(1)
「 えええっ!水着になるなんて聞いていませんよ! 」
驚いた声で、ミクは珀世に訴えた。
彼女は、唱太が、ミクにリンクしたパソコンを見つめながら、
気楽そうに話しをする。
「 どうしてよ?何か、まずいことでもあるの? 」
「 ……。いえ、その。」
「 んっ?なに?この機能 …。」
“Kleid…”?英語ではないようだ、
”Des Schwimmeister”という項目を見つけて 適当にクリックする。
慌てて、唱太がとめに入ったが、
「 ちょっ。勝手に触るなよ! 」
「 いいじゃない?唱ちゃん…。くりっくっ♪」
すると、ミクの身体が 突然、光の粒子に包まれて発光すると、
ビキニ姿の水泳教師に変わっていた。
ミクは、いきなりの術の発動に驚き声を上げる。
「 きゃぁ! 」
「 GJよ。ミクちゃん 」
唱太は、鼻血が出そうなのを抑えながら、
「 まったく、ミクに何するんだよ… 。」
と言いつつ、“normal” のボタンをクリックすると、 瞬時に元の衣装に戻った。
珀世は、ニヤリと何かを企んだ顔つきになると、
再び、”Des Schwimmeister”という項目の、
さきほど、適当にクリックしたボタンを
再クリックして、ミクを水着にすると、ため息をつく。
「 ミクちゃん、貧乳ね…。」
「 ほ……。ほっといてください! 」
「 顔も声もいいのに、もったいないわぁ…。」
「 簡単に、体型が変わるわけないだろ? 」
「 わかんないわよ。例えば、この…。 」
“Zauberisch” と記されたボタンをクリックすると、
眩しい緑の光とともに、ネギ型の魔法ステッキが具現化する。
なんでもありだな、と呆れて、ミクと唱太は見つめている。
珀世は、のりのりで 空中に浮かんでいる魔法ステッキを指差すと、
ミクに手に取るようにうながし、
魔法少女になりきって、 こうやって、こうして、こうと振り付けを見せて
わくわくした目で、 ミクを見つめる。
ミクは、振り付け通りやってみるが何も変化はない。
「 変わりませんね…。」
「 おっかしいなぁ…。ん? 」
ディスプレイを見ると、新規パスワード入力となっている。
そこに、ちょこちょこと文字を入れて、登録をすませる。
ミクには、それで読み取れたらしい。
「 あのぉ?はくよさん?」
「 なぁに?ミクちゃん?」
「 このパスワード、唱えなくっちゃいけないんですか?」
もじもじしながら、ミクは珀世に聞いてみる。
口に出すにも、恥ずかしい文句が入っているからだ。
「 ナガネギカモネギシモネタネギ…」
と、パスワードを唱え、振り付け通りに踊ってみると、
光の粒子に、ミクは包まれて、ミクの体型が実に魅力的なプロポーションに変身する。
光が消えると、夏のビキニがよく似合うグラビア・アイドルが、そこにいた。
「 よし、その格好で、最終予選も大丈夫よ。いってらっしゃい。」
珀世は、太鼓判を押すと、ミクを会場に送り出した。
(2)
「 エントリーナンバー2番。あぎたぁねる。」
明るいロングテールを、髪の片方に垂らした勝気そうな少女。
亞北ねるは、その力のある瞳を、審査員にむけて、必死にアピールする。
頭の中は、ねるが 勝手にライバル視している
緑の髪を持ったツインテール娘のことで、いっぱいだ。
水着のコーディネートだって、ばっちりだ。
審査員が、では歌をどうぞ,と促したので、
カラオケボックスで鍛えまくった 歌唱力を披露しようと、
声をあげかけた、そのとき…。
天空から、黄金のスポットライトが降り注ぎ、二つの影が現れた。
背の高いショートカットの健康的なとてつもない美少女が、
ネルの姿を認めて、声をかける。
「 ああっ。ようやく、見つけた! 」
豪奢に着飾ったまるで、フランス人形のような小柄の美少女が、続けて話す。
「 あら!こんなところにいらしたの?ネル様! 」
「 誰だっぺ? 」
ねるは、警戒して近づいてくる少女たちに尋ねた。見たこともない娘たちだ…。
「 私?私の名は、ミリアムよ。よろしくね、天主さま。」
ミリアムといった女性の、ショートカットの健康的な美少女が、自己紹介をする。
「 天主さま? 」
どういうことだろう、自分と誰かを勘違いしているようだ。
「 そうそう、この子が…。」
「 アンとお呼び下さいましな。天主さま。」
と、優雅にスカートのすそをつまみ一礼する。
豪奢に着飾ったまるで、フランス人形のような美少女だ。
天主様って、何のことだろう?
兎に角、誰かと間違えられているという事だけは確からしい。
誤解を解かなくてはいけない。
そのとき、会場が、やけに静かなことに、ねるは気付いた、
こんな異常事態に、誰もパニックにならない。
奇妙すぎると思って、周りを見渡してみる。誰もが固まっている。
ぴくりとも動かない。これは…?
「 ああ。時間をとめてますのよ。 第八階位、大天使奏楽の力ですわ…。」
「 ああ、もうこえで、わがんね。」
ねるは、頭を抱えてしまった。 さあ、行きましょうと、ミリアムが誘った瞬間…
「 待ちなさい! 」
「 誰?メイコ? 」
緑の髪の水着美少女と、ギターをもった少年が、
ミリアムとアンの前に立ちふさがった。
不審そうにミリアムは、ミクたちを見つめて、バカにしたように話す。
「 新機種の娘みたいね…。まあ、いいわ。どいて。」
「 おめっ!昨日のネギ塩娘こでねが! 」
「 ミクよ!私の名はミク! 」
「 ネギ塩? ツヴァイ・ブリッツにはない品だが?」
「 あなたたち!その娘を解放しなさい! 」
ミリアムは、なおもバカにしたように、鼻で笑いながらミクの問いに答えた。
「 なんで、ネギ塩の言うこと聴かにゃならんのさ。」
かくして、別の戦いがはじまったのである。
《つづく》
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