私立中央音楽学校。
中等部と高等部、社会部がある、女子生徒率が多い音楽学校である。
中等部はセーラー服、高等部はブレザーが制服として着用が定められている。
ちなみに社会部は私服である。
時々、社会部の生徒が昔着ていた制服を着て、中等部や高等部、さらには他校の生徒とまで間違えられることのあるような、不思議な学校ともいえよう。

初音ミクも、そんな学校の一生徒である。
高等部に在籍し、特有の灰色のブレザーに青と緑が混ざったような色のネクタイをしている。
ちなみに、制服に関しては自由な学校だ。
ミクがつけているネクタイも、リボンと選べるし、色のバリエーションが果てしない。
結果、校舎にはさまざまな色があふれていた。
同時に、同じくさまざまな音も。
音楽学校であるのだから、もちろんなのだが。

「るん、るるるーん、るるるーるーるーー、るるる、果あてしなくう、続くう、愛のめえせえじーいー」
教室と教室を移動しながら、歌を歌うミク。
まわりを歩いている生徒も、みんなして歌っている。
羞恥もない自由な学校、として受け取っておこう。
「あっ、先輩、おっはようございまーす」
とミクが声をかけたのは、正面から歩いてきた、社会部の巡音ルカだ。
「今日も脚線美をお曝しのようで!」
ふふふー、と洗練された声で笑う。
ミクの言葉どおり、ルカの長いスカートには、これまた大きなスリットが入っていて、美しい脚線が露になっている。
「それをいうなら、あなたも長い髪のままね。切ればいいのに」
「先輩も私と同じくらい長いじゃないですか。ぷんすか!」
軽口を叩き合っている二人は、これでも仲がいいのだろう。
次の授業が待ってますから、とルカと分かれて、さっきとは違う曲を歌い出す。
たまには広い場所で歌いたいなー、と歩きながら考える。
広いホールはこの学校にもいくつかあるのだが、いつも歌うのは大人数でで、もちろん数人でホールを独占、なんて夢のまた夢どころじゃすまない。
「うっ」
いきなりミクが呻いた。
まわりを歩いていた人たちが、ミクに視線を移す。
「お、おなかが痛い……!!」
一番近いトイレを目指して、歌を歌うのをやめ、少し早足になる。
と、トイレに入れば、中では大音響でロックがかかっていた。
さすが音楽学校、といいたいが、今のミクからすればさらに嘔吐も促されているようなものである。
もう一つさきのトイレを目指して。

やっとトイレに入れば、次の瞬間チャイムが鳴った。
と同時に、おなかの痛みも引いてくる。
もう授業始まっちゃったしなあ。
トイレの個室から出て、サボろうと決意する。
本当は授業に出たいが、みんなが歌っている時に入るのはよくない。
と、授業がない時間に各自練習をする教室に向かうことにした。
空き教室ではなく、れっきとした「教室」である。
時々、ミクのようなサボった生徒も使ったりする。

教室に入ってみると、誰もいなかった。
だけど、教室もたくさんあるのだから誰もいないところがあってもおかしくないだろう。
窓の外から、各授業の内容が聞こえてくる。
それはドラムのだったり、合唱だったり、独唱だったり、教師の説明であったりした。
その中で一際大きな歌声を聞いて、ミクも声を合わせる。
大きな声だったが、彼女に羞恥心はない。
舞台で歌うとき恥ずかしがってちゃ何もできない、とずっと言われてきたのだ。


僕は誰 君は誰
僕は何 君は何
僕はなにもしらない
だからおしえてその愛を

大きな舞台 迎える拍手
両手を広げ 声を張る
終わる舞台 追いかける拍手
両手を広げ 愛をしる


ここでコーラスが入って、歌詞のとおり大きく両手を広げるのだ。


大きな舞台 僕等の世界
翼を広げ 声を張る
終わる舞台 みんなの世界
翼を広げ 平和をしる

神様お願い 僕に翼を
神様お願い 僕に愛を
神様お願い 君に愛を
神様お願い 君に翼を


神様お願い、


『僕の願いを』


神様お願い、


『誰かの役に』


神様お願い、


『安らかな 翼を』


これは中等部のウォームアップ曲だ。
のびのびと発声、心を込めて。
神様がいるなら。
僕に愛を。
僕の願いを。


『覚醒ッ。初めての音、1番ミク!』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

萌えプリ ~歌姫戦隊★萌えプリンセス~

ついにやっちまいました。
アクションものです。
みんなのボーかロイドが歌って、変身して、最後には萌え要素もつく予定です。

閲覧数:87

投稿日:2010/09/26 17:39:23

文字数:1,755文字

カテゴリ:小説

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