―――しんしんと、真っ黒な空からは絶え間なく 雪が降ってくる。

白い花びらのように頼りなく揺れながら落ちてきたそれは、レンの乾いた頬を滑り落ちて

―――ポタリ。

純白の世界に、小さな小さな雫を生んだ。





暖かいままの、彼女の手を握る力が不意に強まる。

雪の上で仰向けに眠る体を、うっすらと冷たいベールが覆い始めていた。

そう、と 顔にかかった雪を除いてやると、彼女の額に指が触れた。 その瞬間、全身が凍りつきそうな酷い痺れが走る。

「―ッッ!」

冷たい。手はこんなに暖かいのに。

雪の心地いい冷たさではない、それは 抗いようのない別れの冷たさだった。

「あっ――」

必死に否定するようにレンは勢いよく空を振り仰いだ。
見開く瞳に容赦なく氷の針が刺さるが、瞬きを忘れたようにその目は動かない。



やがて、目の縁から熱い雫が溢れだした。

けれど、それは決して涙ではない。

声も、涙も、 すでに枯れ果ててしまったのだから。


――心の中で、どんなにたくさんの思いや想いが渦巻こうとも、身体が凍りついてしまったのだから。



彼女の手をしっかりと握りしめたまま、レンは雪のなかに、空を見つめたまま倒れこんだ。







『あなたが鏡音レン? ……よかった、私 ずっとあなたに会いたかったの』

『レンの曲を私が……? やったぁ、ありがとう! 頑張るね!』

『関係あるもん! 私、私は、レンが……』

『ううん、何でもないの。忘れて』

『レンならわかるよ。 いつでも伝わるもの、レンの気持ち』





たくさんの、限りある数えきれないほどの記憶が堰を切ったように溢れだす。


「リン、置いていかないで……」


痛む喉から出る 掠れた声を世界が聞き取る前に、真っ白な雪は 全て吸いとっていった……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【初】雪の軌跡。【投稿】

【自己解釈】 拙い文章で失礼します。

Soundless-voice と proof - of - life の小説版です。

更新日は未定ですが、シリーズで続けていくつもりです。

たくさん書きたいのだけれども、時間も身体も全然足りねぇ!?

読んでくれたら嬉しいです!
どんどん
コメください!q(^-^q)

閲覧数:171

投稿日:2011/11/17 02:14:39

文字数:788文字

カテゴリ:小説

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