※注意!
これは「trick and treat」の二次創作小説(前編)です。
二次創作は嫌いという方、原曲のイメージを壊されたくない方はUターンすることをお勧めします。
零奈の自己満足にお付き合いしてくださる心の広い方は、そのままどうぞ楽しんでください。
【勝手小説】trick and treat(前編)
霧深い森の奥から、声が響く。
少年の声と、少女の声。
「おいで」「おいで」
「もっと奥まで」「もっと深くまで」
交互に響く声に怯えながら歩く、少女が一人。
「早く」「早く」「急ぎ足で」「出来るだけ近くに」
緑の髪に、翠の瞳。悪魔の仮装をしているのは、今日がハロウィンだからだ。
「おいで」「おいで」
「「さぁ、愉しい遊びを始めよう!」」
少女の背後にはいつの間にか、そっくりな二人の子供の姿があった。
金紗の髪に、蒼の瞳。魔女と魔法使いの仮装をした、そっくりな顔の双子だった。
「「trick and treat!」」
ぴったりと声を揃えて、二人は不思議な事を言った。ハロウィーンの合言葉といえば「trick or treat」という所を、この双子はorではなくandといった。
そのことに関して、ついこの間何かを言われたような気がしたが、ミクは思い出すのを止めた。せっかく何かが面白くなりそうなのに、そんなことを思い出す気にはなれなかった。
見た所年下だし、可愛い言い間違いをする子達だと、ミクはほほえましい気持ちで見ていた。
「trick and treat!お姉さん、お菓子持ってない?」
幸か不幸か、ミクの持っていたお菓子はもう小さい子達に配り終えていた。
「ごめんなさい、お菓子はもうないの」
二人は無邪気に笑う。
「なら」「なら」
「「悪戯だね」」
魔法使いはクリスマスに飾るステッキを取り出し、歌を歌うように言った。
「シナモンスティックは魔法のステッキ!」
魔女の持つシロップの瓶にスティックを入れて掻き交ぜる。
「一振りするだけで、シロップが増える!」
彼女の言葉通り、ステッキが瓶を掻き交ぜる度、シロップが増えていく。
「す・・・すごい!」
瞳をキラキラ輝かせるミクに、双子は意味深な笑みを浮かべる。
たちまちシロップを溢れさせた瓶から魔法使いがステッキを抜くと、シロップは増えるのを止めた。
悪戯というより手品に近いが、彼らが悪戯だと言うのならそうなのだろう。
「舐めてみる?」
「甘くて美味しいシロップだよ!」
恐る恐る差し出されたミクの指に、魔法使いは黄金色に輝くシロップをかけた。
「甘い!」
ミクが喜びの声をあげると、双子は歌を歌うように言った。
「愉快な悪戯、美味しいお菓子!」
「今日は愉しいハロウィーン!」
双子はミクの周りをくるくる回りながら、にこにこと笑う。
「よかったら、僕達の家に来ない?」
「美味しいお菓子を用意してるんだよ!」
「もちろん愉しい悪戯も!」
双子の言葉が、ミクの好奇心をほどよくくすぐる。
が、とうに日が暮れたこの時間帯に何処ともしれぬ場所に行くのには抵抗があった。
「うーん・・・でも、もう遅い時間だしなぁ・・・」
「残念残念」「今日だけなのに」「年に一度のお楽しみなのに」
双子は萎れた花のようにしゅんとして、瓶やステッキを片付け始めた。
そのままとぼとぼと歩きだそうとする双子を、声が呼び止める。
「待って!」
呼び止めたミクに、双子はぱぁっと顔を輝かせた。
「行こう」「行こう」
「一緒に行こう」
ミクの左手を魔法使いが、右手を魔女が握り、その場でくるりと一回転する。
「!」
回転するその僅かな間に、いかなる手品なのかミクの両目には黒い目隠しがされていた。
だがミクには、そのことに関する疑問もない。
いつからか辺りに漂う砂糖菓子のような甘い匂いに心を奪われ、そんなことは当に頭の片隅に追いやられていた。
双子が交互に言う。
「苦ささえ忘れて、甘い夢の中」
「天蓋に守られて、眠りに落ちる」
その声達も、ミクにとっては意味のない音の羅列でしかない。
魔女の声が言う。
「幻想の催眠に溺れたままでいい。目隠しを外しちゃ面白くないでしょ?」
目的地が簡単に見えたら、確かに面白くない。だからこその目隠し。ミクは甘い匂いにうっとりとしながらもそれを理解した。だが、それでは足元が心もとないな。まるでそう思ったミクの心を読んだようなタイミングで、魔法使いの声が言う。
「足元ご注意!でも大丈夫。その手は僕が引くから。」
彼が手を引いてくれるなら、転ぶ心配はない。
「「その身を今すぐに委ねなさい、さぁ」」
愉しげな笑顔が目に浮かぶような双子の声を聞きながら、ミクの意識は暗闇へと落ちていった。
それは、そう―――天蓋に守られて、甘い夢に落ちるように。
【勝手小説】trick and treat(前編)
明日はいよいよハロウィン!ということで、trick and treatの小説の前編です。明日二通りの続きを乗せます。ハッピーエンドとバットエンドの二種類です。お暇な方はどうぞお付き合いください。
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BPM=200→152→200
作詞作編曲:まふまふ
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