「あと一日で世界が終わるとしたら何がしたい」



馬鹿げた質問
可笑しくて涙が出てきてしまうわ



「最期なんだよ
 それでも,君は自分を飾り付けるの」



五月蝿い
うるさいうるさいうるさい



「ねぇ,君がしたかったのはそんなことなの」



知りませんよ
そんなこと





当の昔に忘れてしまいました
































私はまだ蕾
花になるには程遠い蕾


花になって初めて愛でられる私達は,今のままじゃあ意味が無い



だから,皆,花になろうとする
愛でられたいから

理由はそれだけ


何故愛でられたいのかなんて,誰も分かっちゃいない

理解する必要が無いから











耳の奥で嫌な音がした
ぞっとする様な音

『ぼとり』だなんて,美しくない音


でも,同時に爽快な音でもあるの
だって,他の椿が消えたって事でしょう



『ぼとり』下品なと音を立て,他の椿はもがれたのでしょう


ふふ
良いことね

素晴らしいことだわ




私以外の椿なんて全部消えればいい

そうしたら,このままでも私は愛でてもらえる
それは表面上の愛かもしれない


だけどね,私はそれほどにまで愛に餓えてるのよ







もがれた椿はどうなるのかしらねぇ
きっと,穢れを知ったその椿は不必要とされ,踏み潰されるわね


嗚呼
愉快愉快



心の臓を,こう,ぐちゃっと
ぐちゅりと,ぐちゃりと


いい気味ね




今まで,愛されていた【もの】に潰される,というのはどんな感覚なのかしら

とっても,痛いんでしょうね




云いたいことがあるのですか



それこそが快楽,とは


ふふ
哀れね

あなたも,堕ちたものね







咽の奥で,嫌な感じがした
どろりと,何かが解けるような感覚



気持ち悪い

吐き気がする





でも,そんなこと,美しくない
穢らわしい


吐き気が込み上げてくるのなら,それをもう一度戻せばいい
もう一度飲み込めばいい
自分自身の意思とは裏腹に,美しさのために,押し戻せばいい



簡単なことじゃない














何故なのでしょう



痛い

痛みが感じられる

痛いと云う感覚が脚に走る





腱が
腱が噛み千切られた



可哀想
とっても可哀想


こんなことをするようになってしまったなんて
とってもとっても可哀想




今一番可哀想なのは,激痛をぴくりとも顔に表さない私じゃない
そんな私を見て嘲嗤っているってる貴方





嗚呼
可哀想な花


かつての美しさ
かつての凛々しさは何処へ消えたのか
泡沫の如く消えていった,あの気高さ


嗚呼
誠に哀れなり





私は,可哀想な貴方とは違う
私と云う器に何をされようと,私には関係ない




ただ,頬を伝うこの一筋の道を見られまいと,星を睨むことにでもしませう
その顔は只管に,美しくなかったかもしれない


しかし,それは構わない
私はそうしたかったから
私がそうしたかったから





















さぁ,眠りませう

私と共に
蕾の私だけれども,貴方は認めてくださりますか




さぁ,眠りませう

穢れと云う名の蜜を知らぬ,貴方と共に
私はまだまだ蕾の女
しかし,貴方を快楽に堕として差し上げませう




さぁ,踊りませう

貴方と共に
穢れを知った私だけれども,貴方は愛でてくださりますか




さぁ,踊りませう

穢れを知り尽くし,其れに埋もれた私と共に
貴方は時期,成虫となるもの
しかし貴方はその前に,私を喰らい尽くしてしまうのですか




大丈夫ですね
貴方が,今喰らうのは,葉ですものね
私のような蕾などは,誰が喰らうものか



嗚呼

おりましたね
菌と云う名の穢れが





















「最期の夢は安らかであれ」


心にも無い御言葉,有難く受け取りませう



「君は,焼けた靴を履く灰かぶり」


ええ,そうね

私は哀れな灰かぶり
何も知らぬふりをし,焼けた靴を履いて見せませう





















椿とは美しく,凛々しく,気高く在るべきもの
その美しさが欠如でもすれば,その花は散ったことと同じ
其処に存在していないことと同じ





それが椿




私達に,突き付けられた運命
其れを憎むなんていう,美しくないことはしない


それを,憎んだところで何かが変わるのでしょうか
それを無視して,自由気侭に生きたところで,その運命は何度でも廻ってくる




其れが私達という存在だから





















「君は,何処に向かってるの」



分かりません
私には行き先など在りはしませんから



「僕はね,このずっとずっと先に行きたいんだ」



そうですか
ならば,私が連れて行って差し上げましょう
私が千里を示す道しるべとなりませう







「僕はね,目が見えないんだ」



其れは,お気の毒ですね



「だけどね,一回でいいから,空が見てみたいんだ」



そらですか



「あぁ
 きっと,大きくて綺麗なんだろうなぁ」



貴方が望むのならば,私は貴方の眼の代わりとなりませう

それが,貴方に鮮明に伝わることは無いでしょう

しかし,其処に何が存在しているのか
其れぐらいなら,彼にも知る権利がある筈でしょう


私は,貴方の其の黒い眼に光を届けます
若しかしたら,届かないかもしれない

いや,きっと届かない


でも,届く確立が少しでもあるのなら
私は,火星より紅い惑星になりませう


貴方に光を届けたいから







「僕ね,君ともっとお喋りしたいんだ」



左様ですか



「だからさ,もっとお話して」



貴方はいつでも笑顔で,私に話しかけてくる

笑顔の素敵な方


貴方の目に穢れは無いし,その口から紡ぎだされる言葉はどれも美しい




貴方の今の汚点を一つ上げるとしたら

そうね
私と居ることかしら


そんな,貴方の汚点である私に何か出来ることがあるのであれば,何でも致しませう



貴方が声を求めているのならば,岩に沁みる断末魔となりませう


貴方の,其の岩のように固い心に私の言葉を







「僕ね,海に行ってみたいんだ」



うみですか



「きっと,波の音が心地よくて,夢のような場所なんだろうなぁ」



私には貴方を海に連れ去ることはできません


でも,せめてもの安らぎのため

貴方が波の音を聴きたいと云うのであれば,私は躊躇い無くこの御髪を引き裂きませう



それが,貴方の安らぎになると信じて
















腹の奥で嫌な音がした


『がさり』なんていう,悍ましい音
何かが私の中で蠢いている様な,そんな感覚


私と云う,私だけの器を私以外のものが支配しようとしている
私は,私に立ち向かう
私は,私を殺しました







次の音は何かしら


『ごぽり』


まぁ
何て音なの
聴くだけで,耳が,躰中が腐りそうになるわね



でも,此の音もただただ聴いておくことしか出来ない
水の底に幽閉されている私には,此の醜い音を聴くことしか,することがないから

もし,他にあったとしても,きっと私は此の音を聴き続ける


此の醜い音に魅了され,虜になり,溺れている私がいるから

そんな,私は世にも醜い花となっていることでしょう
しかし,今だけは構わないのです


今だけは,穢れと決別することが出来ている
私は,そう思い込んでしまっているから







森の奥

其れは其れは,奥の奥
誰も踏み入れない様な,其処は此の世なのか,と疑うほどの奥

其の奥での音


『ぼきり』


嗚呼
折れてしまったのね


枝が,折れ,其れでも尚彼女は咲き続けようとする
残された生命なんてものは,もう無いというのに


何故,咲き続けるのでしょう
私には解りません


其れほどまでしても,咲き続けたい理由があるのでしょうか




私は,其の絵を見ながら考えました







枝が,折れ,美しかった花は地面に堕とされる

其れを,見て貴方はどんな行動をとるでしょうか


哀れな,其の花はきっと踏みつけられることを望んでいる
胸の奥から望んでいる
其れは,心ではない
心なんて云うもの,私達には持つ資格がないから



今まで,愛されてきた其の花は踏みつけられたとき,どれ程の痛みを感じることでしょう
其れは其れは,想像を絶するほどの痛みなのでしょうね


そうして,踏みつけられ必要とされなくなった花は,独り哀れに地面に這い蹲る


其の花を必要とするものが在るとしたら,其れは腹をすかせた蟲達
其の花は,蟲達に喰われるのでしょう

ぬちゃり,などと云う下等な音を立てられ,其の花は散って逝く



でもね,其れって幸せなことなのよ
だって,最期の最期まで,何かしらに必要とされてたんでしょう

其れは,見えない刹那の幸せ









暗い
暗い


此の,黒は闇よりも黒く,暗い


此の世で,一番恐ろしいもの
其れは,闇ではない


孤独と云う名の永遠の快楽







赤い
赤い


此の,赤は何なのでしょう

きっと,私を喰らおうとした,あの哀れな狼の腹の中の色でしょう

可哀想に
こんなにも,赤くなってしまって


私なんて云う,穢れを食べた所為ね














「僕ね,君とずっと一緒に居たいんだ」



そうですか
私は,嬉しい限りです



「僕はね,その証が欲しいんだよ」



証ですか

其れならば,私が此の世に生まれ堕ちた時に握っていた,唯一,あの世界との繋がりになるへその緒
此れを,刻みませう


そして,綺麗な首輪にして,貴方に差し上げませう
此れは,私がまだ穢れに染まる前に,手に入れたものです

此れだけは,穢れには染まっていないのです







「僕はね,君と一緒に人生を歩んでいきたいんだ」



いけません
そんなこと



「だからさ,ずーっとね
 君と一緒に君と同じ歩幅で歩いていくよ」



それでは,せめてもの罪滅ぼしです

私のこの,穢れと云う名の黴を纏った皮を剥ぎませう


そして,貴方に靴として差し上げませう
それで,お歩きください


そうすれば,貴方の其の美しい足で穢れを踏むことはないでしょうから







「僕ね,君のことが好きだよ」



其れは,本当にいけません
其れこそ,真実の罪ですよ



「愛って知ってるかい」



嗚呼

竟に貴方も侵されてしまったのですか


しかし,其れが貴方の選んだ道だと云うのならば,私は其れに従いませう



口付けをせがむのですね

ならば,私と誰かの愛の証の水子
此れを,唇に塗りたくりませう


水子は,もう此の世には居ない生き物
私の過ちによって此の世から排除されてしまった,私の罪の塊

でも,私にはどうすることもできない


水子の味はとても苦く,けれども仄かに甘かった














この躰
私と云う名の私だけの器


此れを,誰かに奪われるなんて黙って見ていられるものですか



此れだけは,絶対に譲れないのです
貴方が愛して下さっている此の器は,何が在ろうとも私だけのもの



もし,誰かが此れを奪おうとでもするのなら私は躊躇い無く薬指を砕きます
そうして,醜い姿になったとしても全く構わない




だって,自分以外の誰かが美しくなることを,貴方に愛されることを阻止出来たのだから


私に,後悔の念は微塵もありません





















あと一日で生命が終焉るとします
いいえ,終焉るのです


そうしたら,椿の花・私は悩むのでしょうか




最期まで,気高く凛と咲く
其れが私に与えられた運命だとしても


それでも,私はきっと悩むでしょう




最期くらいなら








何に,甘えているのかは解りません


けれど,きっと,私は最期にこんなことを云うのだと思います
其れは,とてもとても弱く,美しくない言葉

けれど,そんな言葉が私の中に安らぎを創る







「もっと,生きたい」







嗚呼

なんと,弱い言葉なのでしょう
解っていますとも


けれど,此れが私の最初にして最期の弱く,穢れの無い言葉です








もう,私は気高く咲く椿ではありません

それでも,貴方は私のことを見てくれるのでしょうか



もう,見られなくても構わない
私はもう,私ではないのだから






「もっと,生きたい」だなんて嘘の言葉

そう願いたい







百日を長く,穢れながら生きるよりも,孤独に枯れる



此の方が断然美しいでしょう






























最期の最期まで,椿と云う名の花の仮面をかぶり続けた私はもう居ません

きっと,独りで何処かへ行って独りで彷徨っているのでしょう



私は,もう違う
私は私
私ではない,私

理想の愛を見つけ出した,私は本当の私


謙遜なんて,つまらない
そんなことしたって,何の意味も無い







きちんと前を見て,上辺だけの仮面なんか地面に叩きつけて
そうして,一歩踏み出す



目の前に広がるのは,一面の椿の花でしょう






































































神様

哀れな少女の仮面
私は,此れを取ることがまだ出来ません


私はどうしたら,良いのでしょうか

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

椿の花  ……慣れないものには手を出すもんじゃないねぇ…………

ここまで,読んでくださった貴方
ありがとうございます!!




えーと
まず,謝罪です


普段,古文とか読みません!
なので,表現おかしいです!

『懐かない犬に手を出したら案の定噛みつかれた』
そんな感じです
(↑どんな感じなんだよ! 訳,わからん……)


すいません
読み苦しい文章だったと思います

本当にすいません






今回の『椿の花』はミトさんのリクエストでした!
初めて聴く曲だったんですけど,聴いた瞬間,自分も惚れました!


デッドボールP様の曲は百合のとかしか知らなかったので,
『おぉ,普通の曲もあったのか!』と少し驚きました

失礼ですね
こんな書き方すると
すいません




書きながら,椿のこととか,ちょっと勉強になりました

ほぉ
花言葉は『理想の愛』と『謙遜』かぁ……

とかw



あと,今回は日本っぽくしたかったので,片仮名とか記号とかは頑張ってなくしてみました!
『?』とか『……』,無かったはずです

なので,ちょっと……
いや,かなり読みづらかったと思うのです…………


何か,本当にすいません





あと,ちょっと雰囲気ア○プロが入りました

ア○プロって,知ってる人少ないかもしれませんが,
自分はこの方が大,大,大,大,大好きなんです!!

自分のブラックなところは,ここから来てるんじゃないかと,少し思います……



長くなってしまってすいません

こんな駄文ですが,もし,もし,もし良かったら,
ご意見・感想を書いていただけると嬉しいです


原曲は素晴らしいんですけどねぇ……

素晴らしき原曲様のURLです
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3046398
この駄文の後の,お口直しにでもどうぞ



それでは,よろしくお願い致します

閲覧数:290

投稿日:2011/03/31 11:40:35

文字数:5,737文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • ミト

    ミト

    ご意見・ご感想

    リクエスト受けて頂いてありがとうございます。
    っていうか早いw二日しかたってないのにこの生産量はうらやましい。


    やはりダークな文章とても映えますね~。
    雰囲気がとても素晴らしかったです。
    リクエスト何曲か迷ったんですけど、この曲で正解でしたw

    アリ○ロってローゼンメイ○ンの主題歌とかでしたっけ?
    違ったらすいません・・・。

    そしてがくぽになってたんで最初わかりませんでしたよ(笑
    今度がくぽの書こうかなとか思ってるんでまさかのシンクロw
    まぁ、書くのはコメディですけど…。



    リクエスト、堪能させていただきました。
    次回も楽しみにしてます!

    2011/04/01 01:10:55

    • アリサ

      アリサ

      感想,ありがとうございます!


      すいません
      折角リクエストしていただいたのに,こんな出来になってしまって……
      慣れないものに手を出した罰ですね
      ……とほほ



      がくぽのコメディ,楽しみにしてます!!
      あぁ
      がーくぽ,がーくぽぉ♪

      2011/04/01 10:39:53

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