~エンディング~ 白の娘
「生きていてごめんなさい。」
いつのまにか口癖になっていた。
弱音ばかり吐いて、つまらない人生の日々を送っていた。
街の人たちはみんな緑色の髪。
私だけ仲間はずれの白い髪。
いつしか私は森の奥で暮らしていた。
森の奥の千年樹にいつも一人で願いをかけた。
孤独で行き続けることはとても寂しい。
だから、
「誰でもいいから、私の友達になってほしい。」
と、願いをかけた。
彼女とあったのは千年樹のすぐそば。
倒れていた彼女を助けたのがきっかけ。
いつのまにか私と彼女は仲良くなっていた。
彼女はミクという名前らしい。
だけど私と彼女は何もかもが違った。
街の中で誰よりもきれいな緑色の髪。
優しい声と笑顔。
街の誰からも愛される彼女。
私はある日彼女に聞いてみた。
「どうしてこんな私にも優しくしてくれるの?」
自分より劣る女を憐れんでいるつもりなの?
彼女は小さく首を振り、そして私を抱いて
「あなたは誰よりも素敵な人よ。少なくとも・・・」
最後の言葉は小さな声だったが
少なくとも私よりは・・・。
だった。
なにがだろう?あなたはとってもいい人なのに。
けれどもこんな私を必要としてくれる人がいることに涙がこぼれた。
たとえ世界の全てが私のことを笑っていようとも、
私のことを必要としてくれる人がいることが、
私にとってはすっごく幸せなことだった。
二人で街を飛び出して別の街で暮らし始めた。
不慣れな生活でも彼女が私に何でも教えてくれた。
ある日突然彼女が母国、緑の国へ戻ると言い出した。
「ごめんなさい。緑の国でやらなければならないことがあるの。」
「私も行ってはいけないの?」
「・・・ごめんなさい。」
彼女のとてもつらそうな顔。
どうしたのだろう?
「どうしてもやらないといけないことならいってきて!私は大丈夫だから!」
私は言う。彼女はありがとうと言うように頭を下げた。
数日後に聞いた。
緑の国が滅びたと。
緑の国へ行っていた彼女も巻き込まれて亡くなってしまったらしい。
みんなみんないなくなってしまった。
白い髪の私以外。
彼女の変わりに私が死ねばよかったのに。
どうして?どうして?
その日の郵便で届いたものの中に彼女からの手紙が入っていた。
「 ハクへ
いきなり緑の国へ行くと言い出してごめんなさい。
ハクがこの手紙を読むころは、私はこの世にいないかもしれないけれど、
私がハクに緑の国へ来てもらいたくなかった理由を聞いてほしかったの。
実は、私には未来が見える能力があるの。
私が見た未来の中では私は黄色の国に殺されなければならなかったの。
でも、ハクには生きていてほしかったから・・・。
自分を責めないで。
そして、ありがとう。
ミク
」
彼女が最後に書いた手紙。
私ただ立ち尽くすことしかできなかった。
黄色の国の港で新たに暮らし始めた。
革命でこの国の王女が死んだと、うわさで聞いた。
あの子とであったのは港のすぐそば。
倒れていた彼女を助けたのがきっかけ。
最初はおびえていたあの子といつのまにか私は仲良くなっていた。
でも私とあの子、何もかもが違った。
私があの子に貸してあげていた部屋で突然聞いたあの子の泣き声。
あの子は写真を抱えて
「ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・レン・・・。」
と泣いていた。
写真が見えた。
写真に写っていたのは、ドレス姿をしたあの子と、
あの子によく似た少年が写っていた。
嗚呼、何てことだろう。
あの子は死んだはずの
悪の娘
街外れの小さな港。
一人たたずむあの子。
背後から近づく私。
懐からナイフを取り出して王女の背中に向けて振り上げた。
「!」
一瞬だが、この子がもっていた写真に写った少年がこの子を守るように立っていた。
ナイフを落とす私。
あの子は振り向いて
「ハク・・・さん・・・?」
と言う。
彼女の目が赤い。
ここで泣いていたのだろう。私は彼女を抱きしめた。
あなたに誤らなければいけないことがあるの。
私は結局あなたの仇は取れなかった。
あの子は昔の私。
孤独な時の私。
一人で行き続けることがとても寂しいことを私は知っている。
だから私はあなたが私にしてくれたことと同じようにあの子にしよう。
あの子があなたを殺したことは許さない。
けれどもあの子が、一人で孤独に生きる姿が見たくなかった。
出会ったときは何もできなかったあの子。
今では少し料理ができるようになった。
「ハクさん!上手に焼けたの!食べてみて!」
今日のおやつはあの子が焼いたブリオッシュ。
あの子が作りたいといったブリオッシュ。
とっても上手に焼けている。
あの時、あの海辺で見えた幻覚。
今でもたまに見える。
あの子のそばに。
あの少年は誰なのだろう。
また時間があれば聞いてみようかな。
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