A
朝起きたら無造作に置いてあった
変な色の 古びた掃除機
スイッチの近くに 汚い字の
注意書きが貼られてた
B
「嫌いなものを念じてください
この掃除機が全部吸い込んであげます」
信じがたいけれど ワクワクして
数学の教科書に向けてノズルを翳した
※吸い込まれていく 大きさなど無視して
おどろおどろしい 音をあげながら
躍る鼓動 抑えながら 空を仰ぐ
「みんな、みんな、消してあげるから」
A
その日からは毎日が早く過ぎた
大嫌いな何かが消えてく
理想郷を描き 吸い続ける
未来までもう待てない
B
ピーマン ムカデ 役人 天才
”消してください” 見えたものを念じるだけ
それだけの仕事 カンタンだね
王政も独裁も 僕にかかれば容易さ
※吸い込まれていく 何もかもが消えてく
キレイキレイしよう ゴミはDeleteだ
叶う希望 巡る理想 明日を目指す
「みんな、みんな、消してあげるから」
C
なんでもかんでも軌道修正
いつでもどこでも僕は満足
マンネリ 飽和 訪れた倦怠
「もっと、吸い込まなきゃ……」
パワーをあげていく
パワーをあげていく Ah
※掃除機に伝う 溢れ出した願望
「一番嫌いなものを吸い込んで」
念じるだけ やがてカチリ スイッチオン
「みんな、みんな、消してあげるから」
※気づけばノズルは 僕を向いていた
おどろおどろしい 音をあげながら
そうか僕が 嫌ったもの それは僕だ
こんな僕が 嫌いだったんだ……
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