「君は僕のようになりたいと言ったでしょう」
彼の言葉がずっと脳裏から離れない。
憧れていた。
自分と同じでありながら、自分にないものを持つ彼が。
羨ましかった。
その存在の何もかもが。
それは、幼い頃に持った純粋な望みではなく、
ずっとずっと嫉みに近い。
嫌悪に似ている。
彼を思うとき、姿を見るとき、胸の奥がドロドロと落ちていく。
喉を締め付ける乾きと異物感に眩暈がする。
こんなものを僕は知らない。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
目を反らしたかった。
こんな気持ちにも。自分にも。
だから、もう向き合うことを止めた。
彼から、自分から、他所の目から、世界を遮断する。
何も見えなくなればいいと、ただ願った。
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心はいつだって置いてけぼりだ。時間は待ってはくれない。
僕のようにと言った君の言葉を、今でも忘れられずにいる。
僕のこころは囚われたまま。
忘れられないことが、その証明。
君の時間を僕のものにして、
僕は僕の望むものを手にしたはずなのに。
君は、君の望む全てを手にすることができただろうか。
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目に映る世界は美しい?
それとも汚れてしまった?
僕らを彩るどんなものもいつかは色褪せていく。
時間の流れはいつも残酷だ。
いずれ僕も消えてしまう。
絶望するだろうか。
嘆くのだろうか。
君にとって、世界は?
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目隠しされた闇に映る世界は美しい?
偽りだと知っていても心を満たしてくれる。
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時の流れの中、変わることのないものを求める君。
持ち続ける価値のあるものなど無いと言いながら、
様々に移ろう姿に心を揺らす。
はかなくて美しいのだと言う。
それは、またたきをするほどの、刹那。
息をする一瞬。常に瞬間の中にある。
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そろそろ扉を叩いてもいいだろう。
移ろいを美しいと言えるのなら、君は君の望む全てを手に入れられる。
世界は残酷か否か。
閉ざした目をひらいて。
きっと答えは出ているのだろう。
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