊まっていたホテルの建物を眺めていた。
「いったい、何だったんだろう」

そして、何が起こっているのだろう?


●よかった、無事だね

のろのろと前を向いて…。
家に帰ろう、と歩きはじめたとき。バッグの中のスマホが鳴った。

「もしもし?リンちゃん」
音楽仲間の、コヨミ君の声だった。
「あ、コヨミさん」
「リンちゃん!よかった、無事だね。いま、どこ?」
「え?うん、いま家に帰るところ。録音スタジオのとなりの、ホテルを出たとこ」

なぜか慌てたような口ぶりで、コヨミ君はつづけた。
「サナギちゃんがね、いま、行方不明なんだよ」( ̄0 ̄;)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(260) リンちゃんは無事だ!

リンちゃんのバンドの相棒、ベースのサナギちゃん。いったい彼女に何が…

閲覧数:99

投稿日:2015/10/25 12:39:33

文字数:698文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました