4月5日
 
 清明な朝。
 クリプトン学園の校門へとつづく坂道の桜並木は、そこを通る者の目をしばし留めさせるに充分なくらいに咲き誇っているが、その桜に目もくれず必死に坂道を駆け上がる、中学生用の鞄を背負った少年と少女がいた。
 走りながら、遅刻しそうになっている原因をお互いなすり合っている。
「…なんだって始業式から走る羽目になるかなあ!」
「レンが朝ご飯のんびり食べてるから!」
「リンだって、さっきまでイヌみたいに花びら追っかけ回してたろ!…あっ、前に人!よけろ!」
「ひゃっ」
すんでの所でリンがよけたその女性の長い髪が、二人の駆け抜けた風でさらりと舞い上がった。リンからはその女性の顔はよく見えなかったが、なんだか微笑んでいたようだった。

走りながらもリンはレンに話しかける。
「ねえねえ、レン」
「なんだよ」
「さっきの人、ミク先輩そっくり」
「えー?もっとオトナだろ?」
「うん、そんな感じ。ミク先輩が成人した感じした」
「…急ぐぞ」
「うん」
どちらからともなく手を出し合い、二人手を繋ぐ。
『加速!』
と、二人同時に口に出して、走る速度を上げた。


「ひゃー、間に合ったぁー。はぁーはぁー、もうダメ、あたし」
「リンは持久力ないのな」
「はぁー、どこで差がついちゃいましたかねー、弟君」
「いきなり姉面すんな」
「…それにしても」
それにしても、どうして校門から校舎まで200m以上もあるのか。学校が広大なキャンパスを持っていて、その中を自由に動き回れることは嬉しいが、もっと生徒のことを考えたキャンパスレイアウトにすべきだ。歩きながらリンはひとしきりレンに演説をぶつ。
…何で女は喋り続けようとするんだ?さっきまであれほど走って、喋る元気なんか失ってしまっただろうに、よくもまあネタとエネルギーがあるものだ。
熟知している双子の姉とはいえ、レンは些かうんざりしている。

少し離れて歩いていた二人の少女がリンとレンに気づいて声を掛けてきた。
「リンちゃーん、おはよー」
「あ、サイちゃん!おはよー」
「リンさん、レンさん、おはようございまーす」
「あ、メテー、おはよー」
「おはよう」
レンの挨拶はそっけない。相手が女子だからということもあるが。
4人並んで歩く。
「リンちゃん、今日は走ってたよね」
「あっ、見てたー?」
リンは思わず舌を出す。
「うん、スクールバスからしっかり」
「お二人もバスを利用されたらよろしいのに」
「うん。でも、うちら、学校から近いし」
「ヘルストレーニングになるからでしょうか」
「そんなトコかな」
「リンのトレーニングにはなっていないけどね」
レンの突っ込みにメテとサイが笑う。

もうすぐ校舎。
「よーし、レン、明日は勝負しよー」
「何の」
「桜坂かけっこ大会。負けたらアイスおごりね」
「…昨日リンが当てたくじ付きアイスか?」
「ハンデはね、あんた私の倍の距離走ること」
「あり得ん」
メテとサイは笑いながら二人のやりとりを聞いている。
 …ただ、そのやりとりのせいで、彼らの近くを歩いていた者たちのうち、たった一人挙動がおかしくなった者がいた。「アイス」という言葉を聞いて。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【小説 桜ファンタジア】 今ここに始まる

桜ファンタジア制作委員会というのがあって。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=nxq2li06a3xwwxam

そこに参加してるんですけど、
流れで小説?を書いてみたりしました。
日記形式になっています。リンレンが卒業したら、このシリーズは終了予定。
終了するのかな(^▽^;)

桜ファンタジアの設定資料です。小説の前にご一読いただくと嬉しいです(^^)
http://piapro.jp/a/content/?id=h3yv7v4kqyo0w4zl

第一弾はコチラ。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=psy4l7int2vczb3o
第二弾。。。
http://piapro.jp/a/content/?id=kymckf21vtqdghnb

お暇でしたらば笑って読んでやってください <(_ _)>

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投稿日:2008/03/02 03:31:41

文字数:1,321文字

カテゴリ:小説

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