ワンサマーデイ

1A昼間の街を歩いている。機械の音や車の音で埋まっている。夏。蜃気楼があって、陽炎が揺れて、入道雲が立ち込めて…炎天下の中、そんな変わらない風景を見ながら僕は裏路地へ向かった。こんな道誰も通らないだろうと思われるほど、辛気臭い場所だ。なぜこんなところへ行くのかというと、僕には行かなくちゃならない”場所”があるんだ。こんな平凡な毎日を変えるために…。街の騒がしさから逃げるように僕はつかつかと歩みを進めた。
1Bそのまま街を抜け、田んぼに囲まれた土手をあるく。そのままある”場所”に向かう途中、背高草が生い茂っている場所がある。その草はかなり高く、高さは2.5mくらいはあるだろう。それをガサガサと掻き分けながら進んでいく。最初は進むのも困難だったが、今になってはもう慣れてしまった。この背高草の道、結構距離もある。暫くしてこの林と言わんばかりの草むらを抜けると、いきなり森に囲まれる。これにはいつも驚く。なにが驚くって、いきなり木々に囲まれるのだ。予兆もない。どうやら森の途中まであの草むらは広がっているらしい。少し動揺した後、そのまま森の中を歩き始める。ここは落ち着く。街の騒がしさとは違い、木の葉の擦れる音、鳥の囀り、遠くからは水の流れる音だけが鳴り響いている。爽やかな気分になれる。そうして獣道を歩きながら僕はただただあの”場所”に向かう。これは毎日の出来事。毎日ここに向かい、毎日集まり、そして解散し、また集まる。それの繰り返しだった。だがそれが楽しい。何が、というわけでもなく、ただ楽しいんだ。そして歩き続けて1時間ほどし、ようやくあの”場所”に着く。視界がすこし広くなり、さらに木漏れ日が強く煌々と降り注ぐ。木々が避けるように丸く広がるその中心には巨大な木がそびえている。まるで幾年もの間、この森を守り続けてきたかのようにそびえ立つその木は、まさに世界樹のような神秘さと壮大さがあった。その大木の横に掛かっている梯子。この梯子を登って行くと、そこにあの”場所”がある。僕が仲間を集め、”僕達”で作り上げた「秘密基地」が。見上げてみると、そこには家のような建物が見える。耳を澄ますと、微かに喋り声が聴こえてきた。どうやら皆集まっているようだ。僕は梯子を掴み、そのまま駆け上った。皆が待っている、あの基地に…。
1Sやっと辿り着いた。みんなは既に集まっていた。「また今日も集まったな」って僕が笑いかけると、皆も笑って「もちろん!」って返した。これも毎日の事だ。
僕達は皆孤独だった。この社会には不似合いな力を持ってしまっていたからだ。人の気持ちを読んでしまったり、触れていないものを操ったり、姿が消えたり、翼が生えたり、獣に化けたり…と様々な力があったが、僕達孤独は、社会からは忌み嫌われ、友達からは怖がられ、避けられ、結果僕らは孤独に生きてきた。だからこのひどく退屈な毎日を変えるために、仲間を集めた。いつかきっと、僕達を社会に認めてもらうために…皆には気付かれないよう、秘密裏に行動しながら…。
僕は路地裏でうずくまる孤独に、
「この変わらない日々に退屈してるんだろ?だったら来いよ…、一緒にこの日々を変えよう…。」
そう言ってこの8人を呼んだ。孤独を見つけれた理由は、僕達力を持ってしまった孤独は、必ず顔の右側に青い刺青のような模様がある。この模様は力それぞれで変わるが、普通の人にはまずない。だから見つけれたのだ。そして集まる日にち、場所を伝え、僕達は初夏、この森の奥のこの巨木にこの秘密基地をつくったんだ。
少年少女たちは毎日作戦を立てた。今日はああしよう、明日はこうしよう。こんなことをしたら面白くないか?こんな挑戦をしてみよう。こうすれば何か変わるかもしれない。今日も作戦を実行しよう。様々な案が出る。こういう時のみんなの顔は、輝いて見える。あのころ、路地裏でうずくまっていたときとは全然違う。笑顔で、ワイワイと話している。
この秘密基地の天井は、この巨大な木の枝や木の葉で出来ているので、上を見れば太陽の木漏れ日がさんさんと降り注いでいる。眩しいくらいだ。この晴れ渡った夏の空の下、この8人の仲間達が集まった。いつかきっと、この世界を変えるために…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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ワンサマーデイ

この前上げた
「いつかの思い出」
の、イメージまとめですね。
こんな感じのストーリーの曲、作って行きたいな~。
またコラボでなんとかプロジェクトとかいってやろうかなww

閲覧数:83

投稿日:2014/03/24 03:17:34

文字数:1,747文字

カテゴリ:小説

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